●なぜ経団連はGDPの話しかしないのか
小宮山 最近、やはり個人が非常に重要だと思っているのですが、それに関して不思議なことが一つあります。例えば、経団連の上層部の方々など経済界の方とも付き合いがあるのですが、彼らと食事すると、彼らが個人的なことでいろいろと困っているのが分かります。例えば、親の介護です。皆さんはたいがい東京に住んでいますが、東京にはケアハウスが少ないのです。
―― 少ないですね。
小宮山 私の場合、たまたま姉が所沢市のさらに先の方に住んでいて、そこにはたくさんありますから、親の介護の際は、姉の家の近くのケアハウスにお世話になりました。しかし、経団連の方々は自分の親の問題で苦しんでいます。それから、お嬢さんがおられる方もけっこう多いのです。先ほど「女性の活躍ワーキングループ」についてお話ししましたが、まさに女性が活躍しにくい社会の状況があって、お嬢さんが困っているのです。
―― 働きながら子育てできないですから。
小宮山 次に、その子育てです。私も都心部に住んでいましたから、遊び場が少なく、危険な環境でした。子どもを育てるのは本当に大変だったという思いが強いです。これらは全部、社会の問題ではないですか。それらを個人が経験しているわけです。
ところが、経団連はGDPの話しかしません。これは、民主主義を自分たちでつくってこなかった国の悲しさではないかと私は考えています。ルールや制度、法律は、本来、僕らが決めたものです。しかも、経団連はそれらを決めることに対して、ものすごく強い影響力があります。自分たちが困っているのに、なぜ彼らは本気で働きかけないのでしょうか。なぜGDPの話ばかりしているのでしょうか。これが、個人と日本という国をどのように元気にするかを考える際の基本的問題だと思います。
●日本はグローバルとローカルがつながっていない
小宮山 このことを「グローカル」と言うのです。
―― グローカル。
小宮山 グローカルという言葉があります。グローバルとローカルを組み合わせた言葉です。「グローバルは重要だけれども、ローカルも重要だ」などとよく言いますが、日本はグローバルとローカルがつながっていないのです。例えば、国と個人です。
――つながっていません。
小宮山 それが、日本の基本的問題です。では、他の国も皆同じかというと、同じ...