DATE/ 2016.10.10
第28回 タバちゃんの子どもたち
「ヤンママ過ぎて、子どもを育てられないかもしれない」と美子ちゃんが心配していたタバちゃんですが、そんな心配をよそに、タバちゃん独自の子育てをしていました。たとえば子猫をじゃらすときも、ぶん投げるようにしていて、子猫がピーッと鳴きながら宙を飛ぶときもありました。まるで虐待のようです。しかし、僕らの心配をよそに、子猫たちはスクスク育っていました。
ねず美ちゃんが産んだ子猫たちは、警戒心も教えられているのか、お腹を見せて寝ているようなことはなかったのですが、タバちゃんの子どもは平気で仰向けに寝ていました。タバちゃんの子育てはアバウトだから、そのぶん伸び伸びかつたくましく育つのかもしれません。
お腹を見せて寝るウリちゃん。
タバちゃんは本能の強い猫です。ねず美ちゃんのように、人間と感情のやり取りや駆け引きをする猫ではありません。神経質なところはないのですが、瞬時に好き嫌いを判断して行動するところがあります。
ノラだったら、タバちゃんのように幼くして母親になれば、それなりに苦労は多いと思いますが、産まれたときから上げ膳、据え膳で育ったタバちゃんは、子育ても遊びの1つみたいに、気分転換にちょいちょい外に出かけたりしながら実に軽々と育てていました。
タバちゃんの子育てはアバウトだけど、子猫たちはたくましく育ちました。
キジ柄のほうはウリちゃん、黒いほうはクロちゃんと、仮の名前をつけました。2匹とももらい手が決まっていて、ウリちゃんは、僕が勤めている出版社で旅行雑誌の編集長をやっている加藤くんに、クロちゃんは、美子ちゃんの仕事の手伝いをしてもらっていたメークの森田さんにもらわれることになっていました。
その前に、僕のいる会社で出している『ユトリノ』という雑誌のカラーページに、ウリちゃんとクロちゃんが出ることになり、キャリーバッグに2匹を入れて、僕がスタジオに連れて行きました。
バッグから子猫を出すと、ミャーミャー鳴きながらスタジオの中をウロウロしています。撮影が押していて、子猫の登場は1時間後だそうで、どうしようかと思っていたら、そのうち子猫たちは僕の膝に乗ってじっとしていました。こういうこともタバちゃんがしつけたのでしょうか。スタッフのみなさんから「可愛いですね」と言われて、自分が猫使いにでもなったような気分になりました。
撮影が終わって、スタッフの人が加藤くんのところにウリちゃんを連れて行ってくれると言うので、クロちゃんだけを連れて帰ってきました。美子ちゃんに聞くと、タバちゃんは子猫を探してミャーミャー鳴いていたそうです。しかしクロちゃんが帰ってくると、タバちゃんは何ごともなかったように、クロちゃんをペロペロ舐めています。ウリちゃんのことはもう忘れたのでしょうか。
そして、クロちゃんももらわれていくことになりました。といっても、森田さんは大阪で女装サロンをやっていて、クロちゃんはその女装サロンで飼われるので、美子ちゃんと2人でクロちゃんを届けることにしました。
キャリーバッグにクロちゃんを入れ、美子ちゃんと新幹線で大阪まで行き、十三にある女装サロンを訪れました。古い家屋が建っているところで、路地もあってクロちゃんの遊ぶところはいっぱいありそうです。
クロちゃんは、トマシーナという名前になりました。以前、ポール・ギャリコの『猫語の教科書』という本を紹介しましたが、ポール・ギャリコは『トマシーナ』という猫のファンタジー小説も書いていて、そこから取った名前です。
クロちゃんは、大阪の女装サロンで飼われることになりました。
トマシーナは女装サロンの人気者になったそうで、女装したお姉さんたちが車座になって、みんなでトマシーナを撫でていると森田さんは言っていました。そのうち、近所の商店街を闊歩するようになり、いつの間にか料理屋さんの飼い猫のようになり、しばらくして、もっと気に入ったところが見つかったのか、帰ってこなくなったそうです。
