DATE/ 2016.12.26
第39回 人になつかない猫
猫を飼っていると言うと、今度猫を見に行きたいという猫好きの方がいるのですが、果たして猫を見せてあげられるかどうかわからないので困ります。うちの猫たちは、知らない人が来ると逃げてしまうのです。
3ヵ月ほど前に軽井沢の小さなホテルに泊まったのですが、そこには猫がいて、お客さんに撫でられても平気でジッとしていました。人になつく猫となつかない猫の違いは、何が原因なのでしょうか。
ノラの場合は人間に追いかけられたりするので、人間に対して恐怖を感じているのはわかります。常に人間に対して警戒心を持ち、子猫にも人間の怖さを教えているのかもしれません。
ねず美ちゃんもノラの子どもなので、人間に対してそれほど愛想がいいほうではありません。猫好きの美子ちゃんのお父さんも、ねず美ちゃんをいつも遠慮がちに撫でていました。ところが、美子ちゃんの姪のほのちゃんにはすごくなついていて、ダッコしても嫌がりませんでした。ほのちゃんが来たのは2、3回なのに、なんでそんなになつくのかわかりません。
遠慮がちにねず美ちゃんを撫でるお父さん。
ねず美ちゃんは、ほのちゃんにだけは気を許します。
ねず美ちゃんの子どものたびちゃん、タバサちゃんはノラ育ちでもないのに、知らない人に対して極端な警戒心を持っています。お客さんが来たときなど、その人が玄関に現れると同時に外に飛び出して行きます。そして、お客さんが帰るまで帰ってきません。
お客さんが長時間いると、どこからともなく庭に現れて、ノラのようにニャーニャー鳴いて外からゴハンをねだります。猫缶が入った皿を外に出すと、逃げ腰のまま慌てて食べてまたどこかに行ってしまいます。外に出る猫たちなので、人になつかないから誰かに連れ去られる心配はないのですが(みすぼらしい猫なので、連れ去る人もいないと思いますが)、何ゆえそれほど人を敬遠するのかよくわかりません。ねず美ちゃんが教えるわけはないので、どこかの家に遊びに行って、追い払われたり叩かれたりしたことがあるのでしょうか。
以前『猫びより』という雑誌の版元の矢崎社長から、「猫飼っているならうちの雑誌に出てくれない?」と言われ、「いいですけど、うちの猫は人見知りがひどいから難しいかもしれませんよ」と言ったのですが、「大丈夫、みんな慣れてるから」ということで、取材してもらうことになりました。
当日、矢崎社長自ら、編集者、ライター、カメラマンを引き連れてお見えになりました。案の定、うちの猫たちは逃げる態勢になりましたが、取材なので猫の出入り口は塞いでおきました。
冬の寒い日だったので、みなさんにコタツに入ってもらい、まずは僕と美子ちゃんがインタビューされました。ねず美ちゃんが隣の部屋のタンスの上で寝ていたので、そっとダッコして写真を撮ってもらいました。でも、ねず美ちゃんはすぐ逃げてしまいました。
たびちゃんとタバサちゃんは、ソファーの下に潜って出てきません。カメラマンの方は警戒心の強い猫の撮影にも慣れているのか、カメラを構えて根気よく待っていましたが、出てくる気配がまったくありません。時間は刻々と過ぎていきます。
カメラマンもこれ以上待てないと思ったのか、突然ソファーを持ち上げました。当然2匹は飛び出して逃げます。たびちゃんを捕まえようとすると、ウギャーとものすごい声で鳴きながら、部屋の中をグルグル走り回り、パッと消えてしまいました。前に顔デカくんの背中を叩いたときも、部屋中走りまわりパッと消えて、押し入れの中に大量のウンコをされたことがありましたが、猫は危険を察知するとパッと見事に消えます。
結局、たびちゃん、タバサちゃんの撮影は諦め、ねず美ちゃんだけをなんとか風呂場に閉じ込め、僕と美子ちゃんがバスタブに入って暴れる猫を抱いているという、なんとも奇妙な写真を撮ってもらいました。必要なカットが撮れなくて申し訳なかったので、美子ちゃんが撮った写真を後日編集部に送りましたが、さすがにあそこまでなつかない猫は、カメラマンの方にとっても初めてだったのではないでしょうか。
猫じゃらしなど、猫を遊ばせるグッズもいろいろ持ってこられていましたが、うちの猫にはまったく役に立ちませんでした。まるで野生動物のように警戒心が強いのはなぜなのか、いまだにわかりません。
