トランプ政権と為替の関係
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アメリカにおける為替問題の主役は「中国」
トランプ政権と為替の関係
伊藤元重(東京大学名誉教授)
2017年4月29日で発足100日を迎えるトランプ政権。始動以来、株とドルは順調に上昇傾向を続けている。しかし、最近の地政学的リスクに加え、気になるのはトランプ氏自身の「ドル高牽制発言」である。トランプ政権のドル高牽制策は、今後より強くなるのだろうか。東京大学名誉教授で学習院大学国際社会科学部教授の伊藤元重氏に、今後の展望を解説いただく。
時間:12分10秒
収録日:2017年4月25日
追加日:2017年5月26日
≪全文≫

●為替高がいいか悪いか、トランプ大統領の見方は


 トランプ政権が始動してから、為替の話題がかなり大きく浮上しています。トランプ氏自身から、アメリカのドル高を非常に牽制するような発言が多発することもあり、近い将来、為替に介入する枠組みが出てくるのではないだろうかという議論が出ています。これは、読み解きの難しい部分が多い展開になりそうです。

 為替については、いくつか重要なポイントがあります。一つは、ご存じのようにトランプ氏自身はドル高を牽制しているものの、アメリカ財務長官のスティーブン・ムニューチン氏などに典型的に見られるのは「強いドルの方がいい」という発言です。つまりアメリカにとって、アメリカの為替は高いのがいいのか低いのがいいのか、なかなか悩ましい問題なのです。

 もちろんトランプ氏自身の頭の中には明快な認識があります。要するに「ドル高になると輸出が苦しくなって輸入が増えるから、アメリカの輸出業界が打撃を受ける。さらに外からの移民も増えるので、国内の雇用が減る」というものです。これが「けしからんから、ドル高は是正しなければいけない。しかも世界的を見ると、中国のようにこれまで為替介入をしてきた国もある」ということで、なかなか難しい話だろうと思います。


●「強いドル」を守りたい財務省の本音は


 一方、アメリカの財務省が「強いドルが望ましい」と主張するのはなぜかというと、実はアメリカの財政運営を考えたときに、ドルの需要が結構重要な要因だからです。ご存じのように、アメリカは経常収支でずっと赤字を続けてきています。言い換えれば、海外に対して債務を積んできているわけです。一方、アメリカの政府も財政赤字を続けており、債務水準はかなり高くなっています。

 驚くべきことに、直近の1~2年で比較してみると、日本政府の財政赤字をGDPで割った比率と、アメリカやイギリスの政府の赤字をGDPで割った比率では、アメリカやイギリスの方がやや高くなっている傾向が見えます。これ自体はいろいろな背景が関係してくるのですが、トランプ政権下のアメリカが財政拡張方針によって今後さらに赤字を積んでいく可能性は、現実的に大きなものがあるのです。

 財政が赤字で債務が積み上がっており、その中で経常収支も赤字を出しているものですから、海外投資家の資金に国債を購入してもらっている面も、かなりあるわ...

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