●トランプ現象はアンチ・グローバリゼーション
今シリーズで3つ目の論点ですが、相場から少し離れて、ドナルド・トランプ大統領が誕生したことの意義を少し考えてみたいと思います。
このスライドは、今回の大統領選挙でどの地区がトランプ候補に投票し、どの地区がヒラリー・クリントン候補に投票したかを示しています。前回お話しした通り、アメリカでは共和党が赤、民主党が青を使います。
大統領選挙人は、ほとんどの州で総取り方式を採用しています。1人でも民主党に投票した人が多ければ、その州の選挙人は全て民主党に流れるということです。それは共和党でも同じで、1人でも共和党に投票した人が多ければ、その州の選挙人は全共和党に流れます。近年、ニューヨークをはじめとして金融産業が盛んな東海岸と、ロサンゼルスやサンフランシスコなどにIT産業を中心としたグローバル企業が数多く存在する西海岸の両岸は民主党支持で、内陸部は共和党支持が多くなる傾向があります。この地図でもその傾向が見て取れます。
ただ、それ以上にこの地図が表しているのは、民主党が取ったエリアがいかに少なかったか、共和党のトランプ候補が取ったエリアがいかに広かったかということです。要するに、ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴなどの人口集中部にはグローバルに活躍する企業や人が多く、そうしたところはヒラリー・クリントン候補を支持したのですが、それ以外の人口密度の低い地域は、共和党のトランプ候補を支持していたことが端的に表れているのです。こうした点が、今回のトランプ現象がアンチ・グローバリゼーションだと言われている所以だと思います。
●イギリスのEU離脱もエリート層に対するマスの逆襲
実は、似たようなことが6月にも起こっていました。それはイギリスのEU離脱問題です。この時の地図を見ていただくと、黄色いところは国民投票の際にEU残留を希望した地域で、青いところはEU離脱を選択した地域です。
イギリスはイングランド、スコットランド、北アイルランド、ウェールズの4地域から成り立っていますが、スコットランドと北アイルランドは伝統的にEUに残りたい人たちが多い地域です。また、ロンドンを中心とした金融セクターやグローバル企業が集まっている地域も、EU残留を求めました。ところが、そのあたりを取り巻くウェールズやイングランド周辺部がEU離脱を希望し...