DATE/ 2016.11.21
第34回 ねず美ちゃんの優しさ
猫を飼うことでこうむる被害はいろいろあります。家の中をいつもきれいにしていたいという潔癖性の人には、猫を飼うのは難しいかもしれません。
猫がネズミやスズメを捕まえてくるのは、そういう習性があるので仕方がないのですが、羽根をバタバタさせている鳥を、いつまでもいたぶっているのを見たり、ネズミの死骸が転がっていたりすると、気持ちいいものではありません。「やはり猫はもともと狩猟動物なんだな」という当たり前のことを再認識せざるを得ません。
うちの猫たちは、ねず美ちゃんが小ぶりのせいもあって、子どもたちもみんな小ぶりなので、捕まえてくるネズミもスズメもみんな小さいものばかりでした。捕まえたのか、巣から落ちたのをくわえてきたのかわからない、まだ産毛で弱々しいスズメを見たりすると、うちの猫が悪者みたいに思えてくることもありました。
ねず美ちゃんがよく獲ってくるのはスズメ。
ねず美ちゃんは子どもたちに、障子や襖を引っ掻いてはいけないという教育をしたので、たびちゃんもタバちゃんもそういうことはしないのですが、ねず美ちゃんだけはやめません。といっても、いつも襖や障子を引っ掻くわけではなく、そうするときは何か主張があるときです。
それは、だいたい気に入らないことがあるときです。他の猫はそういうとき鳴くのですが、ねず美ちゃんはめったに鳴くことはなく、襖を爪で引っ掻いたり、障子に爪を立てたりします。
僕たちはそれを見て、「ダメ! ダメ!」と叱りながらも、「ねず美ちゃん、どうしたの?」とか「どうして欲しいの?」とか、お伺いを立てることになります。まぁ、それがねず美ちゃんの言語のようなものなので仕方ありません。襖や障子はいつもボロボロで、数年おきに張り替えをしています。
ねず美ちゃんが何か抗議したあと。
ただニャーニャー鳴くだけのたびちゃんやタバちゃんに比べて、ねず美ちゃんは僕らと対等な関係でいるように思います。
あるとき、僕と美子ちゃんが二階で怒鳴り合いのケンカをしました。美子ちゃんは机に座って泣いていました。そしたらねず美ちゃんが机に上がってきて、美子ちゃんの服の袖を咬んでグイグイ引っ張っているのです。それは「ケンカしないで、泣いちゃダメ」と必死に訴えているようでした。
僕たちも、そんなに激しいケンカをすることはめったにないので、ねず美ちゃんがそんなことをしたのは1回きりでしたが、美子ちゃんも、あのときのねず美ちゃんの必死さには驚いたと言います。ねず美ちゃんが強い意思を持って、必死でケンカをやめさせようとしていることが伝わってきたそうです。ねず美ちゃんの「こころ」が見えた出来事でした。
普段はとても気まぐれで、ペットや愛玩動物として扱われることをまったく拒否しているねず美ちゃんですが、美子ちゃんが風邪で寝ているときなど、フラッと寝室に入ってきて様子を見ているそうです。弱っている者に寄り添う気持ちや思いやりが、ねず美ちゃんにはあるのだと思います。
人に寄り添うねず美ちゃん。
そういう気持ちは、ねず美ちゃんがわが家に来て、3人家族のように暮らした1年間に培われたものかもしれません。たびちゃんやタバちゃんは、僕たちが病気になっても、それを気遣う様子なんかはまったくありません。ただ、自分たちが腹が立つことには容赦なくぶつけてきます。猫のトイレ掃除がちょっと遅れただけで、猫トイレの前に砂を撒き散らし「遅い!」と文句言っているような顔をしています。
猫がネズミやスズメを捕まえてくるのは、そういう習性があるので仕方がないのですが、羽根をバタバタさせている鳥を、いつまでもいたぶっているのを見たり、ネズミの死骸が転がっていたりすると、気持ちいいものではありません。「やはり猫はもともと狩猟動物なんだな」という当たり前のことを再認識せざるを得ません。
うちの猫たちは、ねず美ちゃんが小ぶりのせいもあって、子どもたちもみんな小ぶりなので、捕まえてくるネズミもスズメもみんな小さいものばかりでした。捕まえたのか、巣から落ちたのをくわえてきたのかわからない、まだ産毛で弱々しいスズメを見たりすると、うちの猫が悪者みたいに思えてくることもありました。
ねず美ちゃんは子どもたちに、障子や襖を引っ掻いてはいけないという教育をしたので、たびちゃんもタバちゃんもそういうことはしないのですが、ねず美ちゃんだけはやめません。といっても、いつも襖や障子を引っ掻くわけではなく、そうするときは何か主張があるときです。
それは、だいたい気に入らないことがあるときです。他の猫はそういうとき鳴くのですが、ねず美ちゃんはめったに鳴くことはなく、襖を爪で引っ掻いたり、障子に爪を立てたりします。
僕たちはそれを見て、「ダメ! ダメ!」と叱りながらも、「ねず美ちゃん、どうしたの?」とか「どうして欲しいの?」とか、お伺いを立てることになります。まぁ、それがねず美ちゃんの言語のようなものなので仕方ありません。襖や障子はいつもボロボロで、数年おきに張り替えをしています。
ただニャーニャー鳴くだけのたびちゃんやタバちゃんに比べて、ねず美ちゃんは僕らと対等な関係でいるように思います。
あるとき、僕と美子ちゃんが二階で怒鳴り合いのケンカをしました。美子ちゃんは机に座って泣いていました。そしたらねず美ちゃんが机に上がってきて、美子ちゃんの服の袖を咬んでグイグイ引っ張っているのです。それは「ケンカしないで、泣いちゃダメ」と必死に訴えているようでした。
僕たちも、そんなに激しいケンカをすることはめったにないので、ねず美ちゃんがそんなことをしたのは1回きりでしたが、美子ちゃんも、あのときのねず美ちゃんの必死さには驚いたと言います。ねず美ちゃんが強い意思を持って、必死でケンカをやめさせようとしていることが伝わってきたそうです。ねず美ちゃんの「こころ」が見えた出来事でした。
普段はとても気まぐれで、ペットや愛玩動物として扱われることをまったく拒否しているねず美ちゃんですが、美子ちゃんが風邪で寝ているときなど、フラッと寝室に入ってきて様子を見ているそうです。弱っている者に寄り添う気持ちや思いやりが、ねず美ちゃんにはあるのだと思います。
そういう気持ちは、ねず美ちゃんがわが家に来て、3人家族のように暮らした1年間に培われたものかもしれません。たびちゃんやタバちゃんは、僕たちが病気になっても、それを気遣う様子なんかはまったくありません。ただ、自分たちが腹が立つことには容赦なくぶつけてきます。猫のトイレ掃除がちょっと遅れただけで、猫トイレの前に砂を撒き散らし「遅い!」と文句言っているような顔をしています。