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「反省」はあるが「侵略」も「植民地支配」もない

どうなる?戦後70年「安倍談話」(3)豪州演説にみる方向性

若宮啓文
元朝日新聞主筆
情報・テキスト
オーストラリア連邦議会で演説する安倍総理(平成26年7月8日)
出典:首相官邸ホームページ(http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/actions/201407/08_australia.html)より
戦後70年安倍談話に当たっては、村山談話を「全体として継承」するも、「侵略」や「植民地支配」という言葉を同様に用いるわけではないと明言した安倍晋三首相。果たしてどのような内容になるのか。その参考となるのが、2014年7月のオーストラリアでの演説である。若宮啓文氏が検証する。(全5話中第3話目)
時間:11:12
収録日:2015/01/29
追加日:2015/03/12
ジャンル:
≪全文≫

●豪州演説に垣間見る安倍談話の方向性


若宮 では、安倍談話がどのような内容になるのか、一つの参考として、安倍晋三さんが考えているのは、こういうものではなかろうかということをうかがわせるものがあるのです。

 安倍さんは、去年(2014年)の7月にオーストラリアに行き、キャンベラの国会議事堂で演説をしたのですが、その冒頭、このように言っているのです。

 「皆様、戦後を、それ以前の時代に対する痛切な反省とともに始めた日本人は、平和をひたぶるに、ただひたぶるに願って、今日まで歩んできました。20世紀の惨禍を、二度と繰り返させまい。日本が立てた戦後の誓いはいまに生き、今後も変わるところがなく、かつその点に、一切疑問の余地はありません」

 こう始めるのです。そして、その後です。これはもちろん、オーストラリアのことも念頭に言っているのですが、戦後、欧米を中心とした戦勝国が差し伸べてくれた寛容の精神によって、日本が再生できたことに対してお礼を述べているのです。

 そして、その後、日豪の関係にも触れ、「同盟国として、アメリカと力を合わせて、同じ価値観で、パートナーとして、これからも密接に連携していきたい」というような演説しています。

 後段は、明らかに中国を意識したものだということは分かると思いますが、問題は前段です。多分、彼にとっては、談話においてこのような表現にするならばよいのです。もう1回言うと、「戦後を、それ以前の時代に対する痛切な反省とともに始めた」というところですが、つまり「反省」は入っています。そして、平和を願ってきたと続きます。ただ、「それ以前の時代に対する痛切な反省」とは具体的に何なのか、と聞かれると、この文言では非常にあいまいです。

―― 「侵略」も「植民地支配」も入っていません。

若宮 あるいは、侵略も植民地支配も入っているとも取れますが、そうは言わないわけです。ということで、この種の表現にして、前向きなものにしていきたい、ということなのだろうと思うのです。


●お詫びは不要も、歴代談話の「再確認」や「踏まえて」は必要


若宮 私は、もう一度、村山談話のような言葉を繰り返してお詫びする必要はないと思うのです。それは、戦後50年にやり、60年にやっているわけですからね。明確なものは1回やればいいので、10年ごとにお詫びの談話を出す必要はないと思うのです。ですから、前向きな談話であればいいと思います。ただ、戦後50年、60年も含めてですが、そのときに、心から詫びたということを決して忘れてはいないし、その上で新しい談話をつくるということが、明確に分かるものでないと、非常に誤解を与えるのです。

 特に、安倍さんの場合には、前回申し上げたように、村山談話に反対するグループに入って、しかも、総理総裁になる前に、「できることなら村山談話を見直したい」と言っている事実があるのです。ですから皆、安倍さんの真意は何か、と疑うのです。

 このままするっといくと、結局は、村山談話を塗り替えたとか、事実上棚上げにしたとか、やはり少しネガティブな批評を書かれると思います。日本のメディアの中にもそう書くところはあるし、当然、周辺国はそのように書きますから、せっかく出しても、前向きのメッセージが素直に伝わらない恐れがあると思うのです。

 ですから、私は、伊勢で言ったようなあの表現を工夫すればいいと思います。「これまでの歴代内閣が出してきた談話を再確認する」とか...
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