●外交も材料開発に不可欠な要素
また少し違う話になりますが、「SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)」が材料には非常に関係があるので、ほんの数分だけ時間をいただきたいと思います。
紹介していただいたように、私は外務大臣の顧問も務めています。これは2年ほど前に新設されたポストで、科学技術外交推進会議をつくって外務大臣にいろいろ提言を出しています。G7などでもわれわれの提言を入れていただいていますし、アフリカのTICAD(アフリカ開発会議)などにも入れていただいています。それと同時に、海外とのネットワークをつくるため、たくさん人に会ってほしいと言われていますが、外交とはそういうもののようです。
●最重要課題は持続可能な開発・SDGs
今、一番大事なのはSDGsです。政府の全部の取りまとめを外務省がやることになっているのですが、それを科学技術という側面から応援するのがこちらに落ちてくる仕事になっています。
しかし、これには基本的に課題があります。課題解決型をどうするかという話で、本日は小宮山宏先生もいらっしゃるのですが、これは小宮山先生が進めている「プラチナ社会」と非常に似たところがあるというか、そちらの方がずっと先導していると思います。また、「MDGs」(Millennium Development Goals、ミレニアム開発目標)というものがあります。そちらは開発途上国向きだったのですが、そこに先進国まで含めたのがSDGsなのです。
スライドはその課題をきれいに分かりやすくまとめたものです。SDGsのためのSTI(Science, Technology and Innovation、科学技術イノベーション)ということで今、非常に盛り上がっています。科学技術もかなりの力を材料開発に割いてもいいのではないかということになっています。この会議はどこかで毎月1回やっています。もし世界中の会議に出ようと思うと、とても出ることはできないというのが現状です。
●各分野にみるSDGsと材料開発の関わり
では材料からどう考えればいいかということですが、例えば、貧困の撲滅なら衣食住でしょう。それから健康と福祉ならばバイオチップとか人工骨でしょう。教育なら何が大事で、水なら逆浸透膜が非常に重要でしょう。エネルギーだと今お話ししたような課題になります。
産業界、官学などいろいろな分野でさまざまな形のSTIがどうSDGsに寄与するかということが、大きく注目されており、実施に移ろうとしています。
そのような状況で、情報革命、マテリアル革命、それと並行してSDGsが一つ大きく動いているということです。それもまた、材料の革命を起こすバックグラウンドの環境エネルギーやリサイクルといったものと非常に関係してくるとご理解いただければと思います。
●個別のSDGsを知の構造化で一体化させる
最後になりますが、今後一番大事なのはゼロエミッション(リサイクルの徹底で廃棄物をゼロにする)関係、そしてリサイクル循環社会に関することです。そのための高機能で多機能な材料を作っていきたいと思っています。
それから研究手法としては、計算科学、情報工学を導入したマテリアルズインテグレーションを確立するというのが、今後マテリアル革命を加速的に起こすための要件になってくると思います。
難しいのは研究システムをどうするかです。欧米に加えて中国を含むアジア諸国をどこまでパートナーに入れるのか。どう見ても日本だけでやりきれるとは思えないところがあります。それから国際的な産学連携をどうするのか。また、そこでデータを共有したプラットフォームをどうするのか。全体の研究としては、老若男女、それから諸外国を入れて、どうやってメルティングポットとしてのプラットフォームをつくるかということが、材料の分野でこれから日本が世界の中心になるために必要であり、その大きな指針がSDGsなのです。
しかし、SDGsは今てんでバラバラなのです。ですから、知の構造化が非常に重要ではないかと思います。先週、日本で国際会議的なものがあったので、そのことは申し上げました。知の構造化は小宮山宏先生も仰っていることですが、議論の中心となってどう全体的に階層をつくってまとめていくかということが、STI for SDGsの最大の課題になってくるという言い方ができるかと思います。
非常に雑ぱくなお話だったのですが、ご清聴ありがとうございました。