●安倍首相が推進する日米同盟強化と歴史問題
まず、私と安倍晋三さんとの関係ですが、新聞にいろいろと書いてありますけれども、実はほとんど会っていないです。安倍内閣ができる前にはいろいろと連絡がありまして、私の意見を申し上げました。その意見は新聞にも書きましたけれども、安倍さんが推進しようとする保守主義には議題が二つあるということです。一つは日米同盟を強化すること。それからもう一つは歴史問題です。だいたい、どのような国でも自分の国の歴史と伝統を否定したら生きていけないですから。これをもう一度立て直さなければいけないと申し上げました。従軍慰安婦、それから靖国参拝、憲法改正、そういったことが全部含まれます。
●右傾化と日本批判をする中国の意図
ところが、これに対して中国は反対なのです。当然、今のアジアにおける競争国ですから、日本が強くなることは何でも反対するのです。ただ、そういった反対はできませんから、中国は日本の右傾化批判にことかけて反対しているのです。
中国はまず、靖国参拝あたりから始めて、「日本が右傾化している」という批判をアメリカに持ち込むのです。そうすると、日米同盟強化が難しくなるのです。アメリカでも分かった人も分からない人もいるし。中国の挑発で踊る人も踊らない人もいるのですが、話がややこしくなるのです。
●最優先すべきは日米同盟の強化
それで、歴史問題という大きなアジェンダを後回しにして、まず日米同盟を固めるべきだというのが、私の意見なのです。
これは安倍さんに伝わっています。現にそのように行動されていますよね。そこまでは私も関与しましたが、ただそれは長い間の私と安倍さんとの関係でそのような意見を申し上げていたのです。一旦総理になられたら、それほど会うわけにはいきません。それに私が一番信頼している後輩の谷内正太郎と兼原信克の二人が官邸に入ったので、二人に任せればよいし、何か言いたいことがあれば二人を通じて言えばいい。ですから、私は政権ができてから安倍さんに半年間会いませんでした。
●古来より政治の要諦は人事にある
ただ、6カ月会わなかったら、何をしておられるかなとやはり少し気になって、それで6月に2、3回会いました。ところが、そこで驚いたのは、とにかくもう私の意見など必要ないのです。本当に安倍さん主導でどんどんやっています。第一安倍内閣以来、いろいろ考えておられ、全て頭の中で計画されていたのでしょうね。それを息もつかずにどんどんされています。
一番分かりやすいのは人事です。とにかく古来政治の要諦は人事にあるのです。これは諸葛孔明の出師の表にあります。
賢臣と親しみ、小人を遠ざくる、此れ先漢の興隆せし所以なり
小人と親しみ、賢臣を遠ざくる、此れ後漢の頽廃せし所以なり
先帝劉備がいまししとき、臣とこの事を論ずるごとに
後漢の桓帝、霊帝について 嘆息痛恨されざるはなし
●安倍総理の人事その1~日銀のトップ~
それで、本当に皆がよく知っているのは、まずは日銀の人事です。あれはもしトップを代えなかったら、日銀の理事は皆、金融緩和反対です。理事を、トップを代えたら、がらりと変わりました。どんな人でも上から信頼されて「思い切りやれ」と言われたら、やりますよね。
●安倍総理の人事その2~外務省と防衛省の次官、法制局長官~
夏までの間に外務事務次官と防衛事務次官も代えました。新しい次官は二人とも、ものすごくいいです。それからいよいよ法制局長官を代えました。法制局では第一部長が次長になって、次長が長官になるのです。これを何十年もずっと繰り返して、全部が同じ文化の中で、皆同じ考えで、再生産してきました。しかし、長官を代えました。すごいことです。これが集団的自衛権の行使を容認する最大のステップです。
●安倍総理の人事その3~制服出身の海上保安庁長官~
それから、いくらでもありますが、海上保安庁長官を代えました。海上保安庁長官というのは、今までは国交省の役人が普通に出世をして、なっていました。一番出世をした人は次官になりますが、次官競争に敗れた人は、その次に格好がいいのは長官だから、海上保安庁長官になるのです。しかし、どんな官庁でもどんな会社でも、一つのクラスに優秀な人は二人はおらず、多分4、5年に一人です。そうすると、そのクラスの二流の人物が必ずなるポストというのは、海上保安庁を軽視していますよね。それを制服出身にしたのです。これで海上保安庁の制服は、本当にもう今や士気が上がっています。
それらを誰が言い出したかというと、全部安倍さん個人です。 安倍さん個人が考えて、バリバリやったのです。本当です。
●安倍総理の人事その4~NHK会長~
それから、ついにNHKの人事にも手をつ...