科学技術

自動運転
自動運転とは、人工知能による画像認識、深層学習を応用し、レーダーやGPS、カメラなどで運転に必要な状況認識をして、自律的に車を運転する技術のこと。自動運転技術のレベルは0~5の5段階で定義されており、レベル0はドライバー自身が全ての操作を行うため実質的な自動運転はレベル1以上に該当する。レベル1、2がステアリング操作、加減速をサポートする運転支援、レベル3~5が全ての操作の自動化を前提とする自動運転となる。世界各国で自動運転技術の開発にしのぎをけずっており、日本では複数のメーカーが2020年までの完全自動運転車発売を発表している。
自動運転技術によってこれからの車社会は所有から利用へと進む
「Mobility-as-a-Service(MaaS)」という言葉があります。これはサービスとしてモビリティーを利用していくというもので、これからの車社会は、自動車を所有するのではなく「利用する」という方向に進んでいくのではないかということで、その決定的な要因となるのは自動運転技術だろうといわれているのです。
加藤真平自動運転が社会を変える(1)自動運転の民主化(加藤真平)

政治・国際

貿易戦争
貿易戦争とは貿易不均衡を理由に国家間で深刻な経済的対立状態に陥ることを指し、貿易摩擦ともいわれる。第二次大戦後、日本は経済復興に邁進したが、1960年代より対米輸出額が徐々に増え、1980年代には自動車、電化製品などの輸出額が急増。対日貿易赤字に危機感を抱いたアメリカは、為替レート安定を名目に円高を強制したプラザ合意等を通して、一方的ともいえる通商政策を敢行した。しかし、アメリカの慢性的貿易赤字は解消せず、特にアメリカファーストを公言するトランプ大統領は、日本ならびに中国の貿易黒字を問題視。2018年はアメリカが対中追加関税措置を取ると中国も即座に高率関税で応酬するという米中貿易戦争を繰り広げている。
米中の貿易戦争は日本にとって非常に切実な問題
トランプ大統領はWTOの国際ルールを無視して、“America First”を掲げ、ほとんど無法な攻勢で世界に貿易戦争ともいえる事態を引き起こしています。この関税攻勢は貿易量を委縮させ、世界経済全体を収縮させる恐れがあります。中国は大国のメンツにかけて報復関税で応じていますが、一体このチキンレースはいつまで続くのでしょうか。そして世界経済にどんな影響があるのか。これは、われわれ日本にとって非常に切実な問題です。
島田晴雄トランプ発貿易戦争(1)米中の追加関税問題とその影響(島田晴雄)

金融・経済

キャッシュレス化
キャッシュレス化とは、現金を介さず種々の金銭的やり取りを行うこと。広義には小切手や口座振替といった形式も含まれるが、現状、クレジットカードや電子マネー等による電子決済を意味することが多い。また、近年では仮想通貨もキャッシュレス化の一潮流として注目されている。日本は、現金主義の人が多く、カード決済機能の普及も不十分なため、欧米や中国と比べてキャッシュレス化が遅れているが、社会的コスト削減、外国人観光客対応といった点からも、政府はキャッシュレス化社会推進を掲げている。
キャッシュレス化によって、大きなビジネスチャンスが生まれる
今キャッシュレス化が盛り上がっているのは、社会的な費用を大きく削減しようという動きがあるのと同時に、実はこのキャッシュレス化が、さまざまな企業や金融機関にとって大きなビジネスチャンスになるという背景があるからです。
柳川範之キャッシュレス化の動きと日本での可能性(柳川範之)

歴史・民族

元号
元号とは、特定の年代に付けられる称号であり、年号と同義。古くは、中国・漢の時代から一般的に使用されるようになり、為政者(皇帝)の交代や治世方針の変更時に改元された。日本では645年の大化1年が元号の始まりであり、明治維新を契機に天皇一代に一元号とする「一世一元の制」を採用。それ以降、先の天皇崩御及び新天皇の皇位継承によって改元されるのが通例であった。しかし、平成28年(2016年)、今上天皇が「高齢により象徴天皇としての務めを果たすことが困難」とお言葉を発表し、明治以降、初の生前退位が決定。2019年4月30日に今上天皇退位、5月1日に現皇太子徳仁親王即位の予定。新元号に関心が高まる中、皇位継承等さまざまな皇室関連のテーマが議論されている。
世界で元号を使っているのは日本だけ
今後元号がどうなるかですが、昭和54(1979)年10月、大平正芳内閣が定めた要領によると、留意点は6つありますが、そこには、できるだけいい意味を持つ易しい漢字を使って、国民に浸透・定着させる願いがあることが分かります。元号は、日本だけに残った制度です。そのような意味をよく考えながら、次の元号に期待したいと思います。
山本博文元号とはなにか(5)元号の本質と将来の展望(山本博文)

