DATE/ 2016.07.04
第15回 父親は誰だ?
ねず美ちゃんが妊娠しているのは確かなのだけど、お腹がポッコリ膨らむわけでもないので、ひょっとしたら思い過ごしかもしれません。しかし、食欲は増々旺盛になっているので、やっぱり妊娠に違いありません。それにしては美子ちゃんが作った段ボール箱には入らないし、だからといって自分で出産場所を決めているふうでもありません。
そうやって僕らがやきもきしだしてから20日ほど経ったある日の朝、二階のほうからミャーミャーと小さな声がします。ねず美ちゃんがついに出産したようなのですが、二階に上がって行ってもどこにいるのかわかりません。寝ていた美子ちゃんに「生まれたらしいよ」と言うと、「えっ!」と言って飛び起きました。2人で声のするほうを探していたら、二階のクローゼットの中からでした。美子ちゃんの古い洋服を入れているクローゼットなので、普段は使っていないのですが、扉が開いていたのでしょう。
そーっと覗いて見ると、フェイクファーのコートの下のほうにいるようです。よく見ると、まだ毛が濡れている子猫が、コートからはみ出してミャーミャー鳴いています。子猫というよりネズミみたいでした。コートが邪魔してオッパイが吸えないようなので、コートの裾を持ち上げると、そこにねず美ちゃんとオッパイに吸いついているもう1匹の子猫がいました。産まれたのは2匹のようです。
産まれた子猫は2匹。
コートからはみ出したほうの子猫を、ねず美ちゃんのオッパイのところに持って行ったのですが吸いつきません。ねず美ちゃんが警戒すると思いましたが、なんだかゴロゴロ言って満足そうな顔をしています。子どもを産んだことを誇らしげに思っているのでしょうか。
美子ちゃんはミルクと猫缶を皿に入れて、ねず美ちゃんの横に置きました。オッパイに吸いつかないほうの子猫は、ダメかもしれないと思ったのですが、僕らが無理にオッパイにくっつけても吸いつかないので、ねず美ちゃんに任せることにしてそっとしておくことにしました。
2人で近くの公園を散歩し、戻って再びクローゼットの中を見てみると、オッパイが吸えなかったほうの子猫も無事吸いついていました。よかった、よかった。
ねず美ちゃんが子どもを産むとしたら、顔デカくんの子どもだろうと思っていました。
なにしろ、かまくら状態だったとはいえ、顔デカくんがねず美ちゃんに乗っかっているのを美子ちゃんは見ているのです。しかもねず美ちゃんは、顔デカくんとしょっちゅう遊びに行ったりもしていたのです。
ところが、産まれた子猫は2匹とも真っ黒です。これはどういうことなのか、ひょっとして父親は黒ホッカくんではないかということになりました。ねず美ちゃんは黒ホッカくんに素っ気なかったけど、ノラ同士ということもあるし、どこか通じ合うところがあったのかもしれません。
「ボクが父親です」
そんなことを僕らが考えているうちに、それまで家の中に入り込んだことがなかった黒ホッカくんが、どっかりとうちに上がり込んでくるようになったのです。まるで僕らが考えていることを察知したように、「ボクが父親です」と言わんかのように、悠々とうちの中を歩き回ったり、座布団で寝たりするようになりました。それにつれ、僕らもなんとなく黒ホッカくんを「婿殿」みたいに思うようになってきて、もてなすようになりました。
わが家の王様座布団で寝る黒ホッカくん。
ところが、日に日に子猫が大きくなるにつれ、真っ黒でないことがわかってきたのです。
そうやって僕らがやきもきしだしてから20日ほど経ったある日の朝、二階のほうからミャーミャーと小さな声がします。ねず美ちゃんがついに出産したようなのですが、二階に上がって行ってもどこにいるのかわかりません。寝ていた美子ちゃんに「生まれたらしいよ」と言うと、「えっ!」と言って飛び起きました。2人で声のするほうを探していたら、二階のクローゼットの中からでした。美子ちゃんの古い洋服を入れているクローゼットなので、普段は使っていないのですが、扉が開いていたのでしょう。
そーっと覗いて見ると、フェイクファーのコートの下のほうにいるようです。よく見ると、まだ毛が濡れている子猫が、コートからはみ出してミャーミャー鳴いています。子猫というよりネズミみたいでした。コートが邪魔してオッパイが吸えないようなので、コートの裾を持ち上げると、そこにねず美ちゃんとオッパイに吸いついているもう1匹の子猫がいました。産まれたのは2匹のようです。
コートからはみ出したほうの子猫を、ねず美ちゃんのオッパイのところに持って行ったのですが吸いつきません。ねず美ちゃんが警戒すると思いましたが、なんだかゴロゴロ言って満足そうな顔をしています。子どもを産んだことを誇らしげに思っているのでしょうか。
美子ちゃんはミルクと猫缶を皿に入れて、ねず美ちゃんの横に置きました。オッパイに吸いつかないほうの子猫は、ダメかもしれないと思ったのですが、僕らが無理にオッパイにくっつけても吸いつかないので、ねず美ちゃんに任せることにしてそっとしておくことにしました。
2人で近くの公園を散歩し、戻って再びクローゼットの中を見てみると、オッパイが吸えなかったほうの子猫も無事吸いついていました。よかった、よかった。
ねず美ちゃんが子どもを産むとしたら、顔デカくんの子どもだろうと思っていました。
なにしろ、かまくら状態だったとはいえ、顔デカくんがねず美ちゃんに乗っかっているのを美子ちゃんは見ているのです。しかもねず美ちゃんは、顔デカくんとしょっちゅう遊びに行ったりもしていたのです。
ところが、産まれた子猫は2匹とも真っ黒です。これはどういうことなのか、ひょっとして父親は黒ホッカくんではないかということになりました。ねず美ちゃんは黒ホッカくんに素っ気なかったけど、ノラ同士ということもあるし、どこか通じ合うところがあったのかもしれません。
そんなことを僕らが考えているうちに、それまで家の中に入り込んだことがなかった黒ホッカくんが、どっかりとうちに上がり込んでくるようになったのです。まるで僕らが考えていることを察知したように、「ボクが父親です」と言わんかのように、悠々とうちの中を歩き回ったり、座布団で寝たりするようになりました。それにつれ、僕らもなんとなく黒ホッカくんを「婿殿」みたいに思うようになってきて、もてなすようになりました。
ところが、日に日に子猫が大きくなるにつれ、真っ黒でないことがわかってきたのです。