DATE/ 2016.07.25
第18回 ボンちゃん、連れて行かれる
ねず美ちゃんが子猫を産んで2ヵ月が経ちました。
朝晩だいぶ冷え込むようになり、ねず美ちゃんたちも寒いのか、ムートンの上で体を寄せ合って寝ています。それを見ていると、子猫たちをこのままうちに置いておきたい気持ちになるのですが、1匹はもらい手が決まっていました。
ねず美ちゃんが子猫を産む9ヵ月も前から、「ねずみサンの子どもが4匹以上産まれたら1匹私にください。子どもも私もほしいです」というメールが、会計士の蒲生さんから来ていました。ねず美ちゃんがおらび声をあげ始めたころ、ひょっとしたら妊娠するかもしれないと思って声をかけていたのでした。
そのころは、産まれるとしたら4、5匹ぐらいかもしれないと思っていたので、もらってもらえる人をいろいろ想定していて、声をかけた人も数人います。その中でも、いちばん熱心に待っていてくれたのが蒲生さんでした。
蒲生さんには、尻尾が立派なオスのほうの子猫をあげることになっていました。尻尾は立派だけど、これといった特徴がない平凡な猫なので、ボンちゃんと呼んでいました。もう1匹は、ねず美ちゃんに似て尻尾が丸まったメス猫で、両方の足の先が白いのでたびちゃんと呼んでいました。
上がボンちゃん、下がたびちゃん。仲よし。
ねず美ちゃんも子猫も、病気予防のワクチン注射をまだしていなかったので、ペットショップのマダムに紹介してもらった近くの獣医さんに連れて行きました。
獣医さんは、「3匹ともそっくりですね」と言います。美子ちゃんは「たびちゃんは足の先が白いし、ボンちゃんは尻尾が長いですよ」と言いたかったらしいのですが、人から見たらそのへんにザラにいるキジ猫に見えるようです。
さすがペットショップの紹介だけあって、猫の扱いがうまい獣医さんで、注射のとき「頭撫でていてくださいね」と言ったかと思うと、一瞬で終わっていました。
そのすぐあと、蒲生さんが猫を入れるショルダーバッグを持って来たのですが、ワクチン注射があったので1週間待ってもらうことにしました。
美子ちゃんは蒲生さんに、猫缶だけでなくアジやシシャモもあげているとか、外で遊ばせて欲しいとか、猫トイレの砂はこの銘柄にして欲しいとか、あれやこれや注文を出していました。僕はちょっとくどいんじゃないかと思ったりしたのですが、蒲生さんは美子ちゃんの言うことを手帳に細かくメモしていました。いいもらい手がいてよかったです。
子猫は可愛いうちに早くあげたほうがいいのですが、結局どんどん引き延ばしているうちに11月も終わりになっていました。美子ちゃんはクリスマスカードを作るために、ねず美ちゃんや子猫たちにサンタの帽子を被せて撮影したりしています。
ねず美ちゃんにサンタの帽子を被せて撮影。
そしていよいよ、蒲生さんに渡す日が決まりました。美子ちゃんが蒲生さんに電話して決めたのですが、その日が決まったとき、美子ちゃんの膝の上にいたねず美ちゃんが、急に立ち上がってどこかに行ったそうです。何か感じていたのでしょうか。
蒲生さんが来る日、美子ちゃんは出かけていたのですが、ボンちゃんが連れて行かれるのを見るのは寂しいから遅く帰るという電話が入りました。美子ちゃん、ボンちゃんがいなくなっても大丈夫だろうか。
夕方になって、蒲生さんがショルダーバッグを持ってやってきました。僕がボンちゃんを捕まえようとすると、カーッと威嚇します。連れて行かれることがわかっているのでしょうか。
こんな様子を見ているとあげたくなくなります。
蒲生さんは「名前はボンにします」と言います。平凡のボンではなくて、伝説のやくざ「ボンノ」のボンだそうです。やっと捕まえたボンちゃんをショルダーバッグに入れ、蒲生さんは帰って行きました。やっぱり寂しいなぁ。ねず美ちゃんも寂しがっているようだったので、体をいつまでも撫でてあげました。