南文子さんに可愛がってもらうねず美ちゃん。
※次回:第40回は2017年1/9(月)、公開予定です。それでは皆さん、よいお年をお迎えください。
3ヵ月ほど前に軽井沢の小さなホテルに泊まったのですが、そこには猫がいて、お客さんに撫でられても平気でジッとしていました。人になつく猫となつかない猫の違いは、何が原因なのでしょうか。
ノラの場合は人間に追いかけられたりするので、人間に対して恐怖を感じているのはわかります。常に人間に対して警戒心を持ち、子猫にも人間の怖さを教えているのかもしれません。
ねず美ちゃんもノラの子どもなので、人間に対してそれほど愛想がいいほうではありません。猫好きの美子ちゃんのお父さんも、ねず美ちゃんをいつも遠慮がちに撫でていました。ところが、美子ちゃんの姪のほのちゃんにはすごくなついていて、ダッコしても嫌がりませんでした。ほのちゃんが来たのは2、3回なのに、なんでそんなになつくのかわかりません。
ねず美ちゃんの子どものたびちゃん、タバサちゃんはノラ育ちでもないのに、知らない人に対して極端な警戒心を持っています。お客さんが来たときなど、その人が玄関に現れると同時に外に飛び出して行きます。そして、お客さんが帰るまで帰ってきません。
お客さんが長時間いると、どこからともなく庭に現れて、ノラのようにニャーニャー鳴いて外からゴハンをねだります。猫缶が入った皿を外に出すと、逃げ腰のまま慌てて食べてまたどこかに行ってしまいます。外に出る猫たちなので、人になつかないから誰かに連れ去られる心配はないのですが(みすぼらしい猫なので、連れ去る人もいないと思いますが)、何ゆえそれほど人を敬遠するのかよくわかりません。ねず美ちゃんが教えるわけはないので、どこかの家に遊びに行って、追い払われたり叩かれたりしたことがあるのでしょうか。
以前『猫びより』という雑誌の版元の矢崎社長から、「猫飼っているならうちの雑誌に出てくれない?」と言われ、「いいですけど、うちの猫は人見知りがひどいから難しいかもしれませんよ」と言ったのですが、「大丈夫、みんな慣れてるから」ということで、取材してもらうことになりました。
当日、矢崎社長自ら、編集者、ライター、カメラマンを引き連れてお見えになりました。案の定、うちの猫たちは逃げる態勢になりましたが、取材なので猫の出入り口は塞いでおきました。
冬の寒い日だったので、みなさんにコタツに入ってもらい、まずは僕と美子ちゃんがインタビューされました。ねず美ちゃんが隣の部屋のタンスの上で寝ていたので、そっとダッコして写真を撮ってもらいました。でも、ねず美ちゃんはすぐ逃げてしまいました。
たびちゃんとタバサちゃんは、ソファーの下に潜って出てきません。カメラマンの方は警戒心の強い猫の撮影にも慣れているのか、カメラを構えて根気よく待っていましたが、出てくる気配がまったくありません。時間は刻々と過ぎていきます。
カメラマンもこれ以上待てないと思ったのか、突然ソファーを持ち上げました。当然2匹は飛び出して逃げます。たびちゃんを捕まえようとすると、ウギャーとものすごい声で鳴きながら、部屋の中をグルグル走り回り、パッと消えてしまいました。前に顔デカくんの背中を叩いたときも、部屋中走りまわりパッと消えて、押し入れの中に大量のウンコをされたことがありましたが、猫は危険を察知するとパッと見事に消えます。
結局、たびちゃん、タバサちゃんの撮影は諦め、ねず美ちゃんだけをなんとか風呂場に閉じ込め、僕と美子ちゃんがバスタブに入って暴れる猫を抱いているという、なんとも奇妙な写真を撮ってもらいました。必要なカットが撮れなくて申し訳なかったので、美子ちゃんが撮った写真を後日編集部に送りましたが、さすがにあそこまでなつかない猫は、カメラマンの方にとっても初めてだったのではないでしょうか。
猫じゃらしなど、猫を遊ばせるグッズもいろいろ持ってこられていましたが、うちの猫にはまったく役に立ちませんでした。まるで野生動物のように警戒心が強いのはなぜなのか、いまだにわかりません。
※次回:第40回は2017年1/9(月)、公開予定です。それでは皆さん、よいお年をお迎えください。