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2020年以降の日本経済を動かす要因とは何か?

2020年以降の日本経済を動かす3つの要因

伊藤元重
東京大学名誉教授
情報・テキスト
安倍内閣6年目にして概ね回復傾向を見せる日本経済だが、依然として景気悲観論は根強く、2020年の東京オリンピック・パラリンピックが終わればまた厳しくなるという声すらあるほどだ。そこで東京大学名誉教授で学習院大学国際社会科学部教授の伊藤元重氏が、2020年以降の経済動向を見極めるために必要な3つの要因を挙げて解説する。
時間:09:25
収録日:2018/02/21
追加日:2018/03/23
≪全文≫

●本当に経済の回復は2020年までなのか


 安倍内閣が6年目に入って、経済はずいぶんと変わってきました。物価はあまり上がらないのですが、GDP は確実に毎年上がってきていて、20年ぶりに過去最高を経験しましたし、あるいは有効求人倍率という雇用の需給のタイトな状況も、統計を取って以来の最高の高さにまで、今なろうとしています。企業も過去最高の収益を挙げているし、株価ももちろん変動はしていますが安倍内閣が出てくる前は日経平均9000円を切っていたことを考えると21000円、あるいは22000円という株価は大変いいと思います。

 ところが、なんとなく経済全体の中には景気に対する悲観論が非常に多い。ですから、企業は非常に利益が上がっているにもかかわらず、それを賃上げに回すということをあまりしないし、また、投資にもなかなかお金が回っていかないということになっています。

 それはなぜでしょう。非常に面白いと思うのですが、これを企業の方にぶつけてみると、「今は少し景気がいいかもしれないけれども、これがいつまで続くかな」と返ってきます。もっとストレートにモノを言う人は、「今、不動産価格は上がっているし株も上がっているけれども、2020年のオリンピック、パラリンピックが終わったら大変だよ」というわけです。なんとなく日本人の心の中には、今一時的に経済が良くなっているように見えるけれども、オリンピックぐらいまでが山で、その先は分からないな、という見方が多いようです。考えたらひどい話で、オリンピックがそんなに日本の経済の波に大きな影響を及ぼす存在であるはずがありません。


●経済を動かす要因-少子高齢化と技術革新


 ただ、分からないでもないのは、2020年を過ぎたあたりから日本の高齢化は今以上に厳しくなってきて、本当の意味での高齢化の影響を受けるということもあるものですから、そういう意味で悲観的な見方をする人はいるかもしれません。

 よく考えておかなければいけないのは、日本だけではなく世界経済もそうかもしれませんが、ともかく2020年以降の日本経済を動かしていくプラス要因あるいはマイナス要因は何だろうかということです。つまりトレンドの源流となるのは何なのだろうということを真剣に考える必要があるのです。

 もちろん一つ目は今申し上げた少子高齢化で、これはなかなか厳しいマイナス要因です。他のことは何も変わらず少子高齢化だけが進むとなると、日本経済は大変だという話になるわけです。でも周りを見回すと、これ以外に非常に大きな変化がいくつかあります。最大の変化は技術革新です。AIやIoTビッグデータやクラウドコンピューティング、あるいはゲノム解析など、デジタル革命といわれているものが世の中を非常に大きく変えていくことは間違いないと思われます。では、このトレンドは日本経済にとってどうだろう、と考える必要があるのです。


●グローバル化及びアジアマーケットの変化という要因


 二つ目はグローバル化で、これが結構重要だと思います。もう少し正確にいうと、アジアのマーケットをどう見るかということです。これは有名な話なのですが、簡単に説明します。インドを含めた広いアジアの中で、年収が5000ドル以下(日本円で約50万円以下)の人のことを「貧困層」、5000ドルから35000ドルの間(日本円で約50万円から350万円)の人たちのことを「中間所得層」、35000ドル以上(日本円で約350万円以上)の人のことを「富裕層」と、特に途上国ではいいます。このうち、中間所得層と富裕層、つまり貧困層ではない状態の人が、過去10年で約10億人増えているのです。これから15年の間にさらに15億人ほど増えるという予想もあります。すなわち、アジアのマーケットで何が起こっているかというと、規模のレベルが大きく上がっているというよりも、その中で中間所得層、富裕層が増えているということです。

 だから、われわれもよく感じることができると思いますが、例えば中国などから外国人観光客が大量に日本に来る最大の理由は、彼らがそういうことが可能になったからなのです。もちろん他にもいろいろな理由があると思いますが、こうしたことがタイもインドネシアもベトナムも、将来的にはインドもあるかもしれません。そうすると、これは日本にとって非常に大きなチャンスになるのです。日本には、そうした中間所得層以上の人が望むような安心な食料や品質の良い消費財、あるいは経済がさらに発展すれば必要になってくる高度な技術を織り込んだ、例えばデバイスや素材など、日本でしか作れないものがたくさんあるからです。ということで、こうしたことはトレンドの源流としてどうなのだろうと考えてみる必要があるのです。


●三つ目の要因は環境問題


 三つ目は環境問題で、これはチャンスかピンチか分かりませんが、これがこ...
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