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人工知能の普及で格差が広がる!労働者が取るべき対策は?

ファミリービジネスとAI(5)AI時代に求められる能力

柳川範之
東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授
概要・テキスト
人工知能が発達して普及すると、人間の仕事は奪われるのか。東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授の柳川範之氏は、そんなことはないという。なぜなら、人間には人工知能では代替できない能力があるからだ。人工知能が発展していく時代、経営のカギとなるのは、人間の有利性をいかに伸ばせるかにあると柳川氏は強調する。(2016年7月25日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「ファミリービジネスと産業構造の変化」より、全8話中第5話)
≪全文≫

●AIが発達すると仕事がなくなる?


 AIが発達すると、いろいろな仕事や半分くらいの職業がなくなるといった議論が盛んに行われています。このあたりの話は私の専門分野に近いのですが、結論からいえば仕事はなくなりません。ほとんどの仕事は、完全にはなくならず、現実に起こるのは、仕事や職業の中で、コンピュータに代替されてしまう業務と、代替されないで人間がやる業務とに分かれるということなのです。

 例えば、弁護士という仕事があります。弁護士という仕事がなくなる、あるいはなくならないという話がされますが、弁護士という職業自体はなくなりません。ただ、今まで弁護士がやってきた仕事のかなりの部分は、コンピュータがやってくれるようになります。人間としての弁護士がやる仕事は、その中の一部で済むようになります。そのため、人の数があまり要らなくなるのは事実ですが、ほとんどの産業で起こるのは、その中で人間のやる業務が分かれていくという話です。まるきり全部なくなるわけではなく、一部の人が結構な仕事をやっていくという方向に変わっていきます。

 このあたりに大きな誤解があるということです。今後どうなっていくのかという話でいくと、先ほど申し上げたように、コンピュータ、AIが仕事を奪うという話ではありません。仕事を奪うのは、AIそのものではなく、AIの裏側にいる人間なのです。今のところ、AIは道具です。人間がAIを使っています。突然、そのコンピュータやロボットが意思をもち、人間の仕事を奪い出すということはないのです。

 だから願わくは、AIを使いこなす、道具として駆使する側に回るということです。職業として、あるいは働き方としてお金が稼げる、きちんと生き残っていける話が重要なのです。だから、日本全体として、こういう分野にできるだけ力を向けていく必要があるという話をしています。


●人工知能の発達でもたらされる「所得の二極化」


 ただ一方で、それをやると所得分配がかなり歪んでくる可能性があります。これはマクロ的な課題です。コンピュータを使いこなせる人と、ある意味でコンピュータに仕事を奪われる人との間に、かなり大きな差が生まれていきます。すごく稼げる人と、コンピュータに仕事を奪われてしまい、あまりお金を稼げなくなる人と二極化してくる部分が出てきます。

 ここから、いわゆる「中間層が消えてしまい、所得分布...
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