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課題山積みの安倍首相が打ちだす渾身の打開策とは

2017年世界と日本(8)第二次アベノミクスの総括と可能性

島田晴雄
公立大学法人首都大学東京 理事長
情報・テキスト
公立大学法人首都大学東京理事長・島田晴雄氏が第二次アベノミクスの総括と今後の可能性について語る。第二次アベノミクスを経て、今、安倍首相が打ち出しているのが「1億総活躍」だ。海外から先進成熟国の実験として注目されているその基本項目、課題点について解説し、激動する世界の中の日本を考える。(2017年1月24日開催島田塾第142回勉強会島田晴雄会長講演「2017年 年頭所感」より、全11話中第10話)
時間:05:55
収録日:2017/01/24
追加日:2017/05/15
≪全文≫

●課題山積みの安倍首相が打ちだす渾身の打開策-1億総活躍


 (前回、「安倍首相はアベノミクスで努力をしている」というお話をしました。)しかし結局、デフレから脱却できず、成長は実現できず、実質賃金はむしろ低下気味です。円安で輸入物価は上がるのに生活は圧迫、消費税が上がっていきます。また、円安で名目経済(成長率)は低下します。中国に比べたら、円安でかえって購買力は縮小しているからです。そして、日銀の莫大なベースマネーによって、前回お話ししたように財政再建が達成できなければ暴落のリスクもあるということで、そうした問題が起こるかもしれません。こういうことになっていて、普通の人が見たら、安倍首相の政策は失政ということになります。

 そんな中、やはりしぶといですね。考えた彼は、「1億総活躍だ」と言ったのです。皆さん、1億総活躍とは何か、分かりますか? 私はよく分からなかったので、(資料を)非常によく読み込みました。今や明快に説明できます。


●構造問題の元凶は人口減


 安倍首相はこう言います。「海外の投資家に会うと、シビアな声が聞こえてくる。日本はどんなに改革を進めても、今後、人口は減っていく。持続的な成長はない。投資をやっても期待できない。この構造的な問題をアベノミクスはどうするのか」。

 要するに、人口が増えないと駄目なのだという認識だというわけです。実際、今、生産性上昇率は、1.2~1.5パーセント。これは、あらゆる専門機関からの情報です。人口は毎年、0.7パーセントずつ減っており、潜在成長率は0.5~0.8パーセントです。この程度では、抱えている問題を処理できません。3パーセント成長を成し遂げなければ、財政も社会保障も解決できないと、政府が言っています。つまり、全然成長できていないのです。『三丁目の夕日』のような(高度成長の)時代には、生産性が8パーセント上昇して、人口が2パーセントずつ増えていったから、(成長率は)10パーセントに行ったのです。人口減というのは恐ろしいものなのです。

●肝入り人事で動き出した1億総活躍の3本の矢


 では、何をすべきか。安倍首相はこう書いています。「その第一歩は、少子高齢化に歯止めをかける。ただ人数が確保できたらそれでいいのではない。誰もが一人一人が輝ける仕組みを作らなければいけない。その大きな仕事を、私は、加藤勝信(氏)に委ねたいと思う。加藤氏は、これで横断的に仕事を進めていかなければならない。しかも、その新三本の矢を命中させなければいけないのにあたり最適な人材だ。彼は、2年9カ月、官房副長官を務めてきた。彼には、国家公務員の一元管理を担う内閣人事局の初代局長もさせた。自民党厚生労働部会長もした。社会保障制度に関する特命委員会事務局長もした。指令塔切り込み隊長として、加藤勝信(氏)以上の人はいない」。この加藤氏が「1億総活躍を全省庁に命令する」と、今、中心になってやっているのです。

 そこで、「1億総活躍」とは何かというと、3項目あります。希望出生率1.8の実現や働き方改革などですが、もっと分かりやすく言うと、「新三本の矢」です。第一の矢は「希望を生み出す強い経済」で、2020年までに(GDP)600兆円(を目指す)というものです。これは3パーセント成長を6年続けると達成できることになっています。第二の矢は「夢をつむぐ子育て支援」で、2020年代半ばまでに希望出生率1.8(を目指す)というものです。ちなみに今は、(合計特殊出生率)1.4ほどです。第三の矢は「安心につながる社会保障」で、介護離職ゼロ(を目指す)というものです。


●1億総活躍政策に海外からは高評価


 この「1億総活躍」に海外が非常に好意的に反応しています。『The Economist』は“Overhyped, under appreciated”と書いています。どういうことかというと、「アベノミクスに関しては、安倍首相はちょっとはしゃぎすぎだが、世間が批判するほどひどくはない。結構、落ち着いた」という意味です。

 また、私の友人で(国際経済の)専門家のアダム・ポーゼン氏は『Financial Times』にこうはっきりと書いています。“Abe’s stimulus is a lesson for the World.”つまり、「世界中、安倍に見習え」といっているのです。これは、「先進成熟国は皆、高齢化と労働力低減で苦労している。安倍政権の1億総活躍は予算措置も付けているから、先進成熟諸国にとって注目すべき実験なのだ」ということです。実際、政府の関係機関は皆、何百ページものレポートを出して提案していて、予算措置も全部付いています。


●配偶者控除問題未解決の背景


 そして、働き方改革を進めています。配偶者控除問題ですが、またしても解決には至りませんでした。なぜか。配偶者控除ですが、103万円までの稼得の人を専業主婦といいます。それ以上稼ぐと「専業」ではありませ...
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