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DATE/ 2016.11.05
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平均年収420万円はウソ!性別、勤続年数でみる実態は?

 国税庁が毎年9月に発表している「民間給与実態統計調査」。それによると平成27年度の平均年収は420万円。平成26年度と比べると1.3パーセントの伸び率ということです。実感値とくらべると、どうでしょう?

 セグメント別に検証してみました(数値はすべて約を省略)。

●日本の平均年収を下げているのは、女性の低すぎる年収


 平成27年の男性平均年収は520万円、女性平均年収は276万円です。

 統計数字を見ると、男性の年収は50~54歳の656万円を頂点として、19歳の頃から段階的に上がり、多くの企業で定年が設定される60歳以降では急減することがわかります。

 一方、女性では多くの人が社会人になる20~24歳と、仕事を覚えた25~29歳の間では60万円程度の差があるものの、それ以降は頭打ち状態が続き、50代後半から徐々に下がっていきます。

 男性の平均年収が「日本人の平均年収」を下回るのは29歳以下と65歳以上だけ。統計値を押し下げているのは女性の平均年収であることは、明らかです。

●年収1000万円と100万円の差がモノをいう統計数字


 でも、現実には女性でフルタイム勤務をこなし、管理職についている人も珍しくない時代です。彼女たちの給与は反映されていないのでしょうか。年収・性別ごとに区分けされたデータを見てみましょう。

<100万円以下>
男性:88万4千人(3.1%)
女性:323万2千人(16.5%)

<100万円台>
男性:206万8千人(7.3%)
女性:512万5千人(26.1%)←女性のボリュームゾーン

<200万円台>
男性:359万9千人(12.7%)
女性:420万3千人(21.4%)←女性の「平均年収」

<300万円台>
男性:519万人(18.3%)←男性のボリュームゾーン
女性:318万9千人(16.3%)

<400万円台>←「平均年収」
男性:496万8千人(17.5%)
女性:180万9千人(9.2%)

<500万円台>
男性:366万人(12.9%)←男性の「平均年収」
女性:96万9千人(4.9%)

<600万円台>
男性:237万5千人(8.4%)
女性:46万人2千人(2.4%)

<700万円台>
男性:169万6千人(6.0%)
女性:25万人(1.3%)

<800万円台>
男性:118万人(4.2%)
女性:13万5千人(0.7%)

<900万円台>
男性:77万8千人(2.8%)
女性:7万6千人(0.4%)

<1,000万~1,500万円台>
男性141万4千人(5.0%)
女性12万5千人(0.6%)

<1,500万~2,000万円台>
男性:30万2千人(1.1%)
女性:3万4千人(0.2%)

<2,000万~2,500万円台>
男性:9万2千人(0.3%)
女性:9千人(0.0%)

<2,500万円以上>
男性:10万9千人(0.4%)
女性:9千人(0.0%)

 働く女性の4分の1以上が、年収は100万円台。前後を合わせると、300万円以下で働いている女性は64パーセントで、3人に2人という実態が分かります。一方で1,000万円以上という高年収の女性も、合計すると17.7万人。女性調査数は1,963万人ですから、少ないとはいえ0.9パーセント、ほぼ100人に1人は1,000万円以上の年収を得ています。

 一方、男性の18.3パーセントが300万円台の年収であることも意外です。平均年収を下回る400万円以下で働く人の割合は41.4パーセント、男性平均を下回る500万円以下では58.9パーセントと過半数になります。高年収ゾーンを見ると、男性で1,000万円以上年収を得ている人は2.3パーセント。50人に1人という計算ですね。

 これらのことが重なるため、「平均年収420万円」の数字は、実際のボリュームゾーンからも、大手企業で働くビジネスパーソンからも乖離して見えるのでしょう。

●「配偶者特別控除」と「M字カーブ」のワナ


 女性の年収を頭打ちにしているのは、既婚女性パートタイマーの多くが「配偶者控除(配偶者年収103万円未満)」や「配偶者特別控除(配偶者年収103~141万円未満)」枠に収まるよう、働く時間を自主的にセーブしているというのが通説です。今回の調査では、配偶者控除を受けた人は976万人、配偶者特別控除を受けた人は106万人(平均控除額は29.1万円)だということです。

 配偶者控除の対象には無職の人や主婦も含まれるため、実際には半数程度の500万人ぐらいと見積もれるのではないでしょうか。統計の調査対象は、1年を通じて勤務した給与所得者4,794万人。配偶者特別控除を受けた割合は、男性2,831万人のうち3.7パーセントに過ぎません。

 もう一つの要因は、いわゆる「M字カーブ」。出産退職する女性は、男性ほど勤続年数が積み上がらないので、年収も上がらないという説があります。「勤続年数別の平均給与」統計を見てみましょう。

<勤続5年未満>
男性:371万円
女性:225万円

<勤続5~9年>
男性:459万円
女性:270万円

<勤続10~14年>
男性:534万円
女性:296万円

<勤続15~19年>
男性:598万円
女性:327万円

<勤続20~24年>
男性:670万円
女性:382万円

<勤続25~29年>
男性:720万円
女性:398万円

<勤続30~34年>
男性:754万円
女性:404万円

<勤続35年以上>
男性:625万円
女性:307万円

 男女ともに最高額を得られるのは勤続年数30~34年の階層です。しかし、その比率はというと、5年未満の頃の年収と比べて、男性は383万円上がる2倍強、女性は180万円弱で1.8倍にしか達しません。政府も「一億総活躍社会」を看板にするなら、ここから手をつけてほしいと思うばかりです。


<参考サイト>
・国税庁ホームページ(平成27年分 民間給与実態統計調査より)
http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/minkan2015/pdf/001.pdf
(10MTV編集部)