●ドル円推計値の上昇見込みとドル過大評価の懸念
今回は、ドル円のモデル分析の話をしていきたいと思います。
今、見ていただいているグラフは、赤い線がドル円のスポットレートの動きを示しています。前回お話した通り2015年の半ばに125円台でピークアウトして、2016年6月、イギリスでEU離脱を可決した国民投票が行われた直後に100円前後まで下がり、その後トランプラリーとなったということです。
その間、モデルに基づくフェアバリュー推計値はどうであったかというと、2015年の初めに大体118円ぐらいでピークアウトした後、2016年の6~7月には106~107円ぐらいまで下がりました。つまり、その間モデルの推計値は12円ほど下がったということです。そこから横ばいに転じていて、現在大体107円ぐらいです。向こう半年間は大体この107円前後で推移した後、2017年の終盤12月ぐらいから、もう一度長期的な上昇トレンドに復帰することが見込まれていて、2018年にはモデルの推計値は120円、2019年には130円という数字が示されています。
このモデルの推計値そのものをシンプルに相場予想に当てはめるわけではありませんが、2018年年、2019年に向けてはドル円が上がりやすい、つまりドル高・円安になりやすい環境になると予想されているということです。
ただ、足元の問題としては、2018年に120円130円になるかどうかというよりは、107円前後と思われる推計値に対して、ドルがまだ過大評価だと思われているということです。ですから、2017年の年初118円台から4月108円まで、10円ドル安円高が進んできたのですが、こういった調整を経てもなお、モデル推計値、フェアバリューの推計値に対してドルは過大評価の可能性があるということになってきます。
●推計値とスポットレートのぶれからモデル分析
次にこのグラフを見てください。青い折れ線グラフは、今お話したドル円の推計値から実際にドル円のスポットレートがどれぐらい上ぶれているか、あるいは下ぶれているかということを示しています。左側の軸が0になっているところが推計値と実際のドル円がピタッと一致するところですが、今でいうとドル円が107円であれば、青い線はちょうど0のところに来ているということです。
実際はこの半年間、ドル円が推計値よりも上ぶれていましたから、青い線が0より上にあるということがお分かりいただけると思います。先ほどちらっとお話ししましたが、大体この推計値からドル円というのは、最大で10円程度、上ぶれ下ぶれを繰り返していくわけです。ですから、このあたりが、2016年の年末にドル円が118円に達した時に、「ちょっとドル高円安が行き過ぎていて、いったんは調整局面に入るかな」と私が考えた理由だったわけです。
●ドル指数が上がればドル円の課題評価は正当化される
一方で、このグラフの赤い折れ線グラフは何かというと、米ドルの通貨指数の動きを示しています。米ドルの通貨指数はさまざまなものがあるのですが、ここではわれわれの言葉でDXYと呼んでいるドルの指数を使っています。このDXYの指数の約6割がユーロドル、ユーロです。ですから、赤い線は、基本的にユーロが上がってドルが安くなると下にいき、ユーロが下がってドルが上がり始めると上にいくと、理解してください。
そうすると見ていただいた通り、ドル円のモデル推計値からの上ぶれ下ぶれと、このドルの指数の6カ月平均からの上ぶれ下ぶれが、大体同じ方向を向いているということがお分かりいただけます。このことは何を意味しているのかというと、2016年11月12月のトランプラリーを経てドル円は118円に達したわけですが、10円ほどモデルの推計値からドル円が過大評価になっていても、ドルの指数がどんどん上がる力強さを持っている場合は、そういったドル円の過大評価は正当化されますから、フェアバリュー推計値までドル円が下がる必要はありません。すなわちユーロドルが下がっている、つまりユーロドルでユーロ安ドル高になっているときは、ドル円の過大評価は正当化されるということです。
●実際には2017年年初からユーロ高ドル安傾向に
ところが、実際2017年に起こったことは何かというと、ユーロドルが年初から1ユーロ1.04ドルで底入れした後、どちらかというとユーロ高・ドル安の動きが出てきたということです。すなわち赤い線は下方向に下がっていたということです。そうなってくると、ドル円のフェアバリュー推計値に対する過大評価というものが正当化できなくなって、そのモデル推計値に向けた調整圧力がぐっと強まってくるということになるのです。
ですから、それが2017年に起こったことであり、足元はこの赤い線がかなり下がってきていますから、ドル円は場合によってはモデルの推計値よりドル安円高サイドに下ぶれてもおかしくないとい...