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ナノマシン医療でナイチンゲールの予言を実現化する!

ナノテクノロジーで創る体内病院(5) 病院の要らない社会

片岡一則
ナノ医療イノベーションセンター センター長/東京大学名誉教授
情報・テキスト
ナイチンゲール
3,000年前に松葉杖を発明した人類は、今世紀、ナノマシンによって体内に病院を創ろうとしている。東京大学政策ビジョン研究センター特任教授でナノ医療イノベーションセンター長の片岡一則氏が強調するのは、研究とビジネスの融合だ。同氏は、ベンチャー企業から医療を日本の基幹産業にしていくという。ナイチンゲールが予測した「病院の要らない社会」は、目の前に現れようとしている。(全5話中第5話)
時間:08:04
収録日:2016/10/24
追加日:2017/03/22
≪全文≫
●ナノマシンで「ミクロの決死圏」を現実化する

 ここまでご紹介した研究結果を踏まえて、将来はこういうことができるといいなと考えています。小惑星探査機の「はやぶさ」をご存じだと思いますが、これのすごいところは、小惑星まで行って着陸するだけではなく、そこから情報を採取して戻ってきたことです。同じようなことが体の中でできたらいいなと思っています。

 体内を自律巡回するナノマシンが病気の場所に行き、診断・治療をし、疾患情報を採取して、体の中に埋め込んだチップで情報を検出して外部に発信する。これができると、本当の意味の究極の先制医療ができるので、全ての医療機能が人体内に集約化されます。体内病院が出来上がります。SFの世界だった「ミクロの決死圏」が、現実になるわけです。

 ついでにいうと、「ミクロの決死圏」には元ネタがあります。それは「38度線上の怪物」という手塚治虫が作つくった漫画です。ほとんど知られていませんが、手塚治虫が1954年頃に描いた漫画で、人間を小さくして体の中に送り込んで結核菌と闘うという漫画です。一応通説ではそうなっています。それはともかくとして、こういうものができてくるでしょう。


●飛躍的な進化を続ける医療機器

 医療機器の進化を見ると、松葉杖が今から3,000年前に発明されました。それをまだ使っています。つまり人間は松葉杖を3,000年間使っていることになります。その後、大きな進歩はありませんでしたが、20世紀に入ると体外型の人工臓器ができ、20世紀の後半になって体内型の人工臓器ができました。そして21世紀に、カプセル内視鏡ができました。このように、医療機器はどんどん小さくなっています。機能はどんどん向上し、どんどん低侵襲化しています。だから将来的には、ウィルスサイズのスマート・ナノマシンになるだろうと思っています。

 自動車に例えると、最初の車は「走る」というところからスタートし、そのうち多目的自動車のようにいろいろなバリアーを越えたいと思うようになりました。さらにレーダーの信号を検知して操る状態になり、最後は自動運転になろうとしています。われわれのこのナノマシンも、走ることからスタートし、血液脳関門を突破して、さまざまな信号でコントロールされ、最後は体内を自律巡回して、体内病院ができるだろうということです。


●川崎から医療イノベーションを起こす

 それをやるために、最後はやはりビジネスにしなくてはいけません。これを行おうとしているのが、ここ川崎にあるKing SkyFrontです。羽田空港の対岸にあります。

 ここはかなり重要な場所です。まず2020年の東京オリンピック開催までに、ここと羽田空港との間に橋が架かることになっています。そのため現在、いろいろな施設がここに集まってきています。中核施設は少し小さいですが、国立医薬品食品衛生研究所が、道路を挟んだ向かい側に建てられています。それ以外にも、さまざまな施設がここに集まってきています。

 その中にできているのが、ナノ医療イノベーションセンターです。「iCONM(ナノ医療イノベーションセンター)は京浜健康コンビナートの中核として」とあるように、もともとここは京浜工業コンビナートだったので、「工業」を「健康」に変換しようということです。それから、「市民の誇り」というのは、川崎市長の言葉です。「シビック・プライド、市民の誇りになってほしい」と言われました。さらに、「夢を叶える医療技術を次々と発信する」。川崎はドラえもんの街ということで、ドラえもんの秘密のポケットのように、何でも出てくるというイメージです。そうやって、「世界で最もイノベーティブな拠点を目指す」と言います。

 現在iCONMで行っている中心プロジェクトが、COINSです。これは川崎市産業振興財団が請けている事業で、さまざまな企業、そして研究機関・大学が集まって、オープンイノベーションをやろうということで、研究開発を行っています。

 このプロジェクトの良いところは、一つの大学や一つの企業にこだわらず、いろいろなところから研究者が来ることです。本当の意味で、組織を超えたオープンイノベーションができるだろうということです。さらに、新しい技術を世の中に出していくためには、ベンチャー企業をつくってスピードを高めて社会実装していくことが必要です。これも、このプロジェクトの非常に大きな役割になっています。

 実際、既に「ブレイゾン・セラピューティクス」という会社と「アキュルナ」という会社が2015年にできました。ブレイゾン・セラピューティクスは、脳血液関門を突破する技術を実用化していこうというベンチャー企業です。アキュルナは、主にRNA医薬、mRNAとかsiRNAを使った治療を実用化していこうという企業です。


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