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人にできたことで、自分ができないことは何もない

私の「葉隠十戒」(4)同じ人間が、誰に劣り申すべきや

執行草舟
実業家/著述家/歌人
概要・テキスト
第九戒「必死の観念、一日仕切りなるべし」は、毎日「やりきる」ことの重要さを述べたものである。明日を思い煩わず、日々自分の生命と対面する。その日に全力を投入せよという意味である。第十戒「同じ人間が、誰に劣り申すべきや」は、武士道が真の平等思想であることを表す言葉である。肉体や物質に関わるものをすべて忘れ、魂と生命で勝負するなら、将軍も足軽も関係ない。人ができたことで、自分ができないことは何もない。そう思えなければ武士道も全うできない。武士道は何千年の歴史を抱えた日本文化の背骨である。武士道を掲げたなら、今の政治家や学者が何を言っても、まったく関係ないのだ。(全4話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11:57
収録日:2021/04/08
追加日:2021/10/22
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≪全文≫

●明日を思い煩うな、その日に全力を投入せよ


―― 続きまして第九戒ですが、「必死の観念、一日仕切り(しきり)なるべし」。

執行 人生は死に向かって生きるわけだけれど、毎日必ずどこでもいいから、「死ぬ」という観念を持って生きなければ、1日も「本物の日」はないということです。「本物の日」とは、毎日その日で死んだ日ということです。だから死ななかった日は、嘘ということ。

―― 「やりきる」ということですか。

執行 「やりきる」ということ。その日その日、生命を燃やし尽くすということ。それは生命論的に言うと、死んだということ。次の日のことを考えてはならんということです。

―― よく仕事でも勉強でもスポーツの練習もそうですが、本当にやりきるかどうかが大事と言われます。

執行 宗教でも何でもそうです。イエス・キリストが言っているのも、信仰にとって一番重要なのは「明日のことを思い煩うな」ということです。日々自分の生命と対面しろと言っています。それと同じ意味です。

―― まさに今日できる最善をなせと。

執行 最善をなせ。その日に全力を投入せよ、ということです。今日、「必ず死ね」ということです。

―― 言葉は、本当にそういう意味ですね。

執行 武士道特有の言葉遣いです。


●武士道は「真の平等思想」を説いている


―― 最後が、前の講義でも非常に印象的な言葉で、第十戒の「同じ人間が、誰に劣り申すべきや」。

執行 これがなければ、どんな大業もなすことはできません。実は武士道は、真の平等思想を説いています。なぜなら武士道が問題にしているのは、生き方であり、生命の問題、それから魂の問題だからです。

 武士道に関しては、全員がまったく条件は一緒です。誰がやりとおしたか、ということです。武士の世界なら、将軍も足軽もない。将軍ですら、武士道にもとることをやれば、「バカで卑怯な情けない将軍」だと言われるわけです。

 逆に足軽でも武士道に則って生きたら、「彼はいい素晴らしい武士で、素晴らしい人生を送った」と言われる。要するに肉体や物質に関わるものすべてを忘れて、「魂と生命」という本当に平等なもので人生を勝負しろということです。

―― これはずっと話が出ていた、数量に置き換える話ではなく、同じ人間なんだから……。

執行 そう。数量に置き換えないと、実は人間は全部、平等だとわかるので...
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