●オバマ政権下でTPPは合意できるのか
環太平洋パートナーシップ協定、いわゆるTPPの交渉が、非常に微妙な時期に入ってきました。この映像が放映される頃には、新たな展開があるかもしれませんので、非常に不確定な中ではありますが、今どういうことが起こっているのか、あるいは、今後の展望はどうなるのかということも含めて、TPPについて話をしたいと思います。
まず現状ですが、バラク・オバマ大統領の任期中にTPPが合意に達するかどうかということが大きな注目点です。アメリカは、来年(2016年)になりますと大統領選挙絡みの政治モードになるので、いろいろなことが動きにくくなります。したがって、タイムリミットとして2015年のうちに交渉が相当に進んでいかないと、オバマ政権下でのTPPの合意は難しいだろうといわれています。そういうタイムリミットを逆算していくと、これから1~2カ月の間に目に見えるような進展があるかどうかが、大きな注目点になるわけです。
もちろんオバマ大統領にとってみれば、TPPをまとめ上げることで、彼の大統領任期中の大きなポイントにしたいと考えている向きがあります。アメリカの政治では、「レガシー」という言葉をよく使います。日本語に翻訳すると、「遺産」という意味になるのかもしれませんが、後に歴史を振り返ったとき、大統領が何を成し遂げたか、それがレガシーなのです。オバマ大統領にとって、8年間の任期中に何をレガシーとして残したかということが将来問われることになります。現職の大統領は、そこを非常に意識するわけです。その過程で今、キューバとの国交回復、あるいはイランをめぐる核交渉など、いろいろなことが進んでいるわけですが、TPPもその一つになってきているのです。
●TPP合意の鍵を握るTPA法案
TPPがまとまるための最大のポイントは、今やアメリカ国内の政治と深く関わっています。それが、TPA(Trade Promotion Authority、貿易促進権限)といわれている法案です。で、TPPとTPAは似ているように見えるのですが、全く違います。
TPA法案とは、簡単に言えば、アメリカの大統領が外国と貿易交渉をしやすくするため、いわば議会からのお墨付きをもらう法案のことです。アメリカの制度では、関税の決定や通商政策の権限は議会にあるのです。したがっ...