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「重職」とは「とんでもないこと担当」のこと?!

重職心得箇条(3)覚悟と対応力

田口佳史
老荘思想研究者
情報・テキスト
老荘思想研究者・田口佳史氏とともに、佐藤一斎の『重職心得箇条』を読み進む。田口氏の解説を聞くと、その冒頭のわずか数行にこの教えの真髄が込められていることが分かる。一斎が重視した「重職」の第一の心得とは?(全15話中第3話)
時間:09:14
収録日:2015/12/22
追加日:2016/04/18
≪全文≫

●判明能力を求められる重大事の担当が重職


 ここから『重職心得箇条』を読みたいと思います。聖徳太子に憲法十七条というのがありますが、これも全く同じように17カ条からできていまして、私は、「しっかりした人物になるための17カ条」というように言っています。順次、ここに書いてあることを読んで、そして、その意味合いとして、このように理解したらどうなるのかということを申し上げて、先へ進んでいきたいと思っています。

 まず、第一条です。

 「重職と申すは、家国の大事を取り計らうべき職にして、此の重之字を取り失い軽々しきはあしく候。」

 今でも「重役」というような言い方がありますが、なぜ重い職という言い方があるのかというと、この世の中には大小、大きなこと、小さいこと、それから、軽重、軽い、重いというものがあって、それをまず区分できる能力が非常に重要だからです。このことは、あとで『重職心得箇条』の中に出てきます。そういう意味で、まずこの重大事を取り失わないでしっかりつぶしていくという係の人が、一人いないといけない。つまり、簡単に企業に移し替えて申し上げると、人事の問題は人事部長さん、それから営業のことは営業部長さんと担当が決まっているように、重大事を扱う担当がどの組織にもいなければいけない。それが実は重職だと思ってくれ、ということを言っているのです。この「重職」の役職は、今で言う取締役でしょう、でありながら、「重の字を取り失う」ということは、要するに、「重大事かどうかも分からない」、つまり「判明能力がない」ということですね。そうすると、後になって「しまった」というようなことが起こってしまうのです。


●覚悟を決めた人の有無で会社の命運が決まる


 さらに言えば、これは大変なことだと思っても、逃げてしまうことは、もう許されない。そのための役職として存在しているということを、まず思わなければいけない。したがって、まず取締役になったということは、これは逃れられなくなったということであり、家国の大事、会社の一大事を専門に担当するその職責が自分に与えられたと思って、覚悟を決めるものなのです。

 覚悟を決めた人が何人そろっているかで、その会社はもう決まってしまうと言ってもいいのです。私は、今まで2000社あまりの会社と携わってきましたが、こういう人が数人そろっている会社は、実に改革がスムーズです。皆、口ではすごいことを言うのだけれども、逃げてしまうとか、なるべく軽いことを選んでやっているような、そういう役員しかいないとなると、会社としてはとてもはかばかしくいかないのです。ですから、1行目のこの言葉は、非常に重要なのです。


●東洋リーダーシップは非常時の学


 その次です。

 「大事に油断ありては、其の職を得ずと申すべく候。」

 「大事に油断」とはどういうことかというと、要するに、佐藤一斎も『言志四録』の中で言っているように、リーダーシップとは、非常時に想定を当てて本来考えるべきなのです。つまり、東洋リーダーシップとは非常時の学なのです。

 ですから、平時は後で出てきますが、職責を皆がまっとうして、自分の職責を十二分に心得てこれを果たしてくれれば、組織は回るのです。ところが、非常時はそうはいかない。とんでもないことが起こるわけですね。要するに、役員とは「とんでもないことの担当」なんだよ、ということです。とんでもないことを好んで、「とんでもないことが起きました」という...
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