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長寿社会で誰もが体の不具合を抱えるようになるからこそ

脳が大丈夫ならロボットで自立

小宮山宏
東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長/テンミニッツTV座長
概要・テキスト
〝人間は頭が生きている限り自立できる〟という時代が遠からずやってくる。脳科学やロボット技術の目覚ましい進歩によって、可能性が大きく広がっているロボット開発分野について、小宮山宏氏が具体的な事例を挙げながら語る。
時間:10:52
収録日:2014/05/14
追加日:2014/04/27
≪全文≫

●〝人間は頭が生きている限り自立できる〟という時代がくる


 私は、最近の脳科学やロボット技術の目覚ましい進歩によって、〝人間は頭が生きている限り自立できる〟という時代が、遠からずやってくると確信しています。そのお話をさせていただきたいと思います。

 まず、人間が考えて運動する、あるいは、いろいろなことを感じる五感についてですが、この図で見ていただきたい。

 人間にはニューロンという脳細胞があります。それが考える源です。例えば、人間は動こうとすると、ここ(ニューロン)からピッピッピッピッという電流のパルスが出るのですが、その電流が神経を伝って流れ、体のいろいろな部分へ行き、戻ってくるという電気回路になるわけです。そういったニューロンが数千億というすさまじい数あって、こういう自由な動きができるのです。

 また、1回こうやって動くと、それを脳が記憶し、ニューロンの回路が非常にしっかりしたものに出来上がっていき、運動がスムーズになってきます。そういう学習効果が、ものを考える、そして動くというような、人間の基本的な動作の仕組みなのです。

●人間は筋肉が動かなくなっても、ロボットの助けを借りて動くことができる


 ということは、脳が「動かしたい」と思えば、そういう電流が流れてきているわけです。そのことを検知し、ロボットの助けを借りてサポートすれば、たとえ手や筋肉が動かなくなっても、人間は動くことができるわけです。

 それを実現したのが、最近テレビでよく放送されているのでご存知の方も多いと思いますが、ここに示した、CYBERDYNE(サイバーダイン)社で、筑波大学の山海嘉之先生が7、8年前に始められた〝 HAL(ハル) 〟という名前のついたロボットです。

 この人は歩くための脚のリハビリ用にこのロボットを使っているのですが、動こうと思っても、何もなければ脚は動かないわけです。けれども、動こうという意思によって電流は流れてきているわけですから、表面に少し弱い電流が漏れてきます。その漏れてくる電流を〝HAL 〟は測っているのです。そうすると、「この人は動きたい」ということが分かり、モーターが動き、パワーを貸してくれるので、動こうとすれば動くことができるのです。そして、動くと電流が戻る回路で学習をしていき、一旦失った歩行能力が回復してくるのです。これがリハビリになるとい...
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