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2010年代後半には中国の成長率を抜く!

世界で重要性が増すインドの経済成長

高島修
シティグループ証券 チーフFXストラテジスト
情報・テキスト
2010年代後半には、インドの経済成長率が中国を抜いて世界第1位になるだろう、とシティグループ証券チーフFXストラテジスト・高島修氏は語る。それは世界にどのような影響を及ぼすのか。(全3話中第3話目)
時間:05:11
収録日:2015/06/09
追加日:2015/06/22
≪全文≫

●中国主体のRCEPにインドが参加


 今日3番目のテーマとして、インドの経済成長が世界全体に与える影響について少しお話ししたいと思います。

 私が勤務するシティグループでは、2010年代後半、中国の成長率はだいたい6パーセント台と予想しています。一時期は10パーセント台を達成していましたが、そこから6パーセント台まで中国の成長が落ちてくるということです。一方、インドは8パーセント台の経済成長を遂げていくと見込んでいます。主な経済国の中では、インドの経済成長率が中国を抜いて世界第1位になると想定しています。こういった観点からも、世界経済におけるインドの重要性はやはり増してくるだろうと思います。

 インドを取り巻く環境を見ると、いま中国主体で「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)」が提唱されています。話が出たばかりで、実現に向けてはまださまざまなハードルがありますが、日米中心のTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)と並び、アジア地域のもう一つ大きな自由貿易協定の枠組みになっていくことが期待されています。

 RCEPの特徴は、APEC(アジア太平洋経済協力)にもTPPにも入っていないインドを含んでいることです。おそらくここから、成長するインドの需要を取り込む国が出てくるでしょう。RCEP、TPPASEAN(東南アジア諸国連合)、APECの全てに加盟している国に、マレーシア、シンガポール、ベトナムがあります。このあたりが重要な中核国となってくると考えられます。


●酪農需要が及ぼすニュージーランドへの影響


 インドは、中国と並んで世界最大の酪農製品の消費国ですが、この枠組みの中で、酪農製品を輸出している代表的な国は、ニュージーランドです。実はインドとニュージーランドの貿易関係は非常に希薄ですが、いま2カ国間でFTA(自由貿易協定)の交渉が始まっており、RCEPの話も同時に進行しています。

 ニュージーランドには、インドに先駆けて2008年に中国とのFTAを締結したのですが、その結果、ニュージーランドと中国の貿易関係が急拡大した前例があります。よって、RCEPの枠組みになるのか、2カ国間のFTAの締結になるのかは、行方を見ないと分かりませんが、インドとニュージーランドの間で何らかの自由貿易協定が締結されれば、経済成長を遂げて拡大していくインドの酪農需要を、ニュージーランドがより効率的に吸収できるようになり、ニュージーランドにプラスの影響が出てくるかもしれません。

 ただし、モディ政権下におけるメイク・イン・インディア政策も、インドの人口動態上の強みも、自由貿易協定の枠組みも、いずれも長期的なストーリーになってくるため、時々の経済動向や市場動向に与える影響は当然ながら限定的です。目先としては、ラグラム・ラジャン総裁率いるインド中銀のインフレ抑制のかじ取り、ルピー安をどこまで黙認するかが一番重要な鍵だと考えています。
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