環境・資源

SDGs
SDGs(Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標)とは、人類と地球の繁栄を見据えた国連の開発目標であり、17のグローバル目標と169のターゲット(達成基準)で構成されている。2001年のMDGs(ミレニアム開発目標)に続くものとして2015年国連サミットで採択され、2016年から2030年までの国際目標とされている。17の目標は、あらゆる場所、あらゆる形態の貧困をなくすことから、グローバル・パートナーシップの活性化に至るまで、人と地球の健全な在り方の実現を目指す内容となっており、それぞれに具体的なターゲットが設定されている。各国はSDGs達成に向けて進捗状況を年1回報告することになっており、日本政府はSDGs推進本部を設置し、企業経営への導入も促進している。
さまざまな形のSTIがどうSDGsに寄与するか
産業界、官学などいろいろな分野でさまざまな形のSTI(Science, Technology and Innovation、科学・技術・イノベーション)がどうSDGsに寄与するかということが、大きく注目されており、実施に移ろうとしています。そのような状況で、情報革命、マテリアル革命と並行してSDGsが大きく動いているということです。
岸輝雄マテリアル革命(5)科学技術外交、SDGsと材料(岸輝雄)

社会・福祉

人口オーナス
「人口オーナス」は、人口構成の変化が経済にとってマイナスに作用する状態をいう。オーナス(onus)は、「負荷、負担」を表す語で、反対語は「支給品、賞与」などを表すボーナス(bonus)になる。人口オーナスと人口ボーナスを対比させる見方は、ハーバード大学デービッド・ブルーム教授が提唱したものとされている。先進国の高齢化が進む中、15~64歳の生産年齢人口が減少し、それ以外の従属人口(0~14歳の幼年人口と65歳以上の老年人口の合計)が増加する時期を「人口オーナス期」と呼び、新興国などの「人口ボーナス期」と対照して語られる。
高負担を国民に求めるなら全世代を包摂する社会保障システムの構築が必要
1990年代以降、日本の経済社会は、歴史的な構造変化を経験してきました。企業行動も、雇用構造も、家族構造も、社会構造も全面的な変化を被ってきたのです。高度成長時代に構築された社会保障制度は、現代社会の多様なニーズには対応できません。そこで、高齢者偏重ではなく、全世代を包摂する社会保障制度が求められるわけです。
森田朗人口減少と日本の未来(4)人口ボーナスと経済成長の関係(森田朗)

政治・国際

ブレグジット(BREXIT)
「ブレグジット(BREXIT)」は、イギリスを意味する「Britain」と、「離脱」を意味する「Exit」による造語で、イギリスが欧州連合(EU)から脱退することを指す。2016年6月23日にイギリスの欧州連合離脱是非を問う国民投票が実施され、離脱支持側が僅差で残留派を上回ったため、イギリスのEU離脱が決定した。イギリスの立場は、EUによる単一市場のメリットは認めるものの、シリア紛争の激化などによって急増した難民の受け入れを継続しがたい点で葛藤が続いている。
ブレグジットは日本企業にとっても非常に重要な問題
ブレグジットは、多くの日本企業のように、イギリスで活動してきた企業の問題でもあります。これは、日本が提起した問題の一つで、EU離脱問題が単にイギリス人の問題ではなく、イギリスに会社や工場を置いている海外の企業などにとって非常に重要な問題だということです。企業ではすでに個別対応がかなり進んでいますが、今後どうなるのかと離脱交渉の行方を見守っている企業もたくさんあります。
曽根泰教どうなるイギリスのEU離脱問題(曽根泰教)

科学技術

VR(バーチャルリアリティ)
「VR」は、Virtual Reality(バーチャルリアリティ)の略語。計算機によって作り上げられ、視覚・聴覚・運動感覚に訴える人工的な現実世界といった意味を持つ。人間が、その環境内で機械と対話できる環境シミュレータの側面も持つ。日本語では「仮想現実」「人工現実感」などと訳される。1968年にアメリカのユタ大学がヘッド・マウンテッド・ディスプレー(HMD)を開発し、エレクトロニクス化の道を切り開く。その後、コンピュータによる映像操作、CG、音声の合成・認識、ロボット、ウェアラブルコンピュータなどの技術が進み、1980年末よりバーチャルリアリティの言葉がこれらを統合した技術として用いられるようになる。
VRの面白さはコンピュータとは正反対の分野と関係しているところ
VRの技術を使って、どんな面白い世界がわれわれの中に入ってくるのかというところも興味深い。そのような意味でこの技術は、文化、芸術という、コンピュータのドライな分野とは全く正反対にある、非常にウエットな分野と関係しており、そのことがVRを面白くさせている一つの秘訣なのでしょう。
廣瀬通孝VRがつくりだす未来(1)VRとは何か?(廣瀬通孝)

医療・健康

オンライン診療
「オンライン診療」は、スマートフォンやパソコンなどのビデオ通話機能を使い、医師と患者がインターネットを介して診察を行うシステム。ICT(情報通信技術)を活用した新しい医療の形態として、高齢人口増に伴う医師不足の切り札と目されている。かつては「遠隔診療」と呼ばれてへき地や離島を対象としていたが、2015年8月に厚生労働省から用途を特に限定しない通達が出され、2018年4月には保険適用も開始された。
オンライン診療は対面診療の補完として有効である
福岡での実証事業で、オンライン診療は多くの医師にとって診断に役立つと評判でした。対面診療の際に、オンライン診療によって定期的に患者さんの情報を得ていることから、効率的に診療を行うことができるからです。患者側にとっても価値があるもので、「いい医療だった」「先生とうまく話せた」という声も上がっています。ということで、オンライン診療は医師が実際の現場では必ずしもできていないことの補完として有効といえるのです。
武藤真祐在宅医療とオンライン診療(3)オンライン診療の実証(武藤真祐)