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進化を遂げる中国と日本はどのように付き合うべきか?

2017年世界と日本(4)中国経済高度化と拡張主義(後編)

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
情報・テキスト
中国は、国を挙げて「中国夢」に向かう習近平体制の下、ニュー・エコノミーの進展、人材育成などで目覚ましい成果を挙げている。その一方で、中国の軍事拡張主義は決して油断できない。われわれは、これからどうやって中国と付き合っていけばいいのか。前回に続き、公立大学法人首都大学東京理事長・島田晴雄氏が中国経済高度化と拡張主義について語る。(2017年1月24日開催島田塾第142回勉強会島田晴雄会長講演「2017年 年頭所感」より、全11話中第6話)
時間:10:34
収録日:2017/01/24
追加日:2017/05/09
カテゴリー:
≪全文≫

●ニュー・エコノミーの進展にみる中国の大変化


 中国の現状についてもう1つ挙げると、中国は、ニュー・エコノミーの進展がすごい。例えば、IT企業世界トップ10社の時価総額を見ると、トップは当然、Googleですね。2番目はAmazon。3番目はFacebook。それになんと、アリババ、騰訊控股(テンセント)、百度(バイドゥ)、京東集団という会社がやっている京東商城が続いています。つまり、世界の10社のうち4社が中国ということで、もうここまで来ているのです。


●中国の今を語る新幹線と沿線のビルの林立


 実は、面白いことがありました。昨年(2016年)の4月に、島田村塾で毛沢東の出身地である湖南省に行ったのですが、上海から向かおうということになり、都合のいい飛行機便がないため、「だったら、新幹線で行こうよ」ということになったのです。「中国の新幹線に乗るのか…。中国の新幹線って鉄橋から落っこちたことがあるんじゃないの?」と思ったのですが、島田村塾は命懸けの塾ですから、乗ることにしました。

 すると、上海から長沙(チャンサ)まで1,200キロほどでおよそ4時間かかったのですが、線路も車両も立派で、車内ではお茶のサービス、お菓子のサービスもありました。そして駅がまた非常に大きく、宇宙基地のようでした。途中で約40階建てのビルが10棟ほど見えるのですが、さらに進んでいくと数キロほどの間に住宅団地、工場団地がずらっと並んでいるので「あれっ」と思うと、10キロから15キロほど進んだ先に、また大きなビルが見えてきました。

 この新幹線について、中国が目くじらを立てるのは、中国の方が日本よりもずっと進んでいると確信を持っているからです。どういうことかというと、新幹線の延長総距離がたった5年間で日本の4.5倍となり、あの大きな大陸を十字に走らせているのです。それだけやろうとすれば、技術者は日本の20倍ほど必要です。ですから、「ラーニング・バイ・エクスペリエンス」(大規模実証実験)はすごいと思います。世界で競争しても、向こう(中国)の方が強い可能性はあると思います。そういうところまで、中国は来ているのです。


●中国語・日本語・英語で交わした湖南大学のセミナー


 そうして、長沙に着きました。そこには毛沢東の像があるといいます。「どこだ?」「池のほとりにある」ということで行ってみたら、なんと、高さ25メートル、横40メートル、スフィンクスのような像なのです。石造りですから、まるでスフィンクスです。

 そこには、湖南大学という大学もあります。5万人ほど学生のいる一流大学の一つなのですが、中国にはそういう大学が20校ほどあるのです。そこで、「島田教授を囲んでのセミナー」というものをやりました。250人ほど出席しました。「日本経済の話をしてほしい」と言われたのですが、日本経済ならついでに中国経済もと思ったわけです。

 セミナーでは当然、向こうは日本語でやるものと思っていたようですが、私は「嫌だ」と言いました。「中国語を習って2年半目だから中国語でやる」と言って、35分間ですが、しっかりとやり遂げることができました。中国の歴史から新常態まで、また日清戦争からアベノミクスまで、そして日中協力で何ができるか、ということを話しました。

 すると結構、皆、「(私の中国語が)分かった」と言うのです。そこで、質問を募りました。なんと彼らは本当に分かっていたのです。ただ、質問は中国語でされてもヒアリングができないので駄目ということで「日本語ができる人は日本語で質問してください。英語のできる人は英語でね」と言ったら、50人ほどの学生が日本語を話せるというのです。しかも後は全員、英語ができます。日本語で聞いた人は中国語に訳し、英語の人もそうして、なんと3カ国語でちゃんとやりとりができた、見事な質問でした。


●人材育成に注力した中国の成果を目の当たりにする


 セミナーを終えて、「これはヤバいな」と思いました。(私はこれまでに)慶應大学や東京大学も見ていますが、ちょっとかなわないなと思ったのです。清華大学や上海交通大学ほどレベルは高くないのですが、こうした大学が中国に20ほどあるのです。中国は人材をつくっていたということです。私は20年後に、慶應大学の卒業生とこの中国の学生が競争したら、と思うと背筋が寒くなりました。そのときにはおそらく、彼らの背中が見えなくなっていると思います。

 なぜなら、次のようなことを言った学生がいるからです。私は「日本が失われた20年を経験したのはどういう理由か」について話をしたのですが、そうしたら、(ある学生が)「島田教授は、日本の失われた20年が、もっぱらアメリカが理由だということを講演で言われましたが、私は違う理由があると思います」と言って、3つほど理由を挙げました。彼らはちゃんと理解しているの...
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