衆院解散総選挙の理由と安倍首相にとってのリスク
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
英語でどう言えばいいのか分からない「念のための解散」
衆院解散総選挙の理由と安倍首相にとってのリスク
ジェラルド・カーティス(政治学者/コロンビア大学名誉教授)
2014年11月18日、安倍晋三首相が衆院の解散を表明した。12月2日公示・14日投開票で総選挙が行われる。この解散総選挙の理由や、安倍首相にとってのリスク要因を、日本の政治に精通するジェラルド・カーティス氏が緊急解説。
時間:17分50秒
収録日:2014年11月18日
追加日:2014年11月22日
カテゴリー:
≪全文≫

●日本経済への自信のなさから、選挙を今やるのが得策と判断


カーティス 今回の解散は、まず消費増税10パーセントの先延ばしというか、「先延ばし」というのは、「もう上げない」という意味だと思いますし、それについていろいろな議論はできます。僕は、やはり予定通り上げるべきだったと思います。ただ、安倍晋三首相は政治家ですから、第3四半期の経済がこれほど悪かったというデータが17日に出ましたが、その時点で、要するにリセッション(景気後退)になっているのです。その中で再度、7、80パーセントの国民が反対している消費税を上げるということは、よほどの自信がないとできません。ですから、彼は今の日本の経済にただ自信がないという意味だと思うのです。

―― 経済に自信がないのですね。

カーティス 自信があれば消費税も上げるし、解散もしません。では、なぜ今解散をするのか。自民党でさえ何のための選挙なのか分かっていません。ですから、高村正彦さんは、念のためにやるという、「念のための解散」と言いましたが、僕は外国のメディアにいろいろとインタビューを受けていますけれども、まず、この「念のため」を英語でどう言えばいいのか、全く意味が分かりません。要は、どうも今選挙をやる方がよく、今やらなかったら、経済情勢はそれほどよくならないのだから、来年も無理だろうと考えたのではないでしょうか。集団的自衛権に関するいろいろな法案を出さなければならないし、あるいは、この原子力発電所の再稼働の問題もありますし、自民党の総裁選挙もありますからね。

 ですから、来年は政治的には非常に厳しい1年間になるということで、もう早くやった方がいいと考えたのだと思います。そうすれば、あと2、3年はもう選挙を心配しないで、いろいろな難しいことや厳しいこと、困難なこともやれるというような計算だろうと思います。


●大義名分がなく、テーマが不明確なことが今回の解散と選挙の問題点


カーティス ところが、問題がいくつかあるのです。一つは、そのような理由で本当に選挙をやっていいのかということです。大義名分はなく、ただ、今の経済やアベノミクスがあまりうまくいっていないということに国民が十分気がつく前に、解散して選挙をやってしまった方がいいというのは、有権者に対してはあまり丁寧なやり方ではありません。

 それと、もう一つは、この...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
日本のエネルギー政策を「デジタル戦略」で大転換しよう
岡本浩
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教

人気の講義ランキングTOP10
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(5)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈下〉
『武功夜話』は偽書か?…疑われた理由と執筆動機の評価
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
編集部ラジオ2025(29)歴史作家の舞台裏を学べる
歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治