イランは中東の新しい地政学をリードできるのか?
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
イスラエルは中東ゲームのワイルドカードを握っている
イランは中東の新しい地政学をリードできるのか?
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
歴史学者・山内昌之氏がイランとともにその動向を注視しているのがイスラエルだ。しかし、いずれにしても、政府の統治レベルも低く市民の主体性も欠如している中東で、安定と秩序を構築するのは容易ではない。山内氏が、その中東に平和と秩序をもたらす切り札と考えるものがある。民族の知恵ともいえるその切り札を、果たしてイランは生かすことができるのか?
時間:10分49秒
収録日:2015年4月7日
追加日:2015年4月22日
カテゴリー:
≪全文≫

●中東ゲームのワイルドカードを握るイスラエル

 
 皆さん、こんにちは。

 さて、中東で繰り広げられているゲーム、これは本質的に言えばゼロサムゲームに近いものがありますが、今やこの中東ゲームのワイルドカードを握っているのは、イスラエルであるかのように思えます。

 つまり、スンナ派のアラブ対シーア派のイランといった構図、そして、それぞれが支援する国や組織が代理戦争や代理的に内戦を敢行しているという時期において、そのゲームの行く末を握るカードです。そういう意味で言えば、単純なカードではなくて一種のワイルドカードとも言うべきものを、イスラエルは握っているのです。とりわけ、イランに対する新しい役割を、これからイスラエルがどのように果たしていくのかが興味深い点です。

 実際に、イスラム国によるヨルダン空軍の操縦士・カスィーバ中尉の殺害や、あるいは、後藤健二さんをはじめとする日本人二人の人質の処刑問題など、ヨルダンをめぐる最近の情勢は、中東の秩序を大きく変えかねない、そして、変えつつある大変厄介な未来の前兆であると言ってもよいかもしれません。


●イランに常にシグナルを送ってきたイスラエル


 イスラエルは、これまでもガザのハマスや南レバノンのヒズボラとの戦いによって、アラブの国々、ひいては彼らを介して、シーア派のイランに対して、イスラエルの意志力や強さ、抑止力についてシグナルを送ってきました。しかし、イスラエルのこうしたもくろみは、必ずしも成功してきたわけではありません。むしろ、それはあまり効果がなく、シリア、イラクに加えてイエメンにまで紛争がイランの主導で広がるといった、中東の悲劇と不安定を増大することになった一因を、イスラエルもまたつくったと言えるかもしれません。しかし、当面はともかく、イランの脅威や安全保障上の直接の威嚇がイスラエルには及んでないということがあります。


●中東安定のシナリオの決め手は時間と軍事力


 こうしてみますと、中東における安定とは、ある意味で非常に相対的な性格のものでしかないように思われます。つまり、考えられる中で最良のシナリオは何か、ベストの解決の構図は何かといったことを、常に考えていかなければならない地域だと言ってもよろしいでしょう。

 ある意味で、客観的に申し上げることができるのは、時間の経過ということです。時間が問題...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗
半導体から見る明日の世界(1)世界的な半導体不足と日本の可能性
なぜ世界の半導体不足は起きた?台湾TSMCと日本復活への鍵
島田晴雄
資産運用の思考法…経済や市場の動きをどう読むか
市場予測のポイント…短期・中期・長期の視点と歴史的洞察
養田功一郎
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
日本のエネルギー政策を「デジタル戦略」で大転換しよう
岡本浩
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
ロシアのハイブリッド戦争と旧ソ連諸国(1)ロシアの勢力圏構想とNATO拡大
「ハイブリッド戦争」の実像…ロシアが考えていることとは何か?
廣瀬陽子

人気の講義ランキングTOP10
文明語としての日本語の登場(1)古代日本語の復元
なぜ「てふてふ」が蝶々?日本語の変遷を追う…まずは万葉仮名から
釘貫亨
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(5)サルコペニア・フレイル対策
認知症予防にはどんな食事がいいのか?鍵はビタミンDの充足
小川純人
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
「満洲」から考える日本とアジア(10)戦後の「五族」の運命
「五族協和」の真実と満洲国崩壊後の五族の悲劇…満洲人、朝鮮人、露人、蒙古人、漢人らの戦後悲史を直視せよ
宮脇淳子
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
地政学入門 歴史と理論編(1)地政学とは何か
地政学をわかりやすく解説…地政学の「3つの柱」とは?
小原雅博
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将
『源氏物語』ともののあはれ(1)雅な『源氏物語』の再発見
『源氏物語』の謎…なぜ藤壺とのスキャンダルが話のコアに?
板東洋介
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