EUを離脱したイギリスがTPPに入ったら?
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
EUとTPPの比較から見る「国家主権」への制約
EUを離脱したイギリスがTPPに入ったら?
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
トランプ米国大統領とメイ英国首相の接近ぶりが報道される昨今、EU離脱を決めたイギリスがTPPに加盟すればどうなるのだろうか? そんな思考実験を進めるのが、政治学者で慶應義塾大学大学院教授・曽根泰教氏だ。混迷する世界を読み解く鍵は、「グローバル化」という言葉の中に潜む差異、そのレベルの違いを探し出すことにある。
時間:11分57秒
収録日:2017年1月24日
追加日:2017年2月17日
≪全文≫

●イギリスのEU離脱からグローバル化の違いを把握する


 今回は、「EUを離脱したイギリスがTPP(Trans-Pacific Partnership、環太平洋戦略的経済連携協定)に入ったら?」という、現実にはかなりありえない話をします。TPPはまだ発効していませんが、イギリスは理論的にTPPに入ることができます。ただし名称はTPPではなく、「TPAP(Trans-Pacific and Atlantic Partnership)」というPPAPのようなものにならざるを得ないだろうとは思います。

 なぜ架空の話としてEU離脱問題とTPP加盟を比較するのかというと、これが「グローバル化」と一言で済まされている事象の違いを把握する格好の事例になるからです。その例としてお聞きください。

 「EU離脱を決定したイギリスがTPPに入る」というのは、今ではまだ、ある種のジョークです。私はイギリス大使館の人にそのようにお話ししたことがありますが、現実的な検討はスタートしていません。

 しかし、イギリスの政策を考えてみますと、ヨーロッパ大陸からオーストラリア、ニュージーランド、日本などとの関係をこれからさらに強化していきたいという意識が、イギリスにはあります。もちろん北米(アメリカ・カナダ)との関係もありますが、旧英連邦を中心とした関係をもっと強くしないと、イギリスはEUからの離脱を補えないという意識があるのです。

 もう一つ重要なことは、TPPにはイギリスが嫌っているEUの厳しい規制や条件がないことです。では、その違いは何なのかということで、グローバル化の話をしたいと思います。


●グローバリゼーションが突きつけた「不可能な三位一体」とは


 ここに、二つの図を持ってきました。一つは「不可能な三位一体(Impossible Trinity)」です。1999年の『エコノミスト』に掲載されて以来、私はこの図をずっと使ってきました。

 ここでは、「国家主権(National sovereignty)」「グローバルキャピタルマーケット(Global capital market)」「国際的規制(International regulation)」の三つを、いっぺんに達成することはできないと言っています。おそらく『エコノミスト』は、ラリー・サマーズ氏(元米国財務長官)の主張などをもとに書いていたのではないかと思いますが、三つのことを同時に達成することはできないから、「三位一体はImpossibleだ」という論説です。

 もう一つの図も同じくグローバリゼーションにつ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教

人気の講義ランキングTOP10
AI時代と人間の再定義(2)仏法僧の三宝と対話による道徳的進歩
仏法僧の三宝――なぜ1人で仏教に向かってはいけないのか
中島隆博
独裁の世界史~未来への提言編(1)国家の三つの要素
未来を洞察するために「独裁・共和政・民主政」の循環を学べ
本村凌二
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(8)秀長の死の影響と秀吉政権の瓦解
「家康対奉行」の構図は真っ赤な嘘!? 秀吉政権瓦解の真相
黒田基樹
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
歌舞伎はスゴイ(3)歌舞伎のサバイバル術(前編)
草創期からの度重なる「規制」と「スキャンダル」を超えて
堀口茉純
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子
健診結果から考える健康管理・新5カ条(2)健診結果はダルマ落としでアプローチ
バラバラ事件!? 検査項目をバラバラに見てはいけない
野口緑
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一