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「災害」は、リーダーの不徳と社会の乱れから生じる

『貞観政要』を読む(10)手本を示すのが上司の務め

田口佳史
老荘思想研究者
情報・テキスト
老荘思想研究者・田口佳史氏による『貞観政要』の読解講座第10弾。リーダーが為すべきは、皆の手本になることだ。手本なき政治は恨みを生み、やがて国に災害を引き起こす。災害は、リーダーの不徳の現れであり、社会が乱れている証拠だ。その時に「革命」は起きる。平和な時こそ、本質を忘れるな。『貞観政要』の大きなメッセージだ。(全15話中第10話)
時間:08:51
収録日:2016/08/01
追加日:2017/02/13
タグ:
≪全文≫

●乱世を治めようとして「火に油を注ぐ」ようなことをしていないか


 前回からの部分が続いていますので、そこまで読んでみましょう。「譬へば薪(たきぎ)を負ひて火を救ひ」。これはどういうことかというと、注意です。火が出たとなって消さなければいけないというときに、背中に薪を背負って防火に努めているようなことになっていないか。一見、防火に努めているようだけれど、反対に火の勢いをどんどん増してしまうような行為をしていないかという注意を示しています。

 さらに「湯を揚げて沸を止める」。沸騰しているところに水を加えるのではなく、さらにお湯を加えてしまうようなことをやってはいないか。事態をさらに煽ってしまうようなことをしていないかどうかということです。

 「暴を以て亂に易(か)へ、亂と道を同じくす」。「暴を以て亂に」、乱暴な行為でもって、そうあるべきものだと考えてしまう。「私は正しい」という根拠は、実は皆こういう行為を基にしてしまっている。客観的に見れば見るほど、あたかも薪を負いて火を救い、湯を揚げて沸をとどめるような、そういう行為になってしまっている。それが「亂と道を同じくす」、自分の行いは皆、暴にして乱である。自分の行いは、暴虐にして乱暴な、乱れる原因をつくっているのだということです。


●リーダーとは、手本であるべき存在だ


 「其れ則(のっと)る可けんや」。すごいですね。これは何を言っているか。今まで言ったようなことは「手本にできない」と言っています。人間というものは、正しい行為をしようと思ったら、必ず手本が必要です。何歳になっても、手本が重要なのですが、本来トップは手本となる存在である。

 私がいつも上司心得として、上司のあるべき姿を話すときに言っているのは、「上司は手本なり」です。上司は、ただいるのではありません。「こうやって会社生活を送ってください」とか、「こうやって業務を進めてください」という手本として存在しているのが、上司です。だから、上に立つ者は全て手本である。「手本として、こんなことをしていいのかな」というように思ってくれと、ここでは言っています。

 そうでないと「後嗣」、跡継ぎは「何をか觀ん」。何を手本としたらいいのかということになります。「夫れ事」、手本として「觀る可き無ければ」。そういう人が、手本として見るものがないとどうなるのか。だんだんやけになってきます。手本がないのですから、どうやっていいのか分からないし、誰も教えてくれない。こういうことになると、今度はだんだん人を恨むようになります。人を恨むということは、「神(しん)怒る」。神も怒る。「人怨み神怒る」。「神怒る」とは、そういう意味です。


●恨みが募れば、国に災いがもたらされる


 人怨み神怒ればどうなるのか。「則ち災害必ず生ず」。ここでいう神とは、いわゆるキリスト教のゴッドではなく、「見えないもの」、見えない力そのものです。そういうものを表しています。

 人間社会には、見える部分と見えない部分があります。見えない部分の方が大きく、また広いわけであり、そういうところが動き出すとどうなるのか。見えないところの力によって、天地の間が揺らぎます。これを災害と言っています。そういう意味では、「災害もまた天命なり」で、天というものの何らかの意思を表示しているというように受け取らなければいけない。

 徳という言葉は、奈良時代までは、日本では「勢い」と読みました。ですから「朕の不徳の致すところによって」という言葉は「私に勢いがなかったので、最悪、疫病が流行った」という意味になります。天下がきちんと治まっていないのは、自分の不徳の致すところだ。これが、トップリーダーが感じなければいけないところです。この場合、災害が出てくるということは、自分の徳が不徳だということなのです。

 「災害既に生ずれば、則ち禍亂(からん)必ず作(おこ)る」。見えないものの意思表示である災害が起こっているということは、災い、乱れが必ず起きているのだ。「禍亂既に作りて、而も能く以て身名全き者は鮮し」。身名とは身体・名誉です。これがずっと「全き」、完全に終わるという者はいません。「天に順ひ命を革(あらた)むるの后」。良い言葉ですね。これは易経の革の卦です。ここから「革命」という言葉が出てきたのであり、その最たるものが「天に順ひ命を革むる」。すなわち、天命を革める。革、革めることを革命といいます。

 天は、Aさんに「天下国家を頼む」と言うのですが、どうもやっていることがおかしいというならば、今度は違った人に「あなた一つ代わってやってくれ」となって、天命が変わります。これを「天に順ひ命を革むるの后...
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