サステイナビリティ学とは何か
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「サステナビリティ学」はお金やモノ以外の幸せを考える
サステイナビリティ学とは何か
住明正(理学博士/東京大学名誉教授/東京大学未来ビジョン研究センター 客員研究員)
2005年、東大初の分野横断的組織として創設されたのがサステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)だ。3つのSは、System、Sustainability、Scienceの頭文字であり、地球・社会・人間という3つのシステムの統合による持続型社会の構築を目指している。IR3S教授にして国立研究開発法人国立環境研究所理事長を務める住明正氏にその学問内容を伺った。
時間:10分55秒
収録日:2015年11月27日
追加日:2016年2月25日
≪全文≫

●いまの問題と併走し、人々の幸せを最大化する学問


―― サステイナビリティ学とは何か、実生活にどう役立つものなのか。学問としての捉え方と実社会での生かし方、今後の方向性について

住 サステイナビリティ学の捉え方で現在一番大きいのは、これからの社会をどういうふうにつくっていくか、そのために進む学問だということです。例えばいま、目の前にはいろいろな問題がありますが、どうも互いに相当絡んでいるようです。お互いに絡んでいるから、一つの問題を解くために、全ての問題を考えなければならなくなっている。そういうあらゆることを、全体的に考えようとする学問です。

 従来の学問、特に理学系では、あるものを解明すればその利用はおのずと開かれると思ってきましたが、実は必ずしもそうではありませんでした。これからは、どういう行動を取るかも同時に考えなくてはならない。そういうトータルな学問だと思います。

 サステイナビリティ学では、とりわけ社会生活に配慮します。人間は常に社会に住んでいますから、人の気持ちなどを非常に重視するわけです。現在の一番の目標は「ハピネス」や「ウェルビーイング」だといわれますが、そのように人々の幸せ度を最大化し、そのための方法を考える学問であると捉えていただくといいと思います。


●カネとモノでは幸せを最大化できなくなった世界


住 昔は貧乏でしたから、人々の幸せを最大にする方法は金儲けでした。お金さえ儲かれば全ての人は幸せになれる。そういう仮定が、第一次近代では成り立ちました。

 戦後、焼け出されてほとんど何もない状態から考えれば、まずお金でした。金さえあればいろいろなモノが買える。家も買える。モノが豊かになりさえすれば、人の幸せは全部付いてくるだろうという時代だったのです。

 しかし、いまはそういう時代ではありません。モノは余っているし、モノの全てが人を豊かにはしない状況になってきたわけです。そうした中でどうすればいいかというのは、別の問題です。それを考えていくのがサステイナビリティ学という学問です。

 逆に言うと、人間は「いまでも発展途上」だろうということです。ただし、人間は全てのことを考えることができるのかという容量上の問題もあるので、それも今後の問題になってくると思います。

 いまの一つの方向は、ネット社会をどう捉えるかという問題と同様、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹
培養肉研究の現在地と未来図(1)フェイクミート市場とリアルミート研究
食肉3.0時代に突入、「培養肉」研究の今に迫る
竹内昌治

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
人生100年時代の「ライフシフト概論」(3)キャリアの危機〈下〉
40代前半に訪れる「中年の危機」、鍵は「人生の成長戦略」
徳岡晃一郎
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