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「使命観=パーパス」に立脚できないのは自分のエゴのせい

キリンでつかんだ「幸せになる」仕事術(1)悩みの99%は他者との関係性

田村潤
元キリンビール株式会社代表取締役副社長/100年プランニング代表
概要・テキスト
いのちの電話にかかってきた内容を2万件調査したところ、その99%以上が「自分と他者との関係性」での悩みだったという。一方、あるコーヒーチェーンの話では、仕事に喜びを感じるのは、「お客さんから喜ばれる」「ほかのメンバーからリスペクトされたい」ということであった。たしかに、そもそも会社が存在できているのは、その商品を買ってもらって喜んでもらったりするなど、社会の役に立っているからである。だから、お客様のためを思って仕事をすればお客様に喜ばれ、そこに幸せを感じるはずなのだが、なぜそうならないのだろうか。なぜお客様のためを思って仕事ができないのだろうか。そこには「自分は自分、人は人」というエゴがある。会社の本来のあり方が機能しないメカニズムが、そこから生み出されてしまうのだ。(全8話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13:47
収録日:2022/03/30
追加日:2022/08/15
≪全文≫

●「自分が存在する意味を実感できる」のが楽しい仕事


―― 皆様、こんにちは。

田村 こんにちは。

―― 本日は田村潤先生に「幸せと業績向上を両立する仕事術」というテーマでお話を伺いたいと思っております。田村先生、どうぞよろしくお願いいたします。

田村 よろしくお願いします。

―― 田村先生には既にテンミニッツで何度もご登場いただいております。もともとキリンビールにいらっしゃり、全国最下位だった高知支店を復活させるなど、キリンの復活劇を導いてこられました。詳しい経緯はぜひ、これまでの講義をご覧いただければと思います。

 今日は幸せと業績向上の好循環をどうつくっていくか、それをいかに仕事で実現するかというテーマでお話をいただきますが、その前段として、そもそも今、日本人にとって幸福とはどういうものか。あるいは日本人の幸福感がどういう状況になっているか。そのあたり先生は、どのように見ておられますか。

田村 きっかけは、私がキリンビールを退社したときです。みんなが送別会をやってくれ、ここでほぼ全員が「幸せになった」「人生が変わった」と言ってくれたのです。私はメンバーを幸せにしようと思って、仕事をしたわけではないのです。業績向上だけを考えていたのですけれども、それなのにこれは、どういうことなのか。その後メンバーに聞いたり、議論したりするようになったのです。

 この間、新聞記事にあったのですが「いのちの電話」がありますね。精神的に深刻な状態の方が……。

―― ちょっとつらくなったとか、自殺したくなったというときに、かける電話ですね。

田村 特にコロナ禍で電話の数が増えているらしく、そのうち2万件を分析したら、「自分と他者との関係性」が99.何%だったと記事にありました。「自分は自分」としてある一方で、「他者が自分をどう思っているか」「何かを言われた」といった関係性の中で、問題が生じていると書いてあったのです。

 人間は一人では生きられないので、必ず他者との関係性で生きていかざるをえません。では、どういう関係性であれば、幸せをもたらすことができるのか。

 ある有名なコーヒーチェーンの話ですが、従業員はほとんど20代の女性のバイトの方です。そこで「どうしたら自分が幸せになれるだろうか」という話をしたらしいのです。すると、「お金が欲しい」といったものもあるけれど、1...
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