後日、蒲生さんから電話が来て、名前はボンではなく、奥さんの意向でベルにしたそうです。
朝晩だいぶ冷え込むようになり、ねず美ちゃんたちも寒いのか、ムートンの上で体を寄せ合って寝ています。それを見ていると、子猫たちをこのままうちに置いておきたい気持ちになるのですが、1匹はもらい手が決まっていました。
ねず美ちゃんが子猫を産む9ヵ月も前から、「ねずみサンの子どもが4匹以上産まれたら1匹私にください。子どもも私もほしいです」というメールが、会計士の蒲生さんから来ていました。ねず美ちゃんがおらび声をあげ始めたころ、ひょっとしたら妊娠するかもしれないと思って声をかけていたのでした。
そのころは、産まれるとしたら4、5匹ぐらいかもしれないと思っていたので、もらってもらえる人をいろいろ想定していて、声をかけた人も数人います。その中でも、いちばん熱心に待っていてくれたのが蒲生さんでした。
蒲生さんには、尻尾が立派なオスのほうの子猫をあげることになっていました。尻尾は立派だけど、これといった特徴がない平凡な猫なので、ボンちゃんと呼んでいました。もう1匹は、ねず美ちゃんに似て尻尾が丸まったメス猫で、両方の足の先が白いのでたびちゃんと呼んでいました。
ねず美ちゃんも子猫も、病気予防のワクチン注射をまだしていなかったので、ペットショップのマダムに紹介してもらった近くの獣医さんに連れて行きました。
獣医さんは、「3匹ともそっくりですね」と言います。美子ちゃんは「たびちゃんは足の先が白いし、ボンちゃんは尻尾が長いですよ」と言いたかったらしいのですが、人から見たらそのへんにザラにいるキジ猫に見えるようです。
さすがペットショップの紹介だけあって、猫の扱いがうまい獣医さんで、注射のとき「頭撫でていてくださいね」と言ったかと思うと、一瞬で終わっていました。
そのすぐあと、蒲生さんが猫を入れるショルダーバッグを持って来たのですが、ワクチン注射があったので1週間待ってもらうことにしました。
美子ちゃんは蒲生さんに、猫缶だけでなくアジやシシャモもあげているとか、外で遊ばせて欲しいとか、猫トイレの砂はこの銘柄にして欲しいとか、あれやこれや注文を出していました。僕はちょっとくどいんじゃないかと思ったりしたのですが、蒲生さんは美子ちゃんの言うことを手帳に細かくメモしていました。いいもらい手がいてよかったです。
子猫は可愛いうちに早くあげたほうがいいのですが、結局どんどん引き延ばしているうちに11月も終わりになっていました。美子ちゃんはクリスマスカードを作るために、ねず美ちゃんや子猫たちにサンタの帽子を被せて撮影したりしています。
そしていよいよ、蒲生さんに渡す日が決まりました。美子ちゃんが蒲生さんに電話して決めたのですが、その日が決まったとき、美子ちゃんの膝の上にいたねず美ちゃんが、急に立ち上がってどこかに行ったそうです。何か感じていたのでしょうか。
蒲生さんが来る日、美子ちゃんは出かけていたのですが、ボンちゃんが連れて行かれるのを見るのは寂しいから遅く帰るという電話が入りました。美子ちゃん、ボンちゃんがいなくなっても大丈夫だろうか。
夕方になって、蒲生さんがショルダーバッグを持ってやってきました。僕がボンちゃんを捕まえようとすると、カーッと威嚇します。連れて行かれることがわかっているのでしょうか。
蒲生さんは「名前はボンにします」と言います。平凡のボンではなくて、伝説のやくざ「ボンノ」のボンだそうです。やっと捕まえたボンちゃんをショルダーバッグに入れ、蒲生さんは帰って行きました。やっぱり寂しいなぁ。ねず美ちゃんも寂しがっているようだったので、体をいつまでも撫でてあげました。
後日、蒲生さんから電話が来て、名前はボンではなく、奥さんの意向でベルにしたそうです。