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トランプ大統領と国際社会の問題

2018年激動の世界と日本(3)トランプの外交

島田晴雄
公立大学法人首都大学東京 理事長
情報・テキスト
大統領に就任するや、即座にTPPから離脱したトランプ大統領。オバマ時代の国際協調路線から大きくかじを切りつつあるアメリカを前に、国際社会はどのように変化していくのか。公立大学法人首都大学東京理事長・島田晴雄氏が、トランプ政権と各国の関係を解説する。(2018年1月16日開催島田塾会長講演「激動の世界と日本」より、全14話中第3話)
時間:09:26
収録日:2018/01/16
追加日:2018/04/21
ジャンル:
≪全文≫

●日本は米軍基地の駐留経費を世界で一番負担している


 次にドナルド・トランプ大統領と国際社会の問題を見ていきましょう。まず、大統領に就任したその日にTPPを離脱しました。TPPは、世界の自由貿易協定の中でも、最も高度で最も先進的なものです。しかし、アメリカが離脱すれば6割程度のGDPが消えてしまいますから、残りの11カ国は必死です。日本が一生懸命頑張って、何とか2018年3月には署名に持ち込み、協定が発行されるでしょう。

 トランプ大統領がそうした態度を取った一方、感心な閣僚も中にはいました。ジェームズ・マティス国防長官です。彼はかつてテロリストを殺すことも厭わないと発言したことから、マッドドッグなどと言われていますが、実は8,000冊もの書物を読んでいる教養人です。

 2017年2月には、マティス国防長官が日本と韓国を訪問しています。当時の稲田朋美防衛大臣と安倍晋三首相と面会し、アメリカとの安全保障関係において日本は世界のモデルだと賞賛しました。米軍基地の駐留経費を日本が相当負担しているからです。

 しばしば島田塾の人たちは、沖縄の嘉手納基地を見学しにいきます。嘉手納基地は非常に広大な基地です。F-15がずらっと並んでいます。兵隊の給料と戦闘機の費用以外は、日本が全て負担しています。その割合は75パーセントにも及びます。韓国が40パーセントの負担、ドイツが30パーセントの負担です。

 したがって、日本が世界のモデルであるとマティス氏は賞賛したわけです。もちろんこれが新聞等で報じられれば、トランプ大統領の日本への発言をけん制できると考えたからでしょう。


●地球温暖化対策に関するパリ協定からも離脱した


 また、トランプ大統領はイスラム教徒に対する入国制限を大統領令で出しました。入れ知恵をしていたのはスティーブ・バノン氏のようです。ところが、すぐさまワシントン州やサンフランシスコ州の連邦地裁が、入国制限に対して差し止め命令を出しました。

 そこでトランプ大統領は少し変更せざるを得なくなりました。しかし、次はホノルル地裁が差し止め命令を出し、結局うまくいきません。最終的には、6月26日に連邦最高裁が大統領の入国禁止令を条件付きで容認する決定を下します。これを見たトランプ大統領は勝利を喜んでいるようですが、当初から比べればかなりスケールダウンした入国制限になりました。

 次に、地球温暖化対策に関するパリ協定からも離脱しました。トランプ大統領は、この協定はアメリカにとって非常に不利益なものだと主張しています。パリ協定には196カ国が署名したのですが、アメリカが抜けると大打撃を受けます。

 しかし、トランプ大統領に対しては国際社会だけではなく、アメリカのハイテク企業も強い批判を向けました。アメリカのハイテク企業にとっては、パリ協定に参加していればルールメイキングに加われるため、そこからの離脱は大損です。実際、アメリカは地球環境関連の技術開発で世界一です。したがってトランプ大統領の決断は、国際社会でも国内でも受け入れられているとは言えません。


●他の国に依存していけると思う時代はもう終わった


 5月にトランプ大統領はNATO(北大西洋条約機構)の首脳会議に出席しています。NATOはそもそも、ロシアの脅威に対して、ヨーロッパとアメリカが協力して共同安全保障を行うという趣旨で発足しました。そのため、毎回本部での会議の際には、この趣旨を再確認する誓いを表明することが習わしになっています。

 ところがトランプ大統領はこの誓いを省略してしまったのです。ヨーロッパの人たちは愕然として、NATOの精神を無視するのかと憤り、あきれていました。

 ドイツのアンゲラ・メルケル首相は会議後、ミュンヘンでCDU(キリスト教民主同盟)のパートナーであるCSU(キリスト教社会同盟)の大会に出席し、「The times in which we can fully count on others are somewhat over」と述べました。つまり、他の国に依存していけると思う時代はもう終わった、トランプ大統領のアメリカはもはや信用できないというわけです。

 この発言は世界中を駆け巡りました。メルケル首相はトランプ大統領を見限った一方、安倍首相はトランプ大統領に抱き着いたとも言われています。とはいえ、それぞれの国益がありますから。

 さらに、イラン核協定をもトランプ大統領は破棄するつもりでした。イランは過去30年間、経済制裁を受けていました。バラク・オバマ前大統領の時に、今後10年間、核開発をしないことを前提に、経済制裁の撤廃を認めたわけです。イランはもちろん大喜びで、日本も大きく投資をしました。

 ところがトランプ大統領は気に入りません。イラン核協定は6カ国の国々が正式に検討した結果のものですから、簡単に廃棄できるようなものではないはずです。もちろん...
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