テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
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DATE/ 2016.11.14

第33回 3匹が仲よしだったころ

 美子ちゃんが、高橋源一郎さんの奥さんの靖子さんにお会いしたとき、靖子さんの実家は大の猫好きで、猫を7匹飼っているけど全部メス猫だとおっしゃっていたそうです。その猫たちは、お母さん猫とその娘たちで、みんな仲よくしているそうです。美子ちゃんは「そうか、猫は母と娘なら仲よく暮らすのか」と思ったようですが、それは大変な間違いでした。猫は個体差が激しく、どの猫にも当てはまることではないのです。

 ねず美ちゃんが最初に産んだ2匹のうち、手足の先が白いメスの子猫は可愛いので、たびと名前をつけてうちに残しました。

 たびちゃんは甘えん坊で、ねず美ちゃんが次の妊娠をしたときもまとわりつくので、ねず美ちゃんはたびちゃんを独立させようと、威嚇したり唸り合いのケンカをするようになりました。

 それでもたびちゃんは独立心がまったくなく、ねず美ちゃんが2回目の出産をしたときも、何が起こったのかまったく理解できずに、産まれた子猫たちと一緒にねず美ちゃんのオッパイに吸いついたりしていました。

たびちゃんがねず美ちゃんに甘え、ねず美ちゃんもそれを許していたころ。

 そのねず美ちゃんの2回目の出産で産まれたメスのタバサちゃんは、美子ちゃんの親戚にもらわれそこなってうちに居残り、わが家は3匹のメス猫たちが暮らすようになりました。この3匹が仲がよくないことは前にも書きましたが、最初から仲が悪かったわけではありません。3匹が寄り添って昼寝をしたりしているときもあって、そういう光景を見ていると、こちらまで優しい気持ちになりました。

 3匹の仲が悪くなったのは、タバちゃんが大きくなって、顔デカくんがタバちゃんにもちょっかいを出すようになったころからです。

 家の中で住み分けが始まりました。ねず美ちゃんは2階をテリトリーとし、たびちゃんとタバちゃんは1階をテリトリーとするようになりました。

 それでもねず美ちゃんはときどき1階に降りてきて、ゴハンを置いているお盆のところに来ていました。そんなとき、たびちゃん、タバちゃんは、「私たちのところに入ってきたな」といった怪訝な顔でねず美ちゃんを見ていて、緊張が走ります。そういうとき僕たちは、「ねず美ちゃん、ねず美ちゃん」と声をかけ、ねず美ちゃんに「ここにいてもいいんだよ」というアピールをします。

 以前は、庭に面した和室で、ねず美ちゃんが大好きな庭を見ながら、何時間もいることがありましたが、その和室はたびちゃん、タバちゃんのテリトリーになってしまいました。

 ねず美ちゃんは庭が大好きなのに、2階を自分のテリトリーにしたのは、猫は高い場所を上位とする決まりがあるからなのでしょうか。猫がケンカをするときも、高いポジションを取ったほうが優勢だと聞いたことがあります。1階より2階のほうが、猫として格上になるのかもしれません。

 2階は僕も美子ちゃんも仕事をする場所です。それぞれの仕事部屋と、廊下のような部屋のようなスペースがあるのですが、2階にいるときは仕事のときだけで、食事をしたりテレビを見たりくつろいだりするのは1階ですから、ねず美ちゃんといる時間が減りました。

 ねず美ちゃんとたびちゃんが2匹揃って、僕の仕事部屋で遊んでいたのは、遠い昔のことになりました。3匹が丸まって日向ぼっこしているところも、もう見ることはできません。

仕事をしていると背中に乗ってくるたびちゃんとねず美ちゃん。

縁側で日向ぼっこをするねず美ちゃんとタバちゃん。


 猫は1匹で飼うほうがいい場合もあるのです。まだねず美ちゃんが子どもを産んでいないとき、僕と美子ちゃんとねず美ちゃんが家族として暮らしていて、心が和む団欒がありました。

 ねず美ちゃんはそれから自分の家族を作り、その家族からも卒業して、1匹で2階で暮らしているのです。でも、僕らはねず美ちゃんを一番大事にしていて、ねず美ちゃんがパソコンのキーボードの上に上がってきても、急いで書きかけのファイルを保存して、ねず美ちゃんと遊んであげます。

第1回 マキ・キュー

第2回 猫の駆け引き

第3回 ネズミのような猫

第4回 黒ホッカおじさん

第5回 騒々しい庭

第6回 猫に話しかける

第7回 チーコ物語

第8回 猫の乗っ取り

第9回 ねず美ちゃんの母性

第10回 猫の癒し