テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
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DATE/ 2016.06.20

第13回 ねず美のデート

 ねず美ちゃんは1月からおらび始め、一旦収まり、春になってまたおらび始め、彼氏の顔デカくんが通ってくるようになったのですが、獣医さんやペットショップのマダムの勧めで、ねず美ちゃんを外には出すことはしませんでした。猫エイズ、怖いですから。

 一度、うっかり閉め忘れた窓からねず美ちゃんが外に出て、一晩中帰ってこなかったこともありました。そのときは、美子ちゃんが「ねっちゃ~ん、ねず美ちゃ~ん」と大きな声を出して家の周りを探しました。僕は近所迷惑にならないだろうかとハラハラしていましたが、美子ちゃんはそんなことおかまいなしで、いつまでもねず美ちゃんを呼んでいました。

 ねず美ちゃんが帰ってきたのは、翌日の朝でした。猫は暗くても目がよく見えるので、一晩中近くの原っぱなどで遊び回っていたのかもしれません。

 ねず美ちゃんを外に出さないためには、すべての戸や窓を閉め切っておかなくてはなりません。しかし、夏が近づいてくると部屋の中がムシムシするので、網戸を少し開けていると、その隙間からねず美ちゃんが外に出てしまうことがありました。

 あるとき、美子ちゃんが帰ってきたら、庭で顔デカくんがねず美ちゃんに股がっていたそうです。顔デカくんは、もう我慢できなくなったのでしょう。

 ねず美ちゃんは顔デカくんの下でおとなしくしていたようですが、顔デカと比べたら体がずいぶん小さいので、まるでかまくらに入っているような状態だったそうです。かまくら状態というのが、なんだかおかしくて笑ってしまいました。

ねず美に覆いかぶさる顔デカくん。


 ねず美ちゃんは、これまで網戸越しにしか顔デカくんに会えませんでした。大好きな顔デカくんが来ても、網戸越しのキスしかできないのはつまらなかったと思います。それにもう何回も外に出ているので、外の楽しさも充分わかっています。ずっと家に閉じ込めておくのは可哀想だし、もう無理ということになりました。

セミと遊ぶねず美。


 7月の末になると、顔デカくんと遊びに出かけるようになりました。顔デカくんと遊びに行くのは本当に楽しそうで、顔デカくんも近所の穴場を案内したりして得意になっていたのではないかと思います。

 ねず美ちゃんが遊びに行っているときに、僕らが家を空けるときは、窓を少し開けたままにしておきます。防犯より猫優先になってしまいました。

 家に帰ってくると、顔デカくんが上がり込んで、2階の部屋でまるで高校生のカップルのように、窓辺で寄り添っていることもありました。

 顔デカくんは毎日、足繁く通ってくるようになりました(それにしても、どこから来るのだろう)。ときどき黒ホッカくんもやってきます。黒ホッカくんも、ねず美ちゃんを諦めたわけではありません。ねず美ちゃんは、最初はそっぽを向いていたのに、そんなに嫌でもなさそうです。
 顔デカくんが覆いかぶさったときは、どうも未遂で終わったようですが、果たしてその後どうなったのでしょうか。心なしか、ねず美ちゃんが、だんだん女っぽくなっていくような気がするのです。 

なんだか女っぽくなったなぁ。



第1回 マキ・キュー

第2回 猫の駆け引き

第3回 ネズミのような猫

第4回 黒ホッカおじさん

第5回 騒々しい庭

第6回 猫に話しかける

第7回 チーコ物語

第8回 猫の乗っ取り

第9回 ねず美ちゃんの母性

第10回 猫の癒し