●不意打ちを食らわせようとした自民党が不意打ちを食らった
衆議院が解散総選挙になりました。これをどのように理解すべきか、お話します。
2017年8月、第3次安倍第3次改造内閣が発足しましたが、これは7月に行われた東京都議会議員選挙での自民党の惨敗を受けてのものでした。その後、総選挙を模索する動きと非常に関連することとして、支持率がそのまま低下し続けるだろうという見方と、都議選の時が底で徐々に回復していくだろうという見方がありました。
いくつかの世論調査によれば、自民党・安倍内閣への支持率は回復しています。ただし、人柄が信頼できないというアンケートの数字は、まだ本当の意味では回復していません。こうした背景の中で、総選挙が模索されていたわけですが、そこにはさらに2つの要因があります。第1に、小池百合子氏が新党を結成するのにはまだ時間がかかるだろうという予測です。第2に、民進党のつまずきです。山尾志桜里氏を幹事長にしようとしたところ、彼女が不倫騒動で離党せざるを得なくなりました。前原誠司代表のもとでの民進党が、もたつきを見せたのです。
自民党としては、ここで選挙をすれば勝てるだろうという読みだったと思います。不意打ちを食らわせようとしたわけですが、しかしながら、反対に小池新党によって不意打ちを食らってしまったというのが、今の状態です。
●選挙で勝てるときを見計らって、解散時期を模索していた
安倍晋三首相が実際に何を考えているのかは分かりませんが、心象風景を説明することはできます。安倍首相がしたいことは、2つです。第1に、2018年に行われる自民党総裁選での3選です。そこで勝った上で、オリンピックを迎えたいと思っているでしょう。第2に、憲法改正です。任期中に憲法改正をするということが、希望としてあるでしょう。ただし、選挙の時期を探ることはなかなか困難でした。それが今年(2017年)であろうが来年(2018年)であろうが同じことです。
選挙の時期を探る際、いくつか考えなければならない要素があります。一つは、総裁選の前か後なのかということです。憲法改正をする場合、国民投票の時期もあります。さらに、天皇陛下の退位問題があります。退位なさるのが2018年12月なのか2019年3月なのかは分かりませんが、その時期に解散総選挙を行うのは難しいでしょう。あるいは、2019年10月には消費税を10パーセントに引き上げることが決まっています。今回は弾力条項もありません。だとすれば、増税前に手を打つべきことは何なのか。こうしたことを考えながら解散時期が模索されていたのですが、要するに、勝てるときはいつなのかということが問題です。
選挙の大義は何なのか、何のために選挙をするのか、何を国民に訴えるのか分からないとよく言われます。しかし、とにかく選挙で勝てるときを見計らって、解散時期を模索していたのでしょう。
●甘い言葉を持ち出して国民に信を問うことがあっていいのか
安倍首相は解散を表明する際に、色々な理屈を付けて説明しています。前回の解散総選挙の時には、消費税の増税を延期するという説明でした。確かに不利益変更であれば重大な決断ですから、国民に信を問うべきでしょう。しかし、今回は、財政再建を事実上先延ばしです。そして、甘い言葉を持ち出して国民に信を問うということですが、これはある意味バラマキではないでしょうか。前回も同じ理由で私は批判しました。
また、北朝鮮の脅威も解散の理由として挙げられています。しかし、本当の脅威であれば選挙どころではないでしょう。緊急事態条項が憲法改正論議の中で取り上げられていますが、そうした条項に該当するほどの脅威であれば、選挙をしている場合ではありません。ただし、安倍首相流の理屈では、危機は2018年にやってくるということです。そのときには選挙をする余裕はないが、今であれば解散しても大丈夫だろうという説明なのです。
さらに、消費税の使途変更も理由として挙げられていますが、それは本当に解散の理由になるのでしょうか。確かに、消費税の使途を幼児教育無償化に当てれば、それだけ借金を返す分は少なくなるでしょう。しかし、それは2018年度・2019年度の通常の予算編成でもカバーできる話です。もし、仮に消費税を10パーセントから15パーセントにするということであれば、国民に問うべき事柄でしょう。しかし、10パーセントに上げることは決まっていて、しかも再来年の2019年の話です。選挙のテーマとすべきこととは思えません。
●憲法改正をする条文案もできていない
最後に、憲法改正です。確かに、憲法改正は重大な事案です。しかし、自民党は改正する候補を4つも挙げており、しかも改正する条文案はまだできていません。第1に第9条ですが、安倍首相は、それを改憲し、第2項に付属...