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「コンシャス・キャピタリズム」という欧米の潮流

これからの社会と働くということ(4)“働くこと”<下>

古賀伸明
日本労働組合総連合会(連合)第6代会長
情報・テキスト
日本労働組合総連合会(連合)第6代会長の古賀伸明氏が「これからの社会と働くということ」について論じるレクチャーシリーズ。今回は“働くこと”後編をお届けする。技術革新への対応、経済性・競争・効率と社会性・協働・共生、企業(労使)の社会的責任、コミュニティの再生と身近な民主主義の再構築について、古賀氏はどうとらえているのだろう。(全6話中第4話)
時間:14:41
収録日:2017/12/27
追加日:2018/02/28
タグ:
≪全文≫

●技術革新の中で「心を込める」働き方を守るには


 “働くこと”を考える上では、「技術革新への対応」も非常に重要です。昨今はIoTやAIなど、非常に速いスピードで技術革新が起こっています。重要なのは、技術革新によって人が振り回されるのではなく、人間がその技術をどう使うか。つまり人が主体の技術であることを、もう一度みんなが確認し合うことだと私は思います。

 それには、何といっても人が活きる仕組みが重要です。能力開発や人材育成において、AI、IoTにどう対応できる人をつくっていくかが、非常に大きな問題です。

 日本人は、働くことに心を込めています。それが、日本の働くことに対する誇りだと、私は思っています。アウトプットは同じ製品やサービスかもしれませんが、日本の場合、それに携わった人びとの心が込もっているのです。どんなに技術が発達しても、働くことに心を込める精神は、日本の変わることのない大きな特徴として持ち続けていきたい。私はそんな思いでいます。


●コンシャス・キャピタリズムの潮流


 私は、経済性・効率・競争などを決して否定しません。それらがなければ、社会は発展しないと思います。しかし、それらの概念だけで突き進む社会は、やはりおかしい。社会性が必要です。共につくっていく協働、共に生きていく共生などがバランスよく配置された社会や組織でなければならないと思います。

 2008年のアメリカの金融危機に端を発した世界同時不況以降、欧米の人たちと話をしたり、あるいは訪問した時に、「コンシャス・キャピタリズム(Conscious Capitalism)」という言葉をよく聞くようになりました。「コンシャス」の意味合いは難しいのですが、「思慮深い資本主義」とでも訳すのでしょうか。短期利益を追求するだけではなく、社会全体のステークホルダーの価値を上げていくような資本主義や市場経済が求められているのではないかという議論です。

 私もよく経営者の皆さんと話をしますが、その時、「四半期決算経営なんてやめた方がいい。ああいうものがあるから、数カ月間の利益が上がったり下がったりしたことで、エコノミストやマスコミに評価される。それを気にするから、数カ月以内で利益を上げなければならない。そのような短期で物事を見るのではなく、もっと中期的に見るべきだ」ということを、よく経営者の皆さんには言っています。現に欧米の企業では、経営はもっと中期的に見ていかなければならないということで、四半期損益の発表をやめた企業もあります。


●企業の価値を決める二つの軸


 仮に四半期決算を経営の一つの軸として続けた場合、私は他にも二つの軸が必要だと思っています。

 一つの軸はイノベーションです。人、物、金をどうイノベーションのために重点的に投資しているか。企業というもの、働くということの意味は、社会の課題を解決すること、新しい価値を創造することにあります。そのためのイノベーションを起こすために、どんな活動をしているかは重要な指標です。

 もう一つの軸は、社会的課題を現実的にどう解決しているかということです。難しいことだと思いますが、例えば20年前、環境問題や女性の活躍を経営方針に入れている企業がどこにあったでしょうか。今では、多くの企業が、環境問題に対する姿勢を唱えていますし、女性の管理職比率についての展望を述べています。私は、そのうちには「貧困」の問題を解決するという企業が出てきてもいいし、所得格差の解決に取り組む企業が出てくると思います。この三つほどの軸で、企業の価値は判断されていくのではないかと私は思います。


●企業の社会的責任は、地域から世界まで


 そういう意味では、企業の社会的責任を、企業はもっと大きく出すべきだと思います。

 労働組合などの労働者代表と使用者側の代表を指して「労使関係」という言葉があります。狭義には、働く者と経営者の関係ということになるでしょう。また、アメリカの労働経済学者の中には、労使関係を雇用・労働に関する「ルールの網の目」という言葉で表現する人もいます。

 これはこれで分かるのですが、私は彼らが考えていないもので必ずや必要なものがもう一つあると思います。それは地域・社会です。企業は、単独で企業活動をしているわけではありません。地域・社会で活動しているのです。働く人も、日々生活を営んでいるのは地域・社会です。だから私は、労使関係には「労」「使」にプラスして、「地域・社会」というもう一つのアクターが存在するのではないかと思うのです。

 ですから、たとえ労働組合のない企業であっても、企業の活動や行動が社会にどう影響を与えるか、さらに社会を良くするためにはどんな企業活動をすべきかを考えるべきだと思います。

 企業の社会的責任は、国際的にも視野を広げなければ...
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