私の「葉隠十戒」
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「成果が出なければ犬死に」などと考えることが大間違いだ
私の「葉隠十戒」(2)毎朝毎夕、改めては死に改めては死ぬ
考察と随想
執行草舟(実業家/著述家/歌人)
第三戒「図に当たらぬは犬死などといふ事は、上方風(かみがたふう)の打ち上りたる武道なるべし」は、つまり、自分の信念に基づいて体当たりをすれば、あとの結果が成功だろうが失敗だろうが構わない、という戒めである。「成果が出なければ犬死に」などと考えること自体が間違い。結果は関係なく、ただ一生懸命やれば、それが立派で素晴らしい人生になるのである。第四戒「毎朝毎夕、改めては死に改めては死ぬ」は、死は毎日念じない限り意味がないということ。「改めては死に」とは、憧れに向かう生き方でもある。「憧れ」は簡単な言葉でいえば「初心」のこと。毎日、思い出すというより、そこに立ち返るほど真剣に向きあうのだ。(全4話中第2話)
時間:9分35秒
収録日:2021年4月8日
追加日:2021年10月8日
カテゴリー:
≪全文≫

●信念に基づいてやれば、その成否はどっちでもいい


―― 次に第三戒ですが、「図に当たらぬは犬死などといふ事は、上方風の打ち上りたる武道なるべし」。これは、どういう意味でしょう。

執行 意味はこのとおりです。人間は、死んだ結果を考える能力は、誰にもありません。神様以外はわからない。だから、「いい死に方をしようと思ったら、絶対に死ぬことはできない」という意味です。つまり自分の信念に基づいて死ねば、それでいいという言葉と同じ意味です。

 死に方に、いい悪いをつけようとするのは「上方風の武士道」であり、佐賀藩の武士道ではない。山本常朝は佐賀藩ですから。上方風は「都会風」のことで、都会風の格好つけた武士道という意味です。

―― 「図に当たらぬは犬死」とは何かを狙って成果が出ればいいけれど、成果が出ないで死んだら犬死に、そう考えること自体が……。

執行 ダメということです。

―― ここで「上方風」と言っていますが、「それは自分たちの道ではない」と。

執行 もちろん、そうです。会社なら、儲けるためにやっているのではない。結果として儲かるかどうか。自分の信念に基づいて、一生懸命やればそれでいい。それで出世する場合もあるし、ダメな場合もある。どっちでもいいということです。

―― 図に当たらなくてもいいと。

執行 「全然いい」ということ。「それでもいい」というマイナス的な言い方ではダメです。

―― 「それがいい」と。

執行 「どっちでもいい」。

―― 「どっちでもいい」ですか。

執行 それを考えること自体がダメなんです。

―― やるだけやって、あとはもう天の……。

執行 運命です。

―― 運命という。

執行 そういうことです。運命が平社員で終わるなら、平社員が運命だから、その運命を遂行したほうがいいのです。これは今の人には、わからないでしょう。

―― 普通にいうと「損な生き方だよね」と言われ方をしてしまいますね、きっと。

執行 だから、「損得」で考えるからです。歴史で言うと、昔の人は、けっこうみんなわかっています。本当に会社に尽くし、自分が体当たりで仕事にぶつかったなら、逆に、平社員でなんで嫌なのか。自分が評価されなかったのなら、それは社長か上役が評価する人間ではなかっただけで、その人間のことは自分には関係ない。

 自分にできるのは、自分が体当たりするかどう...