政治とカネの問題
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
政治家の職業倫理は制度問題とも関係する
政治とカネの問題
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
最近、補助金を受けた企業からの献金が問題になっている。政治とカネの問題は大変難しく、非常に研究しにくい分野だと政治学者・曽根泰教氏は言う。この問題は一体どこから話すべきなのか。また、寄附や情報開示についてはどうすべきなのか。課題が山積みだが、さまざまな切り口から、政治とカネの問題について、曽根氏とともに考えていきたい。
時間:14分37秒
収録日:2015年3月10日
追加日:2015年7月20日
カテゴリー:
≪全文≫

●政治とカネの問題は研究しにくい分野


 「政治とカネ」のお話をします。

 最近、補助金を受けた企業から献金を受け取ったことが問題になっています。この問題は、大変難しいことがあり、後ほど詳しく申し上げますけれども、もう何年か前に相談を受けたことがあるのです。ある時、トヨタのどこかの地方の工場が、環境問題か何かで補助金を受けていました。まさかあのトヨタが補助金をもらっているとは思わなかったということで、トヨタから献金を受けているけれども返した方がいいのかという相談を受けたのです。

 私も、トヨタがまさか補助金をもらっていると思わなかったので、なかなか難しい相談でした。ただ、政治とお金の問題は、あまり話したくない分野なのです。なぜ話したくないのかといいますと、非常に研究がしにくいからです。情報公開がされているとは言っても、政治資金規正法で報告されているのは、昔だと、実態のお金の10分の1か20分の1ほどではないかといわれていたわけです。ですから、それを基に研究したとしても、現実的に実態はその10倍も20倍もあるとすると、研究にならないわけです。よって、こんな分野はできるだけ調べたくない、研究したくないと思っていたことが一つあります。


●企業・団体献金の禁止と公的助成は別の話


 それから、よく出てくるのは、政治を賄うお金は一体どういう方向でいくべきなのか、という話です。寄附なのか、公的助成なのか、方向はどちらなのか。例えば、日本は寄附がないとNPOが発達しない、という話をよく耳にします。では、寄附がないことを前提に、もしNPOを推進するとしたら、どうしたらいいか。政党なり政治家なり、つまり、政治機関はお金を稼ぐ機関ではなく、まさしく使う機関なのです。そうすると、それは、寄附に頼らざるを得ません。つまり、大学、研究機関、あるいは、文化的な財団、ボランティア組織などと同じように寄附に頼るということです。そして、それは、寄附をもっと増やせという活動の中に位置付けるのかどうかが問われるところです。

 実は、日本では個人の寄附も非常に少ないのです。それから、企業・団体献金は、禁止と言った方がマスコミ的なウケがいいものですから、禁止すべしといっています。ある時、企業・団体献金の全面禁止を声高に言う人がいたので、その本心は何なのか、裏を探ってみましたが、要するに、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司

人気の講義ランキングTOP10
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(2)秀吉の実像と「太閤神話」
秀吉・秀長の出自は本当は…実像は従来のイメージと大違い
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(6)EU批判とアメリカの現状
理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
川出良枝
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典