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「秒に生きて思考する人」こそがリーダーの定義だ!

重職心得箇条(8)リーダーの条件は「機」を読む想像力

田口佳史
老荘思想研究者
情報・テキスト
老荘思想研究者・田口佳史氏が、現代のわれわれにも理解しやすいように身近な例をひきながら、江戸期の『重職心得箇条』を読み解く。救急医、シェフ、マラソンランナーに共通するリーダーの条件とは?(全15話中第8話)
時間:10:35
収録日:2016/02/03
追加日:2016/05/23
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≪全文≫

●非常時前提がリーダーのあり方


 さあ、第5条です。

 「応機と云ふ事あり肝要也。物事何によらず後の機は前に見ゆるもの也。其の機の動き方を察して、是れに従ふべし。物に拘りたる時は、後に及んでとんと行き支へて難渋あるものなり。」

 この「物事」ですが、緊急を要することはたくさんあります。大体がこの佐藤一斎の『重職心得箇条』だけでなく、もっと言えば、江戸期のリーダーシップはどこを前提に立案されているかと言えば、これは、非常時です。平時は、それこそ決まり、企業では職責と言いますが、職責をしっかり自覚して、この職責を守って、全員がちゃんとやっていれば、つつがなくずっと組織や企業は動くものです。しかし、一旦緩急、とんでもない事態になるとか、そういうことはありがちでして、そのようなときにこそリーダーシップは重要なのです。非常時のためにリーダーというものがいるということ、つまり、非常時対応の人間なんだということです。

 したがって、非常時に対応できないようなリーダーというのは、なんでもないということになり、価値がないのです。ですから、佐藤一斎流に言えば、「常に平時は有事の、有事は平時の備えにあり」であり、いつも有事を前提に訓練を繰り返しているのがリーダーのあり方だということを説いているのです。


●応機が肝要-リーダーは秒で思考する


 したがって、非常時ですから、すぐに何かをやらなければいけないということがあったときはどうするのか? ということに対して、ここで答えてくれています。

 まず、「応機と云う事あり肝要だ」の「応機」とは何か。「機」とは今、弓に矢をつがえて、キリキリキリと引き絞り、ばっと離す。この「ばっ」というのが「機」です。マシーンを「機械」と名付けましたが、なぜこの「機」という字が入っているかいうと、機械というのは、ガチャガチャガチャガチャと、秒単位に動きます。ああいう動きが「機」なのです。もっと言えば、オポチュニティとかチャンスという機会、それも「機に会う」と書いてあります。なぜかというと、タイミングというものは、もう絶対に外しては駄目なのです。「はい、今このとき」というものがある。つまり、人間というのは、そもそもリーダーとしてはやはり、分で生きていてはしょうがない。秒で生きるぐらい、このカチカチカチカチッという秒単位で思考していき、物事を見るということが非常に重要だということなのです。それで、「応機と云う事あり肝要也」ということを言っているのです。


●リーダーに求められる柔らかいイマジネーション


 この後がいいんですね。この後が要点です。「物事何によらず後の機は前に見ゆるもの也」。つまり、物事というものは、どんどん進んでいくのです。「育つ」と言ってもいいです。悪くなるものも育ちますから、どんどんどんどん悪くなっていくということですね。したがって、この5分後、10分後、それから、30分後と言って何もしないでおくと、これはどのように悪くなるか、どのように良くなるか、そういうことが見えないとリーダーとは言えないよ、ということです。

 しからば、それにはどういう頭脳が必要かといえば、これこそが柔らかいイマジネーションです。柔軟な想像力がないと、これからは駄目なのです。要するに、危機に際して手を打つなどというのは、やはり柔らかい頭脳のイマジネーションで、「これはこうやっておく、これはこう」と想像する、ということがなければ駄目だということです。


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