●大きく動いているアメリカの通商政策
本日は、米中の通商交渉についてお話ししていますが、今回はアメリカの保護主義化の動きが日本に与える影響について、考えてみたいと思います。
基本的には今、アメリカの通商政策は大きく動いていて、対日政策は少々出遅れている状況です。そもそもトランプ政権が関税措置を矢継ぎ早に打ち出してきたということもありますし、また、メキシコ、カナダとのNAFTAの再交渉をした結果、USMCA(the United States-Mexico-Canada Agreement、米国・メキシコ・カナダ協定)、すなわちアメリカとメキシコ、カナダとのNAFTAに替わる新しい北米通商協定のようなものが成立するはこびになっています。これをアメリカ政府としては議会で成立させなければいけないわけです。
●日米の物品貿易協定TAGと日本の思惑
さらに、中国との交渉が結構難航しているということもあり、日本に関していうと、比較的さまざまなものが先送りになっていますが、ドナルド・トランプ大統領と安倍晋三首相の間では、2018年に日米財貿易協定、略して「TAG(United States-Japan Trade Agreement on Goods、物品貿易協定)」と呼ばれるものを今後、検討していく方向が打ちだされています。
日本政府はこれは基本的にFTA(Free Trade Agreement)、自由貿易協定ではないということを訴えているのですが、英語の報道を見ているとほとんど「FTA」といわれています。素直に見れば、これもFTAの一種だと考えるべきなのですが、基本としては財に限った貿易協定を結んでいきましょうという流れになっているわけです。
このような流れができてきた一つの理由に、アメリカの関税政策の影響回避ということが考えられます。トランプ政権は中国に対してもタカ派の政策を取っているのですが、例えば自動車関税を発動するといった話が出ていて、こうしたアメリカの関税政策が自動車関税をはじめとして日本に波及してくることを回避するために、TAGのような新たな貿易協定を結んでいく必要があるというわけなのです。これはTPPが、トランプ政権において一端却下された格好になっているので、TPPに替わる新しい貿易の枠組みを二ヵ国間協定で結んでいくという流れができているのです。
●アメリカが為替操作禁止条項を求める理由
この中で、為替マーケットにとっても重要...