DATE/ 2016.06.13
第12回 顔デカくんはハードボイルド
真冬なのにねず美ちゃんがおらぶようになり、それが少し収まったのですが、春になるにつれまたおらぶようになりました。それとともに、黒ホッカくんと顔デカくんが、毎日のように通ってくるようになりました。お目当てはもちろんねず美ちゃんです。
面白いのは、黒ホッカくんと顔デカくんが、かわりばんこに庭に現れることです。ねず美ちゃんは外に出さないようにしているので、2匹ともガラス戸越しのご対面です。顔デカくんが現れ、帰っていったから次は黒ホッカくんかなと思っていたら、忘れものでもしたかのように、また顔デカくんが現れるときもありました。さっき来たことを忘れているのかもしれません。
黒ホッカくんはさすらいのノラなのですが、顔デカくんは首輪をしているので、飼い猫であることは間違いありません。キョトンとしたお面のような顔をしていますが、案外ご大家のお坊ちゃんなのかもしれません。
ねず美ちゃんの本命彼氏、顔デカくん。
ねず美ちゃんは、黒ホッカくんより顔デカくんのほうが好きなようです。美子ちゃんが言うには、ガラス戸越しに顔デカくんとキスしたあと、ねず美ちゃんが二階まで駆け上がったりして大はしゃぎだったそうです。「猫でも恋をするとルンルン気分になるんだね」と美子ちゃんは言います。
顔デカくんとガラス越しのキス。
しかもねず美ちゃんは、チビのくせに「恋の駆け引き」をすると言うのです。顔デカくんが来てガラス戸越しに覗いても、わざと知らんぷりしてうしろを向いているそうです。「顔デカくんを焦らせているんだよ」と言うのですが、猫もそんなことをするのでしょうか。
黒ホッカくんの場合は来ても知らん顔。
しばらく姿を見せなかった顔デカくんが、耳のうしろがザックリ切れた状態で現れたことがありました。血が滲んだ傷口は化膿しているようでした。首輪も千切れそうになっていました。どこかの猫と大喧嘩でもしたのでしょうか。
ねず美ちゃんは、そんな顔デカくんを見て動揺しているようでした。あまりにも大きな傷なのでぼくらも心配になり、飼い主の電話がわからないかと首輪を調べたのですが、鈴が2つ付いているだけで何も書いていませんでした。
美子ちゃんは、ヨレヨレの顔デカくんに元気になってもらおうと、ささみカルカンやミルク、それにお客さんからいただいたフォアグラにマタタビまで振りかけた特製の一皿を作ってあげていました。
そのフォアグラ・マタタビが効いたのか、顔デカくんは元気になり、余裕の感じで毛づくろいをしたあと、いつものようにガラス戸越しにねず美ちゃんとキスをして、「さあ、オレは行くぜ!」と言ってるような鳴き方をして、闇の中に消えて行きました。ハードボイルド~。ねず美ちゃんは、こんなワイルドな顔デカくんがますます好きになったのではないかと思います。
痛々しい顔デカくん。
ある日美子ちゃんが、わが家の駐車場に顔デカくんがいつもしている首輪が落ちているのを発見しました。拾ってよく見たら「ももたろう」と書かれていたそうです。どうやらそれが顔デカくんの正式な名前のようです。
傷も癒えて、いつものように庭に現れた顔デカくんに「ももたろう!」「ももちゃん!」と声をかけたら、返事はしなかったものの、「なんでオレの名前を知ってるんだ?」というような顔でこちらを見ていました。
面白いのは、黒ホッカくんと顔デカくんが、かわりばんこに庭に現れることです。ねず美ちゃんは外に出さないようにしているので、2匹ともガラス戸越しのご対面です。顔デカくんが現れ、帰っていったから次は黒ホッカくんかなと思っていたら、忘れものでもしたかのように、また顔デカくんが現れるときもありました。さっき来たことを忘れているのかもしれません。
黒ホッカくんはさすらいのノラなのですが、顔デカくんは首輪をしているので、飼い猫であることは間違いありません。キョトンとしたお面のような顔をしていますが、案外ご大家のお坊ちゃんなのかもしれません。
ねず美ちゃんは、黒ホッカくんより顔デカくんのほうが好きなようです。美子ちゃんが言うには、ガラス戸越しに顔デカくんとキスしたあと、ねず美ちゃんが二階まで駆け上がったりして大はしゃぎだったそうです。「猫でも恋をするとルンルン気分になるんだね」と美子ちゃんは言います。
しかもねず美ちゃんは、チビのくせに「恋の駆け引き」をすると言うのです。顔デカくんが来てガラス戸越しに覗いても、わざと知らんぷりしてうしろを向いているそうです。「顔デカくんを焦らせているんだよ」と言うのですが、猫もそんなことをするのでしょうか。
しばらく姿を見せなかった顔デカくんが、耳のうしろがザックリ切れた状態で現れたことがありました。血が滲んだ傷口は化膿しているようでした。首輪も千切れそうになっていました。どこかの猫と大喧嘩でもしたのでしょうか。
ねず美ちゃんは、そんな顔デカくんを見て動揺しているようでした。あまりにも大きな傷なのでぼくらも心配になり、飼い主の電話がわからないかと首輪を調べたのですが、鈴が2つ付いているだけで何も書いていませんでした。
美子ちゃんは、ヨレヨレの顔デカくんに元気になってもらおうと、ささみカルカンやミルク、それにお客さんからいただいたフォアグラにマタタビまで振りかけた特製の一皿を作ってあげていました。
そのフォアグラ・マタタビが効いたのか、顔デカくんは元気になり、余裕の感じで毛づくろいをしたあと、いつものようにガラス戸越しにねず美ちゃんとキスをして、「さあ、オレは行くぜ!」と言ってるような鳴き方をして、闇の中に消えて行きました。ハードボイルド~。ねず美ちゃんは、こんなワイルドな顔デカくんがますます好きになったのではないかと思います。
ある日美子ちゃんが、わが家の駐車場に顔デカくんがいつもしている首輪が落ちているのを発見しました。拾ってよく見たら「ももたろう」と書かれていたそうです。どうやらそれが顔デカくんの正式な名前のようです。
傷も癒えて、いつものように庭に現れた顔デカくんに「ももたろう!」「ももちゃん!」と声をかけたら、返事はしなかったものの、「なんでオレの名前を知ってるんだ?」というような顔でこちらを見ていました。