日本のビジョンの二つの考え方
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
日本の未来を曖昧にする相反する2つのビジョンを考える
日本のビジョンの二つの考え方
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
日本のビジョンを考える上では二つの立場と考え方が混在しており、ビジョンそのものを曖昧にさせている。本編ではその二つの考え方の相違点を挙げながら、ビジョンを考える上での方策を提示する。
時間:9分10秒
収録日:2013年11月15日
追加日:2014年2月24日
カテゴリー:

●日本のビジョンを曖昧にする二つの考え方


 日本のビジョンを考える上での二つの考え方、この二つの異なる立場、二つの異なる考え方の相違をお話ししたいと思います。

 一般的にこれは楽観論と悲観論と言われることが多いですが、立場の違いというよりも私は手法の違いではないかと思います。それによって提案が異なっている。日本のビジョンを見ますと、異なる立場、異なる考えが混在しているために、ビジョンがとっても見えにくいということが言えます。


●医者とコーチの立場が混在している


 では、その一つの立場というのは何かというと、お医者さんの立場です。「日本がかなり長期にわたって病気をしている、あるいは生活習慣病である。それを治すためにはどうしたらいいか」ということからビジョンを組み立てている人が片方にいるわけです。

 もう片方の立場というのは、「いや、日本はトップアスリートだ。トップアスリートをオリンピック、ワールドカップに出すためには、どうコーチしたらいいか」、こういうような立場の人がいるわけです。

 ですから、「日本をどうするか」ということには、この二つの立場が混在しているわけです。片方は、かなり深刻な症状と診断して、手術が必要であるとか、そういう病気かもしれないという、立場としては悲観論というよりもお医者さんの立場としてそういう診断をしているわけです。もう片方では、「ワールドカップに出よう」「オリンピックをやろう」「世界で一番であることが大事だ、二番では駄目なんだ」という立場の人がいるわけです。


●相手にするのは元気な若者か病人か


 これは常日頃、我々が感じていることとも関係しています。たとえば我々が大学で教えているとき、そこの学生たちは18歳くらいから20歳代前半、大学院生でも30歳少し前くらい、ときには定年後に勉強をしたいという人も来ますが、これはあくまでも例外で、ほとんど若者を相手に授業をしたり一緒に活動しているわけです。たまには病気になったり風邪を引いたりうつ病になったりする学生もいますが、基本的には元気な若者たちで、「世界と競争しろ」とか「この分野ではノーベル賞をとれる」と、元気で優秀な学生のお尻を叩くということが、ある意味で我々の役割なわけです。

 ところが医者の場合の多くは、高齢者か病気持ちか、若者がやって来たとしてもどこかを怪我していたり診断治療が必...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
日本のエネルギー政策を「デジタル戦略」で大転換しよう
岡本浩
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(3)医療の大転換と日本の可能性
近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
『「甘え」の構造』と現代日本(2)日本人の自責意識と自由の限界
「Thank you」か「I am sorry」か…日本人の癖とは?
與那覇潤
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
AIとデジタル時代の経営論(6)暗黙知と判断力
AIは「暗黙知・常識に基づく高度な判断」が不得意
一條和生