10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
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テポドンや不審船事案による脅威から有事法制成立の動きへ

わが国の防衛法制の変遷(3)北朝鮮危機から9.11へ

吉田正紀
元海上自衛隊佐世保地方総監/一般社団法人日本戦略研究フォーラム政策提言委員
情報・テキスト
冷戦終結以後の日本の安全保障政策は、3段階で行われた。通常なら自国→周辺→世界へと広がっていくはずの防衛法制が、日本では、世界の国際秩序→周辺地域の安定→自国の安全確保と、逆にフォーカスした。その動きにこそ、日本と安全保障の問題点が潜んでいると、前海上自衛隊佐世保地方総監・吉田正紀氏は見ている。(全4話中第3話目)
時間:17:10
収録日:2014/09/24
追加日:2015/06/04
冷戦終結以後の日本の安全保障政策は、3段階で行われた。通常なら自国→周辺→世界へと広がっていくはずの防衛法制が、日本では、世界の国際秩序→周辺地域の安定→自国の安全確保と、逆にフォーカスした。その動きにこそ、日本と安全保障の問題点が潜んでいると、前海上自衛隊佐世保地方総監・吉田正紀氏は見ている。(全4話中第3話目)
時間:17:10
収録日:2014/09/24
追加日:2015/06/04
≪全文≫

●安全保障政策と防衛法制変化の第2段階は、北朝鮮危機から


 冷戦後のわが国の安全保障政策と防衛法制における変化の第2段階は、1994年の北朝鮮危機によって始まりました。北朝鮮の核開発疑惑に端を発した危機は、米国を中心とする国際社会が北朝鮮に対する経済制裁発動の動きを見せ、北朝鮮がこれに戦争で応じることを示唆したため、事態は極度に緊迫しました。

 湾岸危機が何と言っても遠く離れた中東で起きたことに比べれば、これは日本に対する直接的な脅威でしたが、当時のわが国にはほとんど準備がありませんでした。

 具体的には、朝鮮半島の有事=戦争状態になることに伴って生起する事態への備えです。韓国には平均1万人の邦人が短期・長期に及ぶ滞在をしていますが、彼らをどうやって救出すればいいのか。あるいは、戦争により生起する朝鮮半島からの大量の避難民に対する活動はどうするのか。あるいは、当然のことながら、日米安保条約に基づいて朝鮮半島における武力紛争当事国となる米国は日本の基地を使用するわけですが、その米国への支援はどう行うのか。さらに北朝鮮に対して、経済制裁の実効性を確保するためには船舶検査などの活動も必要になってきます。

 しかし、このような朝鮮半島での有事の際に当然必要になる事案に対する準備は、全くできていなかったのです。


●緊急事態への対応策を「薄皮1枚」までに詰めた橋本政権


 こうした教訓によって、日米両国の間で模索されていた冷戦後の日米安保のあり方は、1996年の「日米安全保障共同宣言」、1996年から98年の「日米防衛協力のためのガイドラインの見直し」作業と、この作業に基づく当時の新ガイドラインの策定となり、さらに、国内の防衛法制としては、「周辺事態安全確保法」の制定や、アメリカとの物品役務の相互調達を可能とする「ACSA(Acquisition and Cross‐Servicing Agreement)」の改正となりました。

 こうした日米間の作業と同時に、先ほど申し上げたような国内に生起するいろいろな緊急事態に対する対応策の検討も進められました。例えば、在外邦人等の輸送に関する法律の制定です。こうした一連の検討作業において、私は特に後半の、ガイドラインの取りまとめから法の策定までの担当として携わりました。

 当時、橋本龍太郎総理は、われわれ関係者に対してこのように言われました。「これまでわが国の安全保障法制は、憲法との関係において謙抑的であった」。つまり、憲法が絶対的な『白』だとすれば、グレーとしてのバッファーの部分を多く取ってきたということです。しかし、今回の検討では、「薄皮1枚まで検討を進めるように」と指示され、強い政治的リーダーシップを発揮されたのです。


●テポドンと不審船の出現が有事法制成立の突破口に


 第3段階は、1998年8月の北朝鮮のテポドン・ミサイル発射と、1999年3月の能登半島沖不審船事案でした。この過程において、冷戦後の世界における脅威の「特上」である大量破壊兵器の拡散およびテロやゲリラなどの不正規戦が、実はわが国自身の安全保障上の重要な問題であることが認識されました。その対応について、わが国の安全保障システムは、不十分であることが露呈されたのです。

 これを契機に当時の防衛庁において、自衛隊創設以来の大きな懸案であった、いわゆる有事法制、武力攻撃事態対処法制についての整備が始まることになりました。

 冷戦後に起こった...
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