●なぜ、本来は豊富な医療資源を使い切れていないのか
曽根 この(新型)コロナウイルスの1つの特長は、人工呼吸器でつなぐあいだに、ウイルスが陰性になるのを待つ。まだ、ワクチンも特効薬も十分に出ていないので、「酸素を絶やさない」という方法が、1つの治療なのです。ですから、自宅でも酸素が下がらないようにする。入院したら、人工呼吸器がある。大づかみにいえば、それさえできれば、つまり、容体があやしい人の命をいかに永らえるのかという手法は、かなり確立したと思います。2020年3月くらいからの経験知は積み重なっています。医療機関もどう対処すればいいかはわかったと思います。
しかしもともと、感染症のお医者さんや看護師さんの数は少ないのです。医療資源としては、「ベッドはあってもお医者さんはいない」というところで目詰まりが起きるわけですが、「世界的に見て(進んでいる)日本の医療体制を維持しながら、コロナ対策をどうするか」という手順が明確になれば、医師会からの反発もそんなに強くなくて済むのではないかと思います。
小宮山 いまの問題を明確にしておくと、国民の数あたりのベッド全体の数は、日本は世界のトップクラスに多い。それから感染者の数は、いま増えたといっても、まだ欧米の数十分の一です。少なくとも十分の一以下です。
いまベッドの数に換算していいましたけれども、医療の資源が他の国より豊かで、破綻するはずがないのです。十分の一、三十分の一の感染者の数で。これが破綻するのは、いまおっしゃったような状況によるわけです。
だから、もう当たり前に「無症状の人は、こうだ」ということを明確にする。ここが非常に重要。
そのときに、いろいろなことをいうのです。たとえば、「ICUが少ない」。これはそうです。ICUの数は少ない。しかし、では、「いまあるICUがきちんと使われているか」といえば、使われていないのです。これも東京医科歯科大学の田中学長の話を聞いたのですが、たしか、二十数床あるICUなのだけれども、ここが相部屋になっている。そこに1人コロナ患者を入れてしまうと、みんな他のことに使えなくなってしまう。そこで仕切りを入れて、こちらはコロナ用ということで十何床かを使っておられる。1500万円でできたそうです。だから、そういうことをどんどんやればいいのです。
それらのさまざまな目詰まりで、(...