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見えない努力、無欲…昔の日本女性の「強さ」と「重力」

勢いと余白(7)見えないところで整える

概要・テキスト
「見えないところで本当にきちんと整えるのが『日本の感性』」だとコシノジュンコ氏は語る。それは「おもてなし」もそうだし、美空ひばりが日々の暮らしからステージまで、一貫して努力していたのもそこだった。昔の日本女性はみんなそうで、「無欲」で見た目はおとなしいが、国や世間を気にしない強さがあった。そうした人たちの積み上げの中でコシノ芸術も生まれている。コシノ芸術の「勢い」はそのようなものの堆積、重力から生まれているのである。(全11話中第7話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10:17
収録日:2022/10/06
追加日:2023/01/27
カテゴリー:
≪全文≫

●見えないところで本当にきちんと整えるのが「日本の感性」


執行 あと、やっぱり水茄子(みずなす)もおいしかった。あれは岸和田の?

コシノ そう。水茄子は、岸和田のある「点」みたいなところから取り寄せるんです。「どこでもいい」じゃないんです。その漬け方が(素晴らしい)。東京まで来るあいだに何時間かありますよね。その時間を計算して、ちょっとナマみたいな感じで(送る)。(東京に着いて)食べる頃になると、ちょうど味付けがいい。その辺がすごく、プロですね。

執行 すごいなぁ。

コシノ 見えないけれど、裏ではそういう感性や努力がある。見えないのですが、それが本当の「おもてなし」だと思います。「もてなす」というのは、前もって人に見せつけるものではないんです。

執行 準備のことを言うんですよね。

コシノ 見えないものですよね。聞いた話ですが、江戸時代は「思ってもみないことを成し遂げる」というふうに言ったらしいのです。だから、先に答えを言ってはダメなんです。答えは一切言わない。

執行 私が聞いたのは「おもてがない」と。

コシノ それは私が勝手に考えたものです。『コシノジュンコ流おもてなし』(PHP研究所)という本を出したときに。「おもてなし」は敬語ですよね。「もてなす」に「お」ですから。それを「ひらがな」で書いて「漢字」にしたらどうかしら、そうすると「表がない」。全部、裏の仕事だと。

執行 「見えない」ということですね。

コシノ 見えないところで、本当にきちんと整えて、下ごしらえをして。これは見せるものではなくて。それによって、もう「点」みたいなもので感動するわけです。そこが「日本の感性」かなと思うんです。

執行 日本人の感性でしょうね。

―― 「誰かに何かをして差し上げる」ということも、ある意味ではその積み重ねということですね。その裏で、どういうことまで考えているか。

コシノ そうですね。

―― 先ほどの美空さんのお話も本当にそうですね。

コシノ いいでしょう?

―― ずっと覚えていらっしゃって。

コシノ ずっと忘れないです。

執行 あの人は日本で一番忙しかった人の一人です。そういう人が、かえって考えてくれた。

コシノ それをちゃんと、いちいち行ったところ行ったところで用意してくれているのです。

執行 大スターですからね。分刻みの人生。

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