吉田松陰の思想
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
戦後、奈良本辰也は吉田松陰を「敗者」と捉えた
第2話へ進む
徳富蘇峰は吉田松陰を「革命家→改革者」と再定義
吉田松陰の思想(上)松陰像の変遷(1)革命家から改革者へ
中島隆博(東京大学東洋文化研究所長・教授)
近代日本の精神的指導者として今なお語り継がれる吉田松陰は、時代と向き合い、時代と共に生きた「現在進行形の思想家」である。そして、吉田松陰を読むことは、私たちの時代を読むことでもある。東京大学東洋文化研究所教授・中島隆博氏が、田中彰氏の『吉田松陰 変転する人物像』を手引きに数多ある松陰論を紹介しながら、吉田松陰という思想家の魅力を語り尽くす。シリーズ「吉田松陰の思想」第1回。
時間:14分10秒
収録日:2015年2月26日
追加日:2015年7月13日
≪全文≫

●吉田松陰の語られ方は時代によって変わる


 中島隆博でございます。今日は、吉田松陰の思想をテーマにお話をしたいと思います。吉田松陰は30歳に満たない年齢で亡くなりました。一言でいうと「現在進行形の思想」が吉田松陰の思想だろうという気がしています。

 というのも、吉田松陰自身はその短い生涯の中で、ある思想を一貫して唱えたというよりは、自分が生きた時代を見ながら、あるいは、その時代に巻き込まれながら、大きく思想を変えていったからです。そうした時代を映す鏡として、吉田松陰の思想を捉えることができると思います。

 それと同時に、吉田松陰をどう語るのかがかなり大事なことだと思います。吉田松陰の語られ方は、時代によって相当に変わっていきます。ということは、吉田松陰自身が、時代を映す鏡になっているという面もあるのです。吉田松陰をどのように読むのかということは、その時代をどうつかまえていくのかという議論につながるだろうと思っています。

 吉田松陰の思想が「現在進行形の思想」であるとすれば、その思想と向かい合うことは、私たちが現在進行形で起きている事柄を、思想的にどうつかまえるのかということと深く関わってくるでしょう。


●最初に松陰伝が書かれたのは日清戦争直前


 最初に、吉田松陰の語られ方をざっと概観してみたいと思います。この点に関しては、田中彰先生の『吉田松陰 変転する人物像』(2001年)という著作があります。これは、大変良くできた本だと思います。そこで、この本を中心に、少し解説を付け加えていくという形で進めていきます。

 実は、吉田松陰について語ることは、彼の死後すぐに行われたわけではありません。吉田松陰の門人によって吉田松陰伝が書かれることはありませんでした。その試みはあったようですが、例えば、高杉晋作などは、そういった試みに対し、伝記のような書き方では松陰先生のことは書けないだろうと批判したともいわれています。

 最初に『吉田松陰伝』が書かれたのは、明治24(1891)年です。日清戦争の直前期、つまり明治半ばになって、ようやく書かれたわけです。それは、ある種の史料集ともいうべきものですが、野口勝一と富岡政信の共編で、彼らは旧水戸藩の士族でした。つまり、自分の弟子ではなく、旧水戸藩の士族によって松陰の伝記が編まれていったのです。後で説明しますが、吉...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
老荘思想に学ぶ(1)力のメカニズム
老荘思想は今の時代に人類の指針となる
田口佳史
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
法隆寺は聖徳太子と共にあり(1)無条件の「和」の精神
聖徳太子が提唱した「和」と中国の「和」の大きな違いとは
大野玄妙

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
内側から見たアメリカと日本(5)ヒラリーの無念と日米の半導体問題
大統領選が10年早かったら…全盛期のヒラリーはすごすぎた
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
人生100年時代の「ライフシフト概論」(3)キャリアの危機〈下〉
40代前半に訪れる「中年の危機」、鍵は「人生の成長戦略」
徳岡晃一郎