サステイナビリティ学とは何か
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「サステナビリティ学」はお金やモノ以外の幸せを考える
サステイナビリティ学とは何か
科学と技術
住明正(理学博士/東京大学名誉教授/東京大学未来ビジョン研究センター 客員研究員)
2005年、東大初の分野横断的組織として創設されたのがサステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)だ。3つのSは、System、Sustainability、Scienceの頭文字であり、地球・社会・人間という3つのシステムの統合による持続型社会の構築を目指している。IR3S教授にして国立研究開発法人国立環境研究所理事長を務める住明正氏にその学問内容を伺った。
時間:10分55秒
収録日:2015年11月27日
追加日:2016年2月25日
≪全文≫

●いまの問題と併走し、人々の幸せを最大化する学問


―― サステイナビリティ学とは何か、実生活にどう役立つものなのか。学問としての捉え方と実社会での生かし方、今後の方向性について

住 サステイナビリティ学の捉え方で現在一番大きいのは、これからの社会をどういうふうにつくっていくか、そのために進む学問だということです。例えばいま、目の前にはいろいろな問題がありますが、どうも互いに相当絡んでいるようです。お互いに絡んでいるから、一つの問題を解くために、全ての問題を考えなければならなくなっている。そういうあらゆることを、全体的に考えようとする学問です。

 従来の学問、特に理学系では、あるものを解明すればその利用はおのずと開かれると思ってきましたが、実は必ずしもそうではありませんでした。これからは、どういう行動を取るかも同時に考えなくてはならない。そういうトータルな学問だと思います。

 サステイナビリティ学では、とりわけ社会生活に配慮します。人間は常に社会に住んでいますから、人の気持ちなどを非常に重視するわけです。現在の一番の目標は「ハピネス」や「ウェルビーイング」だといわれますが、そのように人々の幸せ度を最大化し、そのための方法を考える学問であると捉えていただくといいと思います。


●カネとモノでは幸せを最大化できなくなった世界


住 昔は貧乏でしたから、人々の幸せを最大にする方法は金儲けでした。お金さえ儲かれば全ての人は幸せになれる。そういう仮定が、第一次近代では成り立ちました。

 戦後、焼け出されてほとんど何もない状態から考えれば、まずお金でした。金さえあればいろいろなモノが買える。家も買える。モノが豊かになりさえすれば、人の幸せは全部付いてくるだろうという時代だったのです。

 しかし、いまはそういう時代ではありません。モノは余っているし、モノの全てが人を豊かにはしない状況になってきたわけです。そうした中でどうすればいいかというのは、別の問題です。それを考えていくのがサステイナビリティ学という学問です。

 逆に言うと、人間は「いまでも発展途上」だろうということです。ただし、人間は全てのことを考えることができるのかという容量上の問題もあるので、それも今後の問題になってくると思います。

 いまの一つの方向は、ネット社会をどう捉えるかという問題と同様、...

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