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厄介なのは「難解な日本語」という壁

「移民問題」の要諦とは何か?

曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授
概要・テキスト
「移民」と聞いて、何をイメージするだろうか。工事現場の労働者? 外国人技能実習生の実態問題や違法移民? だが実はすでに相当数の外国人が日本で働いていて、社会を構成する重要なファクターとなっているという実態がある。感情論ではなく、日本の将来を見据えて「移民」を考えるとどうなるのか。曽根泰教氏の論点がさえる。
時間:09:07
収録日:2014/10/09
追加日:2015/01/16
タグ:
≪全文≫

●移民問題とは、何問題なのか?


 今回は、移民の問題についてお話しします。日本の人口が減少してくると、人口を増やす、つまり合計特殊出生率を増やすためにはどうしたらいいかという議論と並んで、必ず出てくるのが、移民を受け入れるという選択肢です。

この移民問題には、実態面と理念面の両方があります。まず理念的なところからお話しします。それは、そもそも移民で人口を増やすことがいいことなのかどうか、という議論です。


●大学経由で入ってくる研究者、技術者、専門家


 「移民」といったときの一般的なイメージは、例えば建設工事、工場労働、農業といった、人が足りないところの労働力としての移民と考える人が多いかもしれません。ですが、日本が考えるべき移民というものは、それとは違うのだろうと思います。

 移民と呼べるかどうかということもありそうですが、医療技術者やIT関係の人など、言ってみれば、大学・大学院などの高等教育を受けた人で、技術力があり、専門的な研究領域を持つ職業の人が、もっと日本にとどまるべきだということは言えると思います。

 そうすると、一つのチャンネルとして、大学経由ということが実は非常に重要なのだと思います。どういうことかというと、理科系ではほとんど日本語を使わなくても済むという分野もありますが、しかし、3年、4年と日本に暮らすということは、日常生活では日本語をどこかで使っています。さらに社会科学系になると、ビジネスの言葉としての日本語も使いこなせるような人たちが日本にいるのです。その人たちを活用するというのが一つのチャンネルだと思います。


●外国人研修生の受け入れ─人種的対立の回避策はある


 その変形と言えるのが、研修生の受け入れ(外国人技能実習制度)です。外国から研修生として一定期間来日し、農業や水産業などの技術を習得して帰ってもらうというシステムです。このもう一つのチャンネルをマイナス面の解決でうまく活用すれば、おそらく日本が求める人材を海外から補うことが可能だと思います。

 ただし、この分野では、一般的に、クリアすべきいくつかの課題があります。ドイツをはじめヨーロッパが経験した、いわゆる「ガストアルバイター」のようなことです。移民がトルコからやって来る。その子どもたちが大勢いて、国に帰ると思ったら帰らない。そうすると、人種的な対立が生まれ...
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