猫は外に7つの家を持つと言われていますが、トマシーナもどこかで自分の気に入った家を見つけたのだと思います。森田さんもそう確信しているようで、心配はしていませんでした。タバちゃんの子どもは、それぐらいのたくましさを持っているはずです。
ねず美ちゃんが産んだ子猫たちは、警戒心も教えられているのか、お腹を見せて寝ているようなことはなかったのですが、タバちゃんの子どもは平気で仰向けに寝ていました。タバちゃんの子育てはアバウトだから、そのぶん伸び伸びかつたくましく育つのかもしれません。
タバちゃんは本能の強い猫です。ねず美ちゃんのように、人間と感情のやり取りや駆け引きをする猫ではありません。神経質なところはないのですが、瞬時に好き嫌いを判断して行動するところがあります。
ノラだったら、タバちゃんのように幼くして母親になれば、それなりに苦労は多いと思いますが、産まれたときから上げ膳、据え膳で育ったタバちゃんは、子育ても遊びの1つみたいに、気分転換にちょいちょい外に出かけたりしながら実に軽々と育てていました。
キジ柄のほうはウリちゃん、黒いほうはクロちゃんと、仮の名前をつけました。2匹とももらい手が決まっていて、ウリちゃんは、僕が勤めている出版社で旅行雑誌の編集長をやっている加藤くんに、クロちゃんは、美子ちゃんの仕事の手伝いをしてもらっていたメークの森田さんにもらわれることになっていました。
その前に、僕のいる会社で出している『ユトリノ』という雑誌のカラーページに、ウリちゃんとクロちゃんが出ることになり、キャリーバッグに2匹を入れて、僕がスタジオに連れて行きました。
バッグから子猫を出すと、ミャーミャー鳴きながらスタジオの中をウロウロしています。撮影が押していて、子猫の登場は1時間後だそうで、どうしようかと思っていたら、そのうち子猫たちは僕の膝に乗ってじっとしていました。こういうこともタバちゃんがしつけたのでしょうか。スタッフのみなさんから「可愛いですね」と言われて、自分が猫使いにでもなったような気分になりました。
撮影が終わって、スタッフの人が加藤くんのところにウリちゃんを連れて行ってくれると言うので、クロちゃんだけを連れて帰ってきました。美子ちゃんに聞くと、タバちゃんは子猫を探してミャーミャー鳴いていたそうです。しかしクロちゃんが帰ってくると、タバちゃんは何ごともなかったように、クロちゃんをペロペロ舐めています。ウリちゃんのことはもう忘れたのでしょうか。
そして、クロちゃんももらわれていくことになりました。といっても、森田さんは大阪で女装サロンをやっていて、クロちゃんはその女装サロンで飼われるので、美子ちゃんと2人でクロちゃんを届けることにしました。
キャリーバッグにクロちゃんを入れ、美子ちゃんと新幹線で大阪まで行き、十三にある女装サロンを訪れました。古い家屋が建っているところで、路地もあってクロちゃんの遊ぶところはいっぱいありそうです。
クロちゃんは、トマシーナという名前になりました。以前、ポール・ギャリコの『猫語の教科書』という本を紹介しましたが、ポール・ギャリコは『トマシーナ』という猫のファンタジー小説も書いていて、そこから取った名前です。
トマシーナは女装サロンの人気者になったそうで、女装したお姉さんたちが車座になって、みんなでトマシーナを撫でていると森田さんは言っていました。そのうち、近所の商店街を闊歩するようになり、いつの間にか料理屋さんの飼い猫のようになり、しばらくして、もっと気に入ったところが見つかったのか、帰ってこなくなったそうです。
猫は外に7つの家を持つと言われていますが、トマシーナもどこかで自分の気に入った家を見つけたのだと思います。森田さんもそう確信しているようで、心配はしていませんでした。タバちゃんの子どもは、それぐらいのたくましさを持っているはずです。