●〝人間は頭が生きている限り自立できる〟という時代がくる
私は、最近の脳科学やロボット技術の目覚ましい進歩によって、〝人間は頭が生きている限り自立できる〟という時代が、遠からずやってくると確信しています。そのお話をさせていただきたいと思います。
まず、人間が考えて運動する、あるいは、いろいろなことを感じる五感についてですが、この図で見ていただきたい。
人間にはニューロンという脳細胞があります。それが考える源です。例えば、人間は動こうとすると、ここ(ニューロン)からピッピッピッピッという電流のパルスが出るのですが、その電流が神経を伝って流れ、体のいろいろな部分へ行き、戻ってくるという電気回路になるわけです。そういったニューロンが数千億というすさまじい数あって、こういう自由な動きができるのです。
また、1回こうやって動くと、それを脳が記憶し、ニューロンの回路が非常にしっかりしたものに出来上がっていき、運動がスムーズになってきます。そういう学習効果が、ものを考える、そして動くというような、人間の基本的な動作の仕組みなのです。
●人間は筋肉が動かなくなっても、ロボットの助けを借りて動くことができる
ということは、脳が「動かしたい」と思えば、そういう電流が流れてきているわけです。そのことを検知し、ロボットの助けを借りてサポートすれば、たとえ手や筋肉が動かなくなっても、人間は動くことができるわけです。
それを実現したのが、最近テレビでよく放送されているのでご存知の方も多いと思いますが、ここに示した、CYBERDYNE(サイバーダイン)社で、筑波大学の山海嘉之先生が7、8年前に始められた〝 HAL(ハル) 〟という名前のついたロボットです。
この人は歩くための脚のリハビリ用にこのロボットを使っているのですが、動こうと思っても、何もなければ脚は動かないわけです。けれども、動こうという意思によって電流は流れてきているわけですから、表面に少し弱い電流が漏れてきます。その漏れてくる電流を〝HAL 〟は測っているのです。そうすると、「この人は動きたい」ということが分かり、モーターが動き、パワーを貸してくれるので、動こうとすれば動くことができるのです。そして、動くと電流が戻る回路で学習をしていき、一旦失った歩行能力が回復してくるのです。これがリハビリになるというわけです。ですから、頭が「動く」ということを覚えている限り、こういう補助を受ければ動けるようになるのです。これらは全てロボット技術でできるのです。
それから、これは、スウェーデンのロボットダレンというNPOで、第3セクターのようなところで作った、食事の支援ロボットです。
この老人の方は腕が動かなくなっているのですが、指先は動くわけです。それで、指先でスプーンを操って食べるというロボットです。
けれども、いずれこの人は指も動かなくなるかもしれません。そうなっても、頭でスプーンを動かそうと考えれば、このロボットがサポートしてくれて、指が動き、スプーンを持って食べるということができるようになるわけです。今後は、そういうことがほぼ確実になると思います。
●人間は頭が生きている限り、ロボットと一体化して自立できる
最近、こんなものまで出てきております。頭にちょっとしたものをかぶるのですが、こちら側には、いわば小さなヘリコプターみたいなものがあるわけです。間にスマホが絡むのですが、直接手を動かすわけではなく、まず飛ばそうと考えます。
そうすると、飛ばそうという意思が電流パルスになって出ていますから、その電磁波を感じれば、このヘリコプターはこんなに小さなものですが、飛ぶというわけです。この玩具が3万円で売っていました。
私もそれを買って、秘書の人が先ほど飛ぶかどうか実験してみたら、本当に飛ぶそうです。「まだ、右に行け、左に行け、ということまではできない」と言っていましたが、それぐらいのことが玩具の段階でできるということは、〝人間は頭が生きている限り、機械やロボットと一体化して自立できる〟ということを示しているわけです。
これには、他にもいろんな例があります。例えば、網膜がやられて目が見えなくなったという人の場合、もちろん一つは再生医療にもいずれ応用できるようになるのでしょうが、もっと早いのは、いわばデジカメで、デジカメのフィルムに相当するところを視神経につなぐわけです。
視神経というのはどうなっているかというと、眼球から網膜のところに光が入って、画像を結び、それが神経を伝わって脳で見ているということです。ですから、別に目をつぶっていても、デジカメの画面と視神経がつながれば、人間には見えるわけです。
私はこの話を今から10年前ぐらいに聞き...