●賃金格差を縮めるために「同一労働同一賃金」が必要
安倍内閣の内閣改造で1つの大きな目玉になっているのが「働き方改革」です。加藤勝信さんが担当大臣になったということで、この働き方改革が今後の政権の経済運営、日本経済全体を見る上で重要になってきていると思います。
日本に限らず、どこの国でも同じことですが、労働者がどこまで活躍できるか、労働の流動性をどこまで高めていくか、どれだけやりがいを持って働けるかということが、経済の一番根幹にある問題です。この問題は、所得の不平等といったさまざまな生活問題のソリューションを提供する「社会政策的な側面」と、人口が減少していく中で労働生産性を上げ、労働力不足を解消していく「成長戦略的な側面」の両面で、経済の活性化がうまくいくかどうかの大きな鍵を握っていると思います。
働き方改革にはいくつか大きなポイントがあります。一つは、正規労働者と非正規労働者の間で顕著な「賃金格差」を縮めていくことでしょう。これは最近、「同一労働同一賃金」ということで語られることが多いですが、重要な意味を持っています。ご存じのように、日本は長い間「日本的雇用」で、大企業の終身雇用の労働者を中心に経済が回ってきました。高度経済成長時には、それが働く人と企業の関係の安定をもたらし、経済成長の大きな原動力になってきたわけです。しかし、現在は明らかにいくつかの形で制度疲労を起こしています。
一つは、終身雇用・年功賃金のマイナス面として、多様な労働に対応できないことが問題になっています。つまり、現状の制度では企業のインサイダーになるか、アウトサイダーになるかのどちらかになってしまうため、いったん定年を迎えたシニアや、子育てなどをしながらキャリアを志向している女性、さらに転職を考える男性にとっても、正規と非正規の壁が大きな障害になってきたわけです。できるだけ多くの方々に、多様な労働を多様な形で生きがいを持ってやってもらうためには、従来の終身雇用・年功賃金の外にいる人たちにも、働きに応じて賃金を提供することが重要です。分かりやすくいえば、同じ労働をしているにもかかわらず、正規社員と非正規社員の間に何十パーセントもある格差を是正する必要があるのです。
実は今、日本の労働市場の状況は、こうした改革を進める上で有利な条件になってきています。人口減少・高齢...