●グラフは、縦軸と横軸の取り方で意味が変わる
今日は、グラフの座標軸というものが思想を表すのだというお話をしたいと思います。縦軸に何を取るか、横軸に何を取るかによって、同じデータでも全く意味が違ってくるということです。
例として、車の燃費がいったいどのぐらい向上するのかを考えてみましょう。
私が以前に乗っていた古い車は、世田谷を走っていて8キロメートル/リットルぐらいの燃費でした。7~8年前にハイブリッド自動車に買い換えて、今は22キロメートル/リットルで走っています。8キロメートルから22キロメートルになると、同じ距離を走るのに3分の1のガソリンで済みます。エネルギー問題にとっては、莫大なよい影響を与えることになります。
●乗用車の燃費向上は、すでに達成されているのか
それでは、未来の車はいったい1リットル当たりどのぐらいの距離を走るのでしょうか。
この図(参照:乗用車の燃費向上)は、それを表すために国が作った図です。横軸には年代が取ってあり、縦軸に「キロメートル/リットル」と燃費が書いてあります。そして、実線がデータです。2010年度には1リットル当たり14.4キロメートル走るように、2015年度には18.6、2020年度は22.2という目標値が書き込んであります。
ところが、データである実線部分を見てみると、2010年度にはすでに2015年度の目標すらクリアしてしまっているのですね。
「いや、これは自動車会社がことさらに努力したからだ」と言われるかもしれません。確かにそういうこともあるでしょうが、おそらくは燃費の目標値自体がおかしいのでしょう。もっと高い目標値を設定することもできたはずなのです。
●燃費問題について正しい議論ができるグラフの作り方
では、どのようにプロットをしたグラフを書けば、自動車のエネルギー効率がどこまで向上するのかという議論ができるのでしょうか。
(参照:自動車のエネルギー効率は10倍になる)理論的に正しく自動車の燃費を表すプロットは、燃費の逆数です。キロメートル/リットルではなくて、その逆数でリットル/キロメートル。1キロメートル当たり何リットルのガソリンを消費するかです。この燃費の逆数を縦軸に取っていきます。
横軸には、車の重さ(車体重量)を取ります。そうすると、タイヤやエンジンの技術、抵抗の少ない車の形などの技術が全く同じであった場合には、この数値は原点を通る直線上に並んでくるのです。
なぜかというと、自動車がガソリンを燃やしてエネルギーを使うのは、摩擦があるためだからです。では、摩擦はどこに生じているかというと、空気の抵抗などいろいろとありますが、圧倒的に大きいのはタイヤと地面の間の摩擦です。
中学校あたりの理科で習ったと思いますが、摩擦による抵抗は、ころがり抵抗もすべり抵抗も重さに比例します。だから、同じ大きさの車でも重さが半分になれば、ガソリンは半分しか必要ではない。これが理論です。
もしも摩擦がなければ、1キロメートル走るのにガソリンはゼロで、全く消費しない。そういう理論にのっとってプロットしていくわけです。
●グラフにすると、エネルギー効率の差が一目で分かる
この図は2010年頃の作成だったと思いますが、その年のカタログに掲載されたあらゆる自動車の重量を調べて横軸に取っています。縦軸には1キロメートル走るのに何リットル必要か、燃費の逆数をプロットします。
例えば0.1の数値では0.1リットル/キロメートルですから、1リットルで10キロメートル、「リッター10キロ」と言われている車種がこの辺りにきます。
そして、見事に直線に並んでくるのですが、群によって違います。それを赤と青に色分けをしました。赤い点はフォルクスワーゲンやGMなどの欧米の車です。青のほうは、トヨタ、ホンダ、日産などの日本の車です。
明らかに二つの群に分かれ、青のほうが同じ重さでも20パーセントぐらい燃料消費が少ないのが分かります。これは何を意味するかというと、日本の自動車技術のほうが、エネルギー効率の意味ではそれだけ優れているということを示します。
そして、ちゃんと原点を通っています。先ほど言ったように、同じ大きさの車も重さを半分にすれば、燃費は半分になるのです。
●ハイブリッド+車体の軽量化で、燃費は10分の1に
ただし、ハイブリッド車はまた別の線となり、燃費はガソリン車の半分です。まだあまり多くは出ていませんが、電気自動車や燃料電池自動車になると、燃費はさらに半分になります。
もしも今、BMWに乗っている人たちが同じ重さの燃料電池車に乗り換えたとすれば、エネルギー消費は5分の1ぐらいになるということです。
この...