●モディ政権は製造業を重視している
今日、二つ目の話題として、インドのモディ政権がインドルピーに対して持つ意義について考えたいと思います。
昨年(2014年)5月の総選挙の結果、インド人民党を主体とするモディ政権が発足しました。インドという国は、第一次世界大戦後から第二次世界大戦後にかけて、マハトマ・ガンジー、ジャワハルラル・ネルーが独立運動を主導し、イギリスからの独立を勝ち取りました。この流れをくんでいる政党にインド国民会議派があります。モディ政権の誕生前も、2004年から2014年にかけてはインド国民会議派の政権が続いていました。10年ぶりに、インド国民会議派以外の政党が政権を握ったのです。
インド人民党はヒンドゥー至上主義を掲げている政党で、その意味で少々不安な側面もありますが、モディ政権は「寺よりトイレ」という標語を掲げていて、今のところは宗教色を薄める方針で政権を運営しています。ナレンドラ・モディ首相は、首相になる前、グジャラート州の知事をしていました。その時、製造業を誘致することで州の経済を立て直した実績があり、その手腕への期待が膨らんでいる状況です。
モディ首相が掲げる政策の中で特に注目されるのは、グジャラート州経済を立て直した時と同様、製造業を重視する「メイク・イン・インディア政策」です。現在のインドは、経済構造上、第三次産業に依存する割合が比較的に高い国です。かつてのアメリカや日本、近年の中国などは、農業を中心とした第一次産業から、工業を中心とした第二次産業が立ち上がり、最終的にサービス産業を中心とした第三次産業に移行していきました。インドはもともと第一次産業への依存度が高い中で、第二次産業の製造業あたりが伸びてくる前に、金融、建設、ITなど第三次産業を中心に伸びていきました。日本、アメリカ、中国などとは違う経済発展の道をたどっているのです。
しかし、そういった中で中間層を形成するには、組織だった企業経営、生産活動を行う製造業の発展が重要です。日本、アメリカ、中国と違い、製造業が発展してこなかったことが、インドの中間層の形成が遅れた理由の一つだといわれています。そこで今、モディ政権は製造業を成長させる政策を打ち出しているのです。
●インドの人口動態上の三つの強み
今のインドを取り巻く環境を考えてみると、モディ首...