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日本経済活性化の鍵となる自然資源の活用策

高齢化と財政危機(24)自然資源の徹底活用

島田晴雄
公立大学法人首都大学東京 理事長
情報・テキスト
公立大学法人首都大学東京理事長の島田晴雄氏は、自然資源を徹底的に活用すれば、日本経済のパイの拡大も不可能ではないと主張する。バイオマス発電による森林資源の再活用、農業の大規模化と近代化、さらには自然エネルギー発電の本格的な取り組みが、日本経済活性化の鍵となるだろう。(全24話中第24話)
時間:14:13
収録日:2017/10/05
追加日:2017/12/20
≪全文≫

●日本は異常に森林が多いが、ほとんど活用されていない


 日本経済のパイを増やしていくために必要な、自然資源の活用について、最後に3点お話しします。第1に林業です。日本の国土の7割は、森林で覆われています。世界全体で見れば、陸地が3割で、そのうちの3割しか森林に覆われていません。つまり、日本は異常に森林が多いのです。ところが、それがほとんど活用されていません。

 戦争中、軍事目的で森林のほとんどが伐採されました。戦後、日本人はその裸の山に一生懸命植林をしてきたのです。天皇陛下が率先され、実際、見事に植林が実現しました。しかし、現在、植林した木材は全く使われていません。日本経済が高度成長を始めると、円高になり、外国の材木を買った方がはるかに安くなったからです。インドネシアから速成されたバルサ材を買ったり、カナダから杉を買ったりしているわけです。

 杉は30年サイクルです。30年以上放置しておくと、荒れてきます。ヒノキはもう少し時間がかかりますが、いずれにせよ、荒れる前に間伐して整備しなければなりません。ところが、林業そのものが廃れています。若い人が林業に従事しないのは、給料が非常に低いからです。枝落としをする人がおらず、枝が育ってきて日光が当たらなくなります。そうなれば、山は何年も床屋に行かなかったような頭になってしまいます。


●バイオマス発電で光明が差す


 しかし、これほど多くの森林資源を有している国は、世界でも本当にまれです。東京大学第28代総長の小宮山宏氏が力説しているように、日本の森林の8パーセントを使うだけで、今の日本の木材需要を全て満たすことができます。ところが人材不足のため、活用されていないのです。

 ただし、最近一筋の光明も見えてきました。バイオマス発電です。菅直人政権時代に、バイオマスで発電した電力の買い取り制度ができました。収入が期待できるため、各地の山の中腹に、発電工場が建設されつつあります。それに伴って、林道も整備されるでしょう。バイオマス発電には、間伐材が使われており、立派な木は残っています。残った立派な木は、林道を通じて下ろしてきて、製材すればいいのです。ドイツや北欧の高性能の製材機械を使えば、売ることができるでしょう。所得が上昇し、好循環が生まれます。これはアベノミクスに書かれていないことですので、大いに力説しておきます。


●平成の農地改革をすべきだ


 自然資源の活用について、第2の点は農業です。現状を見てみましょう。販売農家は190万戸、そのうち米を作っている農家は160万戸です。昔は専業農家と言われていた主業農家、主に農業に従事している農家は42万戸です。米を作っているのは、そのうちの30万戸です。かつては第1種兼業農家といわれていましたが、準主業農家は44万戸、米作しているのは39万戸です。最大は副業的農家、つまり主な所得が農業以外から来ている人たちは109万戸、米作は95万戸あります。また、高齢化はかなり進んでおり、主たる農業者の平均年齢は66~67歳です。

 こうした構造をつくったのは、終戦直後の農地改革です。かつては、日本の農地のほとんどが、地主によって大規模所有されていました。これを改革したのが、マッカーサーの名を借りた、日本の若手官僚です。その結果、小作人が自作農になり、小規模農家ばかりになってしまいました。地主は農業に入れなくなったのです。また、新規参入が難しく、また規模の経済が働きません。日本の農業生産性は、世界の中でも最下層です。私は平成の農地改革をすべきだと思います。


●大企業と大規模農家が、近代的な農業生産をするべきである


 終戦直後の農地改革では、土地が細かく切り分けられて、多くの人に分配されました。例えば、北海道の伊達市は人口が3万数千人程度ですが、広大な土地で、高齢化が著しく進んでいます。市の中心に盆地があって、小さい街があり、人口のほとんどが集中しています。農家の方々は山の中に住んでいて、高齢の独身女性が暮らしています。彼女らは、街に買い物に行くのに大変な苦労を強いられています。バスは2時間に一本くらいしか来ません。

 私は小泉純一郎元総理に頼まれて、伊達市の大復興を手伝いました。タクシーの料金を距離料金ではなく時間料金にしたのです。タクシーも、特殊な条件のときにのみ、時間料金にできるのですが、それを国交省に認めてもらいました。距離料金であれば、ショッピングセンターへの往復で4~5,000円かかりますが、時間料金ではもっとわずかです。さらに、乗り合い制にすれば、数百円で往復できます。これは大変喜ばれましたが、しかし実際にはそんなことをやっているような時代ではありません。

